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劇団☆新感線「神州無頼街」大阪 [観劇感想(その他)]

劇団☆新感線「神州無頼街」大阪
2022年3月21日(月祝)12時 オリックス劇場 2階13列センター


劇団☆新感線、最近チケットが良く当たって見に行けています。
本作は新感線では珍しく、ミュージカル作品ですね。ミュージカルな歌い方をする方がメインだからか、私にはとても馴染みやすい。「宛書」とありましたが、宝塚程役者のことを良く知らないので宛書と言われてもよくわからない・・でも「役に似合っていた」のでOK。
ただ脚本に突っ込みどころが多くて、今回はあまり私の好みではなかったので、辛口テイストです。

ネタばれあります。ネタバレなしには書けないのでいっぱいあります。
見る前に読むのは止めた方が良いと思います。見て気に入ったらここから後は読まないで下さいね。

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なんかすっきりしなくて、ストーリーの詰めが甘いのかなー。狐のほうがよかったなあ(と思い出して、狐を途中まで書いたまま放置していたことを思いだした。一緒にアップしておきます)。
これは動機が弱いんじゃ。ラスボスと言える麗波の狙いが弱いし、蛇蝎の変節が理解できない。この重要ポイントが「気まぐれ」なの?物語の基盤になる部分なのに弱すぎませんか。「任侠」が「人狂」って言ってるから、そういうのが狙いかもしれないけど・・。狂気に至る過程があっさりしすぎて「きまぐれ」に感じてしまった。
時代背景が「幕末で維新1年前」と麗々しく謳っているが、全然いかせてないような。それは佐幕の人も倒幕の人も全く出てきてないからだと思う。別にいつの時代でも成立するお話ではないか。強いて言えば、お庭番に役割が!というところですが、埋蔵金探しという役目なら、別に幕末の動乱期でなくても良いと思うのよ。彼ら別に「幕府を倒さないため!」というような信念も何もなさそうだし。
そう、信念ある人がいないように感じた。みんな漂ってる。物語の基盤を作る二人は「きまぐれ」だし、物語を動かす主要な二人は「自分探し」風にモラトリアムに漂っている雰囲気。永流は迷いが感じられるが、その迷いも自分についてだけだし、狭い。草臥は軽い、ものすごく軽い。草臥にもう少し葛藤があればよいのだが、全然感じられない。彼は見たくないすべてに蓋をして口をはさみたいところにだけ挟むといった自由気まま生きている。その次の主要キャストの二人(凶介と揚羽)は、時代背景とか国とかどうでもよくて、自分の想い(悔しい)しかない。登場人物では、清水の親分くらいかな~信念が感じられるのは。あとはいないと思う。なんだか全体に軽いのだ。
だから、主要人物に感情移入できなくて、感動もそこそこという感じになったんだと思う。

まだ書く。
揚羽は京都の商家の娘。別に皇族じゃなくて、御所内に詳しいだけという設定だ。そんな大事?(ごめん)。重要人物じゃなさすぎて驚く。揚羽は実は帝の皇女(母が商家の娘とか)くらいの設定でも良かったのでは?その揚羽を守り尽くす栗根さんが、役割なくてびっくりだわ。出番もほとんどないし。終わって心底驚いた。脚本練り直し!って言いたいくらい。

麗波の衝撃の設定は必須なの?とも思った。いや脚本的にはメインイベントなんだろうなあとは思うのですが。なんで死にかけてばらばらになったからフランケンシュタイン的蘇生して性転換?あまりに荒唐無稽な無理無理無茶では?というか男のままでいいやん?「永流が衝撃を受ける」以外になにか意味があるのか?と思う設定だと思う(永流もそんなに衝撃受けてないし)。いや蛇蝎の変態度を上げるためなのか。そもそも蛇蝎が変態ということに、物語的に何か意味があるのだろうか。わからない。
それに。麗波はそういう設定なのにあまりに女っぽすぎる。仕草も動きも言葉遣いも、完璧に女。まあ狼蘭はそういうのが得意らしいけど(「蛮幽鬼」の早乙女太一さん役の設定から伺える)。それでもよ、元男らしさが皆無。いっそ、宝塚の元男役を連れてきた方が元男感が出ると思う。あまりに完璧な女すぎた。だから余計にそんな設定いらんのでは? 「永流の母」でいいやんと思ったのだ。
さらにだ。それで戦っているときに麗波に惚れた蛇蝎が(そこは理解可能)、仲間を裏切り一族ごと使命を捨ててヤクザになるって、そんで帝に新しい国を創るって・・?なんでそういう考えになるの? 麗波については蛇蝎が変態だからとでも言いたいのだろうか(納得できないが、趣味嗜好だから理解するようなものでもないのか)。でも帝の件はさっぱり理解できなかった。(私の理解の範囲を超えてたみたい。ごめんね)
全然共感できなくて。共感できないといえば、麗波の計画。面白い実験だから、帝を移動させて殺そうとした?それで一国が滅ぶと思った?---ありえない。日本の皇室甘く見すぎ。すぐに次の帝を立てて終わりだよ。実際に、帝の死は十年も秘匿され、特に支障がなかったのではないか。麗波の考えもすぐに論破される程度の浅いものではないかと。なのに、帝の死を知っていながら、御所側に協力して秘匿してあげ、帝移動暗殺計画を10年もかけてやる必要ないと思うの。そもそも、最初誰に帝の暗殺頼まれたの?殺し屋だから依頼主がいるだろうに。10年前の暗殺の依頼者、放置してないか? 麗波は何歳の設定?息子の永流は何歳で親と離れたの?任務に行くとも告げずに、後継者を放置?ロウラン、それでいいのか?謎が多すぎ。
蛇蝎の作ろうとしている国もわからん。なぜ麗波の説に賛成するのかも謎すぎる。君は皇宮警察の一族の頭だったのでしょ?すごい裏切りじゃないの?自分の前半生への裏切りでは?麗波と戦ったときに頭壊れたのか?と思うくらい訳が分からぬ。
ヤクザの国を創るとか、それを信じる親分とか。いま日本がどんな時代がいってみろ!って思う。そんな時に国を割って新しい独立国(しかもやくざの国)を創るって何考えたらそうなるの?親分も洗脳された?
誰にも共感できないわ。まだ、つまらん理由で仲間を捨ててでていったソウノシン(草臥)が許せない凶介のほうがわかる。本名なんだっけ?忘れたけど、名前にこだわって偉かった。信念はあったかも。
だから凶介のラスト。凶介として生きることを選び凶介として死んだんだから、凶介として葬ってあげて!!なんで元の名前(箒衆)に戻すのよ、ひどいやんって思った。

今回はミュージカルなのね。宮野さんいい声ね。よく響いて歌詞も分かりやすい。反面、比べるからかもしれないが福士さんの声の通りが悪く感じた。
あと福士さんの殺陣。いちいち棒の先を付け替えるのにちょいと袖に入ったりするのが、スピードが途切れるなあ。あの小道具なんとかならないのかな?すごく不自然。いつも早乙女太一兄弟の殺陣をみてるからか、全体的にスピード感が無いのに、あの穂先付け替えロスタイムでより一層スピードダウンに感じる。

なんやかんやで、笑ってかっこよくて歌も多くて殺陣も多くて、豪華なセットで楽しかった。余り深く考えずに楽しめばよいのだ。


神州無頼街
演出:いのうえひでのり
脚本:中島かずき

秋津永流あきつながる(福士蒼汰)
友達のいない町医者。清水の親分の命の恩人。実は、大陸のプロの暗殺者村の出身。父とともに大陸から流れてきた。秋津洲に流れてきたからこの名前、って言ってたけど、最初はなんて名前だったんでしょうね。大陸系の名前か。最後まで、麗波も永流も本名呼ばなかった。
殺しの技は裏を返せば医者の技。ということで殺しが嫌だった彼は、医者として生きてきた。でもどこかで違和感があったのかな。心の底ではずっと悩んでいたみたい。今回のことが無ければ、悩みながらも穏やかな医者として生きていけたか。結局は、子持ちの穏やかな医者人生が待っているようだし。殺し屋に向かない性格だったみたいですね。彼の使う技、あれ魔術ですよね。魔法陣みたいなのが発動してるし。そういう世界設定か。ばらばら死体も蘇生・性転換するし、魔法だね。なんでもあり(笑)。
横にいる草臥があまりに明るいから、対照的に暗く見えてしまう。いい奴だ。技術もあるし、どんな時も医者かばんを離さない職業意識もばっちり。これから激動の時代だけど、赤ちゃんという「守る存在」ができたので、幸せに生きられると思う。底抜けに明るい親友もできたし。
福士蒼汰さんは映像俳優でミュージカル舞台俳優ではないのがよく分かった。今回2階席から見たのもあるけど、動きやセリフが違うなあって思った。オペラグラスで見ていたら問題ないイケメンだ。殺陣の時の穂先付け替えに段取り感というか、裏へ取りに行ったりするの、どうしても途切れる~小道具さんもどうにかできなかったのかな。もったいなかった。


草臥そうが(宮野守)
口出しやという口先で生きてる職業の人。軽い。だがその立て板に水というセリフがきちんと通るのが素晴らしい。彼も実は!があり、幕府御庭番の若頭だっけ。ソウノシンと呼ばれているから、上忍ってやつですな。200年任務が無くて掃除をしていたとか、それはないだろと思うけど、そういう設定で、それが嫌で家を捨て身分を捨て使命を捨て、自由気ままに生きていくことを選んだ人。300年の太平を破って幕府が倒れようかという激動時代に、その決意はなんとも・・・ちゃんと考えたか聴いてみたい。「るろうに剣心」の四乃森蒼紫君と同じ立場じゃないかな、もうちょっと葛藤があっても良いのでは?と思う。
元仲間の凶介を見つけて、永流とともに無頼街へ。彼なりに決着がついたのか。もともと葛藤していたのは凶介のほうなのだが、彼と対峙することで草臥の中でもカタが付いたようにも見えた。この後は激動の時代なんて関係なく、3人(永流と赤ちゃんと)で楽しく軽く永流に怒られたりしながら軽~く生きていくような気がする。
宮野さん歌が凄い。さすがミュージカル舞台に数多く出演されている。声の伸びが違う。台詞も明瞭、歌詞も明瞭、その声量。素晴らしい。

身堂蛇蝎(高嶋政宏)
身堂組の親分。神州に街を作って、何やら計画中。実は、もとは帝の警護を担う家の頭。だけど・・なんですよね。もう何がどうなって今の状態なのかがさっぱりな人。街を創ったりやくざの親分になったり、疑似家族作ったりして。元の自分の仕事をどう考えてたのか?それすらもわからない。人狂の体現していたのがこの方だ。中島先生が「狂う人」を描きたかったなら、正解なんだよね。狂った思考は誰にも理解できない。
高嶋さんもミュージカル舞台の方ですね、宮野さんよりは伸びないけど、歌い方がミュージカルだ。貫禄ありのいかつい閻魔大王のようなおじさんでした。


身堂麗波(松雪泰子)うるは
蛇蝎の妻。ラスボス。大陸のプロの暗殺者。なんで子連れで日本に来たのかな、何か仕事があったのか?それとも故郷に居られなくなったのか。そこは描かれてなかった。
大変妖艶な年増美女で、どこからどう見ても女。もとはどんなタイプの男だったのか見てみたい。蛇蝎が作り直したとはいえ、息子を見るにやっぱり線の細い美形だったのだろう。
何を思って行動しているかさっぱり。この方も狂った人ですわ。何がしたいかさっぱりわからなかった。理屈じゃないのかも。一度死んでるし、自分を殺して蘇らせた男も、自分が育てて捨てた息子も、親子ごっこしている息子も娘も、新しく作った街も人も、子分も、今住まう国も、未来もどうでもいいから、全部壊したかったのかも。まさに狂気。
設定の割に女度が高すぎて突飛な設定が生きていなかったと感じた。女を極めるなら、狂女らしくもっと高笑いして欲しかった。


身堂凶介(木村了)
身堂の息子ということになっている実は箒衆のシノビ。洗脳されている方が迷いが無くて幸せだったみたいな感じ。草臥と同じように、決められた人生が嫌で逃げ出したかったのに、逃げられなかった(おそらく心理的に)。だから洗脳されて(操り虫ってチップ使った洗脳だよね)違う人生を葛藤なく生きていたのかもしれない。洗脳が解けてそれを知り、凶介の人生を選んだ。命を懸けて選んで生き抜いた。偉いわ。彼が一番葛藤していたと感じた。


身堂揚羽(清水葉月)
身堂の娘。実は(全員これだ)、皇女の身代わりを務めていた(結局身代わりしてないし?入れ替わっていた方が面白かったのでは?替え玉の商家の娘が降嫁し、皇女がここにいる)
すごく反抗期。いろいろ諦めつつ、といって悟るには若すぎる。町の人たちと上手くやっているのが息抜きか。この後どうなったでしょうね。なんか実家に帰った気がする。そして激動の時代を家を維持するために頑張るのだ。あの二人とともに。
宝塚ならヒロイン設定で、永流とカップルになるね。ラストの赤ちゃんの代わりに永流を支えるのが揚羽になるはず。新感線の脚本では恋愛展開は皆無だから仕方ないが、永流のためにも揚羽を付けてあげたかった。その場合は二人のエピソードがもっと入る。

風天千之介(栗根まこと)
揚羽の爺やみたいな存在。今回ほとんど活躍の場が無かった。栗根さんである必要が無いような役。裏切らないし(笑) 栗根さんのこんなにしどころが無い役は初めて見た。

清水次郎長(川原正嗣)
テーマの一つである任侠を体現する方。貫禄ある親分。すごく親分感が出ていた。しかし蛇蝎にはあっさり騙されてた。草臥の説得を聞き入れて任侠を思い出したみたいですが。
ところであの場面、誰も江戸の幕府に知らせないんだ!?と驚いた。誰も江戸に知らせに行かないの~!ってホントびっくり。あの事件こそ箒番の出番じゃないのか?清水のやくざの親分に言って、それで終わりって・・・と箒番の存在の軽さに驚いた。

大政(武田浩二)
清水の親分の位置の子分。口下手で任侠ものらしい人だった。

犬鳴三兄弟(インディ高橋)
任侠のために出てきた一人三役。ちょい役ですが、印象に残ります。

棺桶やのお銑(村木よし子)
無頼街にいる棺桶やのおばちゃん。ただの棺桶やではない。すごい棺桶を作りなおかつ草臥を助けてくれる。そして歌いまくり。何気に揚羽や草臥を支える重要な存在。
この方も宝塚なら若い美人設定で、草臥の相手役ですね。それならラストシーンにも出てきて、草臥達と同行すると思われる。新感線は恋愛要素が皆無だから、そんな展開にはならなかった。私の宝塚脳が反応してしまっただけだ。


はらぼてお梅(山本カナコ)一家
お梅と夫と4兄弟。なんか賑やかな一家で、主役の二人にいろいろ絡む。お梅はかなり美味しい役だ。そしてお梅も歌いまくり。山本カナコさん、結構綺麗な人ではないか。いつも凄いメイクをしているからわからなかったわ。

箒衆:つまぎ(中谷さとみ)さざれ(保坂エマ)ほか全6名
お掃除が得意なお庭番。あまり大したことはしない。やはり能力は・・。彼女らの役目は、凶介と草臥の関係を説明すること。彼女らにも葛藤が無いねえ。だからお掃除役なのかもよと思ってしまった。


私が見たのは大阪スタートでまだ序盤か。これから殺陣とか良くなっていくのかも。ストーリーは変わらないから、私の好みじゃないのか変わらない。中島先生の描きたかった「狂った思考に基づく世界」は共感しにくかった。


開演時間が12時から。これは大変中途半端だなと。始まる前には食べにくい(オリックス劇場の周りにはあまり店が無いし)。終わったら3時半。たいていのお店は昼休みだ。今回は運よくこの時間から飲んで食べれる店が見つかったので良かった。周囲の客は皆観劇帰り舞台の感想を話していた。同年配のカップルが多いな~やはり作演出と同年配だからか、チケット代が高価だからか。いろいろ言いつつ、一日楽しめました。

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