SSブログ

宝塚星組「赤と黒」DC [観劇感想(宝塚)]

宝塚星組「赤と黒」
2023年3月25日(土)16:30 梅田シアタードラマシティ 16列センター



礼さんの歌声を浴びられて、心から感動。暁さんがかっこいい、今まで見た中で一番かっこいい。すごいカッコいい(連呼したい)、詩さんが可愛い、美少女。
この作品はセンスの良い衣装と素晴らしき歌があっての高評価!という感想。
美しい声の迫力ある歌を浴びてすごく感動した。礼さんと暁さんの声が合う。絶品。
登場人物は10人ほどで、出てくる人は大体歌う。みんな上手い。芝居もいい。
衣装がモノトーンで刺し色が赤。赤と黒に統一されていて、役柄に似合っていてセンスが抜群に良い。舞台装置が立体で幻想的で激動後の退廃の巴里を表現している。
満足。これは音源が欲しい。歌ナンバーだけのが欲しい。

202303星赤と黒.jpg



『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』
D'après l'œuvre de Stendhal «Le Rouge et le Noir, l'Opéra Rock»
Produced by Sam Smadja - SB Productions
International Licensing & Booking, G.L.O, Guillaume Lagorce
潤色・演出/谷 貴矢   


素晴らしい。だが、ところどころ演出が今一つ練れていない感じがした。
人物の心理描写が唐突で、「え?なんで??」という場面が多い。礼さんの心情溢れる歌声でごまかされているけど、その心情変化のセリフも場面が無いような。演者の歌の表現と芝居に頼りすぎに感じる(心境変化の場面が無いのに、変化した後を熱唱するのって大変そう)。
言葉の一つ一つが重そうなので、もう少し台詞を練ってほしいなあって思った。また海外ミュージカルだからだろうけど、一人が出てきて歌う、場面転換、一人残って歌う、というのが散見された。場面つなぎも含めて宝塚アレンジして欲しいところ。ほら、後ろで心象風景踊るとか付けれるやん?潤色に改善の余地を感じる(特に台詞だ)。衣装と装置は大変素晴らしいので、今後に期待してるんです、タカヤ先生。

ちなみに。ラストシーンの最期のジュリアンの台詞。最後に会いに来てくれたルイーズに「愛している」と告げるのですが、それだとマチルドと二股になってしまうよね!と。ここは「愛していた」と過去形にしないと。あの時はルイーズを本気で愛した、そしてルイーズの愛もわかった(汚名を避けわざと追い出してパリで出世する機会をくれた)から、あの時は「愛していた」と告げるのが正しい。そして今は、「あなたが教えてくれた愛を妻のマチルドに向けているのだ」としないと、ただの二股ダメ男になってしまう・・この「る」と「た」の違いは大事だ。タカヤ先生、明日からでも訂正して欲しい。


ジュリアン・ソレル 礼 真琴
貧しい出身で頭が良いため出世の野心を持つ青年。雇い主(レナ―ル氏)から「気難しい青年」と表現されるとは、野心があってもへつらったり媚びたりしないのね~っと思う。高潔なんだな。
一番わからないのが、なぜレナ―ル夫人ルイーズを愛したのか。ルイーズがジュリアンに口説かれてその気になる場面はあった。でも野心いっぱいのジュリアンが、雇い主の妻であるルイーズを愛するきっかけがなかったように思う。人妻なんてやばいやん、なんで手を出す?という理由が読めなくて。夫人を利用して出世とかある?-それは無いように思うし、じゃあ本気で惚れた?-何がきっかけで?となる。
マチルドに対しても。最初は出世の手段としてかなと思ってたけど、本気みたいな場面があり(ジェロニモがストレートに聞いてくれてよかった)、新しい愛をはぐくんで幸せに出世していくのかと思ったら、あのラストだもん。マチルド可哀そうすぎる。
というとこで。上に書いたけど、私は見終わって「マチルド可哀そう」ばかりが頭を巡った。終演後に、一緒に見ていた友人が「ジュリアンからルイーズへの最後の言葉は「愛していた」で終わるべき!!!」と上記のことを熱弁してくれた。それで私は「マチルド可哀そう」と真っ先に感じた理由が分かったのだわ。マチルドとの間にも愛があった、最後まで愛していたはず、誠実なジュリアンだから。嘘をついてまで死刑を免れることを潔しとしなかったジュリアンを、マチルドは理解して受け入れた。マチルドの助命の努力のすべてを無視したジュリアンを受け入れたのは、そんな高潔な彼を愛していたから。ね、ジュリアン、マチルドを愛しているよね?と念押ししたい。


ジェロニモ 暁 千星
パリの有名な歌手。芸術家。この物語、実はこの方の掌の上で行われた壮大なネタ作りなのでは?と思わせるセリフがある。「ナポレオンのように名前が残せるぞ、良かったな」(意訳)って言葉を死刑に向かうジュリアンに贈るんだよ。心から喜んだ表情で。同時に、マチルドにも「普通にベッドの上で死なない男が好きなんだろ、よかったじゃないか!」って祝福している。そのうえで「この物語を偉大な芸術家たる私が語り継いでやるから喜べ」って感じだ。すべてはジェロニモの計画通りなのか?と思わせる衝撃のラストだ。そう思わせてくれるジェロニモの役作り、その黒さが素晴らしい。暁さんが何は企んでそうな明るさが上手いわ。
星組に来てよかった。芝居が合ってる。月では芝居のカラーが違うのか、どうしても芝居が浮いていた。(少女漫画誌に劇画のキャラが入ったみたいな)。しかし、ここでは同じ漫画家の作品のようににぴったり嵌っている。そして歌が凄く良くなってた。礼さんの声とあんなに合うなんて、嬉しい発見。何よりかっこいいすごくかっこいい。度の衣装も素敵だった。立ち居振る舞い、声、ダンス、どれも素晴らしい。個人的には、礼さんの歌(上のほう)で、下でみんなを率いて踊る場面(1幕ラストか)が一番好き。暁さんに堕ちそう。


<田舎ヴァリエール>
ルイーズ・ド・レナール 有沙 瞳
愛ではなく名誉のために結婚している女性。子供(複数)いる母。今回子供は出てこないので母の場面はなく、妻(対レナ―ル氏)と年上の恋人(対ジュリアン)として存在した。
ジュリアンと恋に落ちたのは一目惚れかな?と思わせる場面があった。でも自制していたのに、ジュリアンからの誘惑に堕ちてしまった。そんな雰囲気。おそらく初めての恋だったんでしょうね。その後、エリザの黒い嫉妬から関係が夫に獏良された時の対応の見事さ!年若い愛人を無傷で逃がしてあげたあの手腕は素晴らしい。もちろん自分も助かったけど、それは副次的で、あのまま彼女が対応を誤れば、夫はルイーズは家に閉じ込め、ジュリアンだけを「上流社会から放逐」しただろうと思う。なのに、誰かの嫌がらせだとして、貶められたと怒って見せて、愛人には給料と支度金と推薦状を用意して、より広い世界へ送り出してあげるとは、見事すぎる。素晴らしく頭の良い女性ですね。まあ当時のジュリアンは彼女の愛が全く分かってなくて恨んでましたけど。まった若造は困ったもんだ。最後には大人になったジュリアンに彼女の愛が伝わったみたいで良かった。
だから、2幕のヴァルノ夫妻の甘言に乗って手紙にサインしてしまうのに驚く。本当は一人で罪を抱え愛する人を失い、心弱っていたんだなって。殺されかけても愛してたのね。
物足りないけど幸せに生きていた彼女を、こんな修羅の道に落としたのはジュリアン。その罪は深いと思え。って思いましたわ。だから死を望んだのかも。直接の会話は少なくても、お互いの想いは伝わったと思える2幕の二人でした。



ムッシュー・ド・レナール紫門 ゆりや
良い人だ。良き町長、良き夫、良き父、良き家長。妻との間に愛は無い!とか言ってるけど、妻をかなり気遣っているし、穏やかな愛・家族愛はあるよな。彼の思う「愛」の定義が、ハイレベルなのかもしれない。ルイーズもそれにつられて「愛は無い」と信じていたのかも。ジュリアンからの告白によろめいたのは、それがレナ―ル氏の考える「愛」だったからなのか。
そして浮気した妻の弁明をあっさり信じ、ジュリアンに給料と退職金を払って推薦状まで書いてあげたんだね。その後は全く登場しないし、なんていい人なんだと思った。

エリザ 瑠璃 花夏
レナ―ル家のメイド。メイドというには可愛らしすぎるボリュームあるドレスに、一目でわかる可愛らしさ。メイドだけど、行儀見習いとかで預かっている娘さんかなという気がする。レナ―ル夫人は、最初から彼女と家庭教師との縁談を取り持ってあげようとしていたし。ところが!自分の恋に協力してくれていたはずの夫人に彼を取られてから、嫉妬に狂ったエリザは、ヴァルノ氏を使って二人の関係を暴露。自分の手を汚さない辺り頭いいなあって思った。二人を引き裂いてジュリアンを追い出して、満足したのかな。その後は出てこず。他のいい男を見つけてさっさと結婚しているような気もする。
とりあえず、可愛いし歌も良かったです。

ムッシュー・ヴァルノ ひろ香 祐
ヴァルノ夫人 小桜 ほのか
レナ―ル氏の隣の成金ライバルですが、全身真っ赤で派手派手衣装。ただの賑やかしかと思えば、意外に重要人物。この物語はヴァルノ夫妻がいないと話が進まない。というか彼らの行動力で、ジュリアンが不幸になっていくのだな。妬みと金が行動力なのだけど、すごいバイタリティを感じる人物。エリザの話に乗ってジュリアンを追い出し、そのジュリアンを頼ってパリに来て嘆願したり、レナ―ル夫人を脅して手紙捏造したり陪審員にまでなったり、すごい活躍だ。ヴァルノ夫妻の行動の一つでも欠けていたら、この悲劇は起こらなかったのだなあ。
1幕と2幕、どちらかしか出演しない人物の中、このお二人は通しでご活躍。二人とも上手いし歌りまくり。最重要人物です。

<パリ>
マチルド・ド・ラ・モール 詩 ちづる
ラ・モール侯爵の令嬢。2幕幕開きから歌いまくる。派手なオレンジのドレスで舞踏会。その後は黒いバラのドレス。これが最高にセンスが良くて似合っている。
マチルドがジュリアンに恋したのもわかりにくかった。最初は平民だと馬鹿にしていて、次にからかって、それから他の女性に取られそうになって取り返しに行って・・と、ジェロニモが作りだした筋書き通りに動くだけで、彼女がなぜジュリアンを愛したかが書かれていないような。「高潔な人が好き」と言ってるけど、ジュリアンが高潔でマチルドが惚れるような場面あったかなあ。
経緯はともかく、マチルドは最後までジュリアンを愛しぬいた。愛したのは高潔な男、だから嘘を言って罪を逃れるようなことはしない。もし上手く裁判を乗り切り、罪を逃れても、そうやって生き残ったジュリアンはマチルドが愛した高潔な男じゃない。二律背反な想いの中、裁判を見るマチルドはとても複雑だった。だから高潔にも罪を受け入れて系に臨んだジュリアンを、最後まで愛しぬいたのだと思う。おそらく生まれてくる子供には、胸を張って「高潔な父」と教えるのだろうなと。
私個人的には、ジュリアンが高潔だとは思えないのでマチルドには共感できなかったけど、まあ若いご令嬢だし、思い込んだら一途な愛に突っ走ってるんだなって見てました。
詩さんのお芝居や詩を久しぶりにたっぷり浴びました。やっぱり上手いし可愛いわ。

ラ・モール侯爵 英真 なおき
ジュリアンを秘書に雇い、平民出身の優秀な秘書と大事な大事な娘との結婚を許してあげる良い人。あのまま何もなければ、ジュリアンは侯爵の娘婿として、ラ・モール侯爵家の後押しで出世しただろうな~と思う。
ラストシーンの後、マチルドと孫を大事に育ててそう。それにしてもジュリエット父に似た歌を歌っていてデジャブだったわ。侯爵はすぐに結婚を許してあげたから、悲劇にならない良い決断をされたのに、娘婿の過去の亡霊のせいで、娘と孫が可哀そうなことになってしまった。まだまだ元気で働かないと!って思いました。

フェルバック夫人 白妙 なつ
ジュリアンがマチルドの気持ちを知るための当て馬恋人。ジェロニモ推薦の遊び相手ですな。美人の夫人、なぜ歌わない!と思いました。歌声聞きたかった。

<その他>
ルージュ 希沙 薫
ノワール 碧海 さりお
ジェロニモの横で仲間下部のように踊り、ジュリアンの横で煽りまくり、いろいろな場面でまくって踊ってました。赤さんと黒さんでタイトルロールなのだけど、「ロミオとジュリエット」の愛と死よりも、役割が読めなかった。


ドラマシティで公演したのがわかる人数ですね。狭めの舞台が似合います(チケット的には困ったけど)。衣装、照明、装置、楽曲、役者。素晴らしかったです。現在のままの脚本演出なら、役者を選ぶ演目ですね。



ご無沙汰しております。久しぶりのアップですが、元気に生きています。年が明けてから忙しくて忙しくて見に行く時間を取るのが精いっぱいで、書けませんでした。また誰かと観劇することが増えて、終演後に語り合ってしまうと満足してしまい、なかなか書くエネルギーが足りず。つい後回しになってしまいました。
1月花組「うたかたの恋」、「神韻2023」
2月OSK「春のおどり」、月組「応天の門」(本公演と新人公演)、雪組「ボニー&クライド」雪組「海辺のストルーエンセ」、梅芸「ドリームガールズ」、「宝塚109期文化祭」
3月BSP「織田信長」、宙組「007」
とこれだけ見てメモだけが溜まっています。そのうち書きたいなあと思ってます。とりあえず、急ぎの仕事が終わったらこっちの趣味の文を書きたいです。



nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。