SSブログ

「CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ」 [観劇感想(その他)]

「CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ」
2022年6月22日(水)13時 シアタークリエ 13列

悪魔に魂を売って才能を手に入れたヴァイオリニスト・パガニーニと、取引する音楽の悪魔。そして彼を取り巻く人々。幼少の彼の才能について語る母と教師、ずっとそばにいる執事と弟子。かれらがパガニーニが葛藤し続けた生涯を語る・・という感じ。
音楽家が主人公なのでもっと歌いあげるクラシック調の曲が多いのかと思っていた(中川氏がいるし)ら、少々違った。雰囲気はそんな感じだったけど、歌の圧力を感じるまでは無かった(中川氏がいるのに)。
ストーリーはよくある感じですが、彼と語る人々がパガニーニの心境を映し出していく手法はとてもよかった。ラストがよく理解できなかったけれど、自分で考えてよいのかな。

歌も芝居も概ね良かったのですが、1曲が長すぎて長すぎて。2番どころか3番まで歌う?っていうところもあり、もう少し1曲を短めにしてメリハリ付けてくれたら嬉しい。
それから、一人現代からタイムスリップした女子高生がいて、ちょっと雰囲気が違いすぎた。語り部ならそれでもいいので設定を変える(現代の天才バイオリニスト=契約前のパガニーニと同じ悩みを持つ少女がタイムスリップ!か、その女子高生とバイオリンの先生(現代)の会話で、パガニーニを語る形式)また現在のままのストーリーに併せるなら弟子は貧乏貴族の少年のほうがすっきりすると思う。

再演があるなら、ブラッシュアップする箇所がいっぱいあったので、洗練したのが見たいです。

202206クロスロード2.jpg

ミュージカル
「CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ」
原作・脚本・作詞・演出藤沢文翁
作曲・音楽監督村中俊之

先に書いたけど、元が朗読劇らしいので、セリフが多すぎるのでしょうか?とにかく一曲が長い。全部歌にしなくてももう少し要約するとか歌詞を厳選して歌に入れると改善して欲しい。同じフレーズの繰り返しが3回も続くと「また?まだあるの?」と思ってしまう。皆さん歌も上手いし声も綺麗で良いのだけど、歌でストーリーを進めていくから、内容を聞いてないといけない。お一人で延々歌ってらっしゃると、だれてしまうのだ(私が)。歌詞はどうでもいいから、歌声の圧に浸れ!ってならそれは美しき歌声の渦に溺れて嬉しいけど、そうでもない。歌う役者さんも、もっと声出ると思うけどセーブして歌詞を聞かせている雰囲気がある。そもそもちゃんと歌詞を理解する必要がある設定のようだから、その姿勢は合ってる。とにかく、歌は1番だけにして欲しい。同じフレーズで違う場所で違う人が歌うのは全然かまわないけど(むしろ好き)、一人が舞台の上で一人っきりで3番まで歌うのは勘弁してほしかった。説明台詞ならぬ説明歌やん。演出家に工夫をお願いしたいところだ。

ストーリーは好き。自分に才能がないことがわかる程度の才能があるパガニーニが、同じくらいの才能を持ち「悪魔との契約」を見抜く師匠と、「才能がある」しかわからない母の期待に押しつぶされて、どんどん泥沼にはまっていく様子。悪魔の契約は「すべての曲を悪魔にささげること」という制約のために、自分は何のためにヴァイオリンを弾くのか?に悩み、弾いてあげたい誰かのために捧げられない苦しみと、いろいろパガニーニを追い詰めていく。なかなか魅せる筋書きだ。
最後に「一人救った」と一筋の光のように彼が思うのが、弟子のアーシャ。自分と同じ立場で自分を同じ過ちを犯さないように救ったと。アーシャを救うことが自分の魂の救済につながる。彼の最後の良心が見えたラストシーン。(勝手に解釈したけど)いいねえ。
そのアーシャだけど、大事な弟子に見えないし、そもそも悪魔と契約前のパガニーニと同じ苦しみを持った「もう一人の自分」に相当しないように見えた。ここはやはり、彼と似た立場の少年にすべきでは?と強く思った。だって可愛い美少女アーシャを救うのは、過去の自分を救うというより恋愛的な衝動に見えてしまう。恋人はエリザだけど、あの可愛いアーシャがずっとまとわりついてきて、恋愛の一つもないのはかえって不自然では。いつ恋愛感情が出てくるのか見ていたが、ない。エリザとアーシャの三角関係は?パガニーニはどうするの?と思ったけど、アーシャと恋愛関係に無さそう・・?ないのか?ほんとに?特別なヴァイオリンの才能もなくてただ可愛い小悪魔的な美少女に懐かれて?ほんとに?って思う。エリザもなんとも思ってなさそうに描かれていたけど、普通は恋人にまとわりつく女がいたら追い払うでしょ?と邪念の塊になった。
アーシャが恋愛対象じゃないなら、なんでアーシャは美少女設定なんだ???ジプシー設定は全く生かされてないし。「皇帝の妹たるアンニュイな美女」に対する「天真爛漫なジプシーの美少女」なら生きてくると思うけど、現状ではその設定不要やん。
やはりアーシャは少年に変更して欲しい。ジプシー設定も不要(摘まみだされる設定にいるのかと思ったが、そうでもない。アーシャは綺麗なドレスを着ていて全然みすぼらしくないし、立ち居振る舞いも下品で粗野なところがなく普通。どうみても自称ジプシーのお嬢様だ)。だからアーシャは下級貧乏貴族の息子がいい。

装置は立体的で綺麗。でも衣装が地味、化粧が普通化粧で地味地味。コスチュームなのだから、もう少し衣装もそれなりに、衣装にあった化粧をして欲しいです。生オーケストラなのは良かったですが、ちょっと音量が大きすぎ・・・?な個所もあったので、出演者の声の音量がまちまちだから伴奏も難しいのでしょうかね。どうにかならないかな。


ニコロ・パガニーニ/ 水江建太W
悪魔と呼ばれた天才ヴァイオリニスト。主人公で、「才能が無いのがわかる程度の才能がある」という神様が残酷な設定をした方。絶望の中で苦しんでいた時に、優しい悪魔がやってきて苦しみから救ってくれる。悪魔の条件は「500万曲、すべてを悪魔に捧げる」という2点。500万曲制限はともかく、「悪魔以外に捧げてはいけない」という内面的な制約が厳しいですね。これが無かったら最高の契約なのに。しかし神様が勝手気ままにくれる才能は良くて、悪魔と交渉して得る才能はだめなのか?(悪魔が付けた)制約の中で頑張ってるのに、評価できないのか。そのあたりはキリスト教徒でないので得心しがたい。教会で演奏さえしていれば、ここまで追い詰められなかったよね?「神様からの贈り物(才能)です!!」って賞賛されたのでは?教会で「悪魔のために」演奏してはいけなかったのか、その方がプゲラできてよくない?って悪魔を説得できたら良かったかも(性悪すぎ?)。そもそも誰のために弾くか、悪魔にわかるのね?悪魔すごいね?テレパス?適当にしてたらいいやん?
私の心が美しくないため、いろいろ抜け道を考えてしまいました。現代人には悪魔も簡単に契約してくれそうもないでしょうね。ちょっと上手だね程度の凡人で長い人生を終わるより、短くても華やかな名声と富と称賛を得た一生を生きたいという「悪魔WELCOME!」な人は多いと思う(いないかな?いるよね)。
Wキャスト役なので、水江さんでした。声がマットすぎるし、ミュージカルの歌じゃないような・・ミュージカルの歌い方じゃないと感じた。台詞っぽいのだわ、歌が。声が伸びない響かない。一人で歌うならまだいいが、誰かと重唱すると声が合わさらない。一人で歌ってるの。綺麗でお芝居も良かったけど、歌は長く聞きたいタイプじゃないわあ。


アムドゥスキアス/中川晃教
音楽を司る悪魔ソロモン72柱の魔神にして29の軍団が長、地獄の公爵。悩んでる若者に才能を与えてあげるいい悪魔。でも悪魔だから、制約が付く。絶妙だよね。500万曲の期限が来た時には精神が疲弊しているように持ってきてる。絶好調の時だと、魂くれないかもしれないもんね。神様の与える才能は制約がないかもしれないが、とてもランダムで少ない。悪魔が与える才能は、制約があるけど希望者みんなに?なのかな。抽選で1名様の高価な賞品か、応募シールを集めたら誰でももらえる賞品か?って感じ(例えが変だけど)。
その悪魔さん、最後にやっぱりパガニーニの魂もらえなかったのかな。インチキ天才だけど、一応天才に500万曲を自分に捧げてもらったし、音楽の悪魔としては満足なのかな。
中川さんは、劇団新感線の「SHIROH」で「神の声を持つ少年」の役があまりにピッタリで、本当に神の声だと感動した。歌声からの圧力が凄くて、こりゃ従ってしまうわって。「モーツァルト!」でも感じた。それを期待していたのに、なんか歌声セーブしてます?ってくらいに声が小さい。圧がない。小さくても美しいし伸びるし響くんだけど、期待よりかなり圧が少ない。悪魔公爵なら、さぞや人間を圧倒し翻弄してくれると期待してチケットを買ったので、ちょっと残念でした。ちゃんとミュージカル歌だし、歌詞も明瞭なのは当然だけどとても良かった。人外の雰囲気や、マント裁きなんかはとても綺麗でした。


エリザ・ボナパルト/青野紗穂
ナポレオン皇帝の妹で、パガニーニに興味を持ち、彼の才能に惚れて、彼に惚れて、愛ゆえに彼の音楽家としての出世を図る。アンニュイで無関心な、それでいてすべてに苛立ちを感じる表情、それがパガニーニと出会い愛し合ってからは変わる。ちゃんと恋する女性になっていく。やがて自分の行動が彼を苦しめていたことを知って、激しく後悔し苦しむ。パガニーニの恋人は彼女。愛したのも彼女だけ。ということが分かった。だから彼に絡む女性は恋人と母だけでいいと思うのだな。
青野さんの歌はミュージカルだった。皇帝の妹と敬われているようで、コルシカの田舎娘と蔑まれているのがよく分っている賢い女性なのが分かりました。それゆえパガニーニと気が合ったのですね。お芝居も良かったけど、衣装が地味。これは宝塚じゃないから仕方ないのかもしれないけど、皇帝の妹にしては地味すぎる。(宝塚ならエリザがヒロインでもっと扱いが大きいはず!)

テレーザ/香寿たつき
心優しきパガニーニの母。息子の才能を信じてすべてを費やして才能を伸ばしてあげた母、やがて息子が成功して故郷を出ていき、戻ってこなくなってもひたすら信じて応援し続ける母。息子が悪魔と契約したと感づいても、それでも非難することなく、変わらぬ応援をする母。素晴らしい母の愛。でも母の愛は一方通行ではなく、ちゃんとニコロも母を愛して、不器用ながら母にちゃんと愛を返してる。だから母は愛し続けられる。この母子の愛はとても美しかった。最後に悪魔からニコロを救ったのは、母の曲。結局、母だったのね。
香寿さん、上手い。もともと歌も芝居も上手かったけど、本当に声が綺麗でよく響く。物語の鍵となる子守歌も絶品ですが、コスタ先生とのデュエットもさすが他人と歌い慣れてるなあって感動です。2人で歌うときは声やら響きを合わせるとさらに魅力倍増するんですよね。1幕ラストの教師、母、悪魔の三重奏は素晴らしく良かった。ミュージカルの醍醐味、歌の厚み。普段宝塚を見ているので、重唱ではそうするのが当たり前だと思ってたけど、そうではないことが分かりました。香寿さんが健在で嬉しい。

コスタ/畠中 洋
パガニーニのヴァイオリンの師。パガニーニと同じくらいの才能があったのですね。だから彼の才能の限界もわかった。だから悪魔との契約が分かった。彼は契約したいと思ったことはなかったのかな?あったけど断ったのかな?だから弟子が契約してうろたえて訴えたのかな? コスタも音楽家として複雑な感情があったと思う。もっと場面が欲しかった方。
畠中さんの歌はミュージカルですごくよく響いて良い声。デュエットも良かった。


アルマンド/山寺宏一(Wキャスト)
パガニーニに仕える執事で、どうやって知り合い、なぜ彼に献身しているのかが謎のまま終わった。物語のラストを飾る「もう一人の自分」の象徴たる大事な弟子アーシャのことも知らないし。ちょっと突っ込みたい。アーシャと彼の会話で話が進むので、語り手の役目が大きかった。声も良くてちゃんとミュージカルで、お芝居も楽しかった。ただ謎が多すぎる。


アーシャ/早川聖来(乃木坂46)
自由に音楽を愛するジプシーの娘。もうさんざん書いたけど、この設定が謎。可愛いが正義だから美少女設定?ジプシー風の衣装を着せたいからジプシー設定?って穿ってしまう。
悪魔との契約で葛藤し続けたパガニーニが最後に救う「もう一人の自分」である弟子。なのに、「もう一人の自分」的な音楽の才能の限界に悩む場面も、貧しい中応援してくれる愛する家族の期待に応えようと苦しむ場面も、何もない。ただ「ヴァイオリンの弾き方教えて~」って寄ってくるだけ。綺麗なドレスを着て可愛く現代口調でまとわりつくだけ。どう見てもお金持ちのお嬢様が気に入った音楽家にわがままを言っているだけ。パガニーニが持つ「悪魔に魂を売るほどの必死さ」が感じ取れないのだ。何も考えてないのが天真爛漫ならその通り。なぜこの子を救ってやりたいと思ったか、その心理がわからないほど似たところがない。他人のことを考えないのが天真爛漫ではないと思う。彼女なら悪魔も取引しに来ないと思うのだけど。鍵になる人物だけに、その人物像が理解できなかった。
早川さんの歌はミュージカルじゃない歌い方。普通の歌い方というの?伸びない響かない、膨らまない。台詞に抑揚をつけた歌というのか、私たちが普通に歌う歌の歌い方。水江さんも同じ感じだけど、その他の方はミュージカルの伸びる響く膨らむ歌い方でドラマティックに盛り上げるから、このお二人はちょっと浮く。特に早川さんは、衣装が他の方と違って現代風。そのまま日比谷歩いても違和感ないのでは?という可愛いドレス。立ち居振る舞いも仕草もセリフの言い方も全部現代風。だからタイムスリップした女子高生ならOKだと思ったの。幼少からヴァイオリンコンクールで優勝していて、「天才美少女ヴァイオリニスト」とマスコミに騒がれて期待をかけられているけど、天才じゃないのを知っている(そのレベルの才能がある)女子高生。それならパガニーニと同じ立場同じ悩みを持ってると言える。そして現代的な容姿と話し方と仕草でも全然問題ないというか、それが必要。時代から、他の登場人物から浮いていて当然。彼女がタイムスリップして、パガニーニのところのアルマンドさんに拾われて、音楽の悩みでパガニーニと対話する形で話が進み、最後にパガニーニに救われた彼女が何かを悟って現代に戻るという展開なら、素晴らしいと思う(自画自賛だね:笑)


あとはベルリオーズ役の方の歌が上手かった。1曲だけどすごくドラマティックに盛り上がった(私の中で)。やっぱりこういう歌い方がいいわって思った歌でした。


ということで、かなり「私ならこうするのに」な感想になりました。
久しぶりの東京出張が急に決まり。日比谷で宝塚の星組を見ようと思ったらチケットがなく、帝劇でOGが出演の「ガイズ&ドールズ」を見ようと思ったけどチケットなく。そしたらやはりOGの香寿さんが出ているこの公演のチケットがまだ取れたので、見に行きました。意外に熱く語ってしまったので、見に行って良かったと思う。もうちょっとブラッシュアップして(上演時間ももっと短く)、ミュージカルな歌い方を徹底すれば、再演再演の人気ミュージカルになるのでは~って思いました。
休憩が25分でフィナーレも無いのに3時間15分は長すぎる。この内容なら休憩30分の2時間半くらいがちょうどいいかなと思うのでした。新幹線が余裕のはずが、帰り急いだわ・・。



nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。