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宝塚星組「シラノ・ド・ベルジュラック」DC [観劇感想(宝塚)]

宝塚星組「シラノ・ド・ベルジュラック」
2020年12月5日(土)12時 ドラマシティ 8列センター

轟さん主演の星組公演を見てきました。感想は辛口です。

「シラノ」は以前、鹿賀丈史さん濱田めぐみさん田代万里生さんで見た。だからストーリーは知ってる。ストーリーは原作そのまま、セリフは翻訳そのままという印象。何のひねりもない(宝塚アレンジ無し)。

そもそも轟さんはギリシャ彫刻のような美貌の持主と言われたお方、それは今も衰えず。だからちょっと鼻を高くしたくらいで、不細工には見えません。話の設定が破綻しておりませんか?と思ったのでした。
瀬央さんは美しくて役割を果たし、小桜さんは歌が良かった。天寿さんの悪役は素敵。極美さん結構たくさん活躍して目立ってました。あと美稀さんがいいお芝居される。
登場人物は、主役3人が圧倒的で、後の必要人物はこんな感じ。

202012星シラノ.jpg
ミュージカル
『シラノ・ド・ベルジュラック』
脚本・演出/大野 拓史   


翻訳そのままの台詞で、まるでシェイクスピア物のような感覚。あの長くて洒落た言いまわしを早口で立て板に水!の翻訳台詞ですわ。ストーリーもそのままで、セリフも翻訳通りで、全然宝塚風になってない。なのに、シラノの轟さんは宝塚らしく、美しさを損なわないという姿勢を崩さず。だから話に説得力が感じられなかったのが残念。
この話、顔が×でも中身が◎のシラノと、顔が◎で中身がおバカなクリスチャンという設定が大事ですよね。でなければ、超大事な場面である、シラノが「俺の顔を見ろよ!」って言って、クリスチャンが黙り込むという場面が意味不明になる。シラノは容姿に自信がなくて、ロクサーヌに恋していることすら悟らせないのだから。
シラノが鼻を気にしているという場面があるけれど、どう見てもちょっと高いだけで大変お美しい。あれで容貌が悪いと気に病んでるなんて、神経症では?というレベル。「俺の顔を見ろ!」って決め台詞も、「いや大変お美しいですが?」と応えたくなる。ここは思い切って、天狗鼻を付け美しさを捨ててかかるべし!だった。逆にこの美しいシラノでいくなら、「お兄様!と純粋に兄妹として慕われているから、恋心を言えない」を軸にすべきだった。
大野さん、パンフレットもすごく簡素だし、あまりやる気なかった?と言いたくなるレベルである。

シラノ以外も、クリスチャンは武骨だが馬鹿には見えず、なかなかに察しもよい。ロクサーヌは可愛いのだけどしたたかすぎて、純真な可愛らしさが男を手玉に取るための演技に見えてはいけない。いろいろ細かく手を入れなければならないところを放置しているように感じた>大野さんへ。


シラノ・ド・ベルジュラック/轟 悠
ガスコンなのに文才があり、大変内面が豊かな方。設定では容姿がよろしくないので、その分内にこもり内面に磨きがかかったみたい。従妹のロクサーヌに恋をしているが、容姿コンプレックスで言い出せない。純真無垢なロクサーヌから、好きな人がいると相談され、その彼クリスチャンとの仲を取り持ち、結婚させてやり、さらには戦場で守ってやるとは、人が良すぎる!という男。
だけど轟さんは美しくて説得力がなかった。全然ブ男ではなく、話題の鼻も後ろの席から見たらわからんほど(瑕疵ですらない)。だからコンプレックスからの反動行為が、ただの八つ当たり男に見えるのが痛い。ロクサーヌが幼い頃から好きだったみたいだから、「兄と妹として付き合ってきたから、いまさら恋を告白できない」が全面理由でよかったと思う。それこそ『エル・アルコン』みたいに原作に無い幼少時エピソードでも入れればいい。
轟さんは今でもやはり、己を捨てきれないのだなと思った。いつも轟悠がいて役に入りきれない。変わらなさは最後のカーテンコール挨拶でも思った。この人全然変わらない。
もともとコメディは苦手だったと思うけど、今回も間が今一つ。前回の月の「カストロ」のほうが良かった。暗く重いシリアス劇が向いているのも変わない持ち味。
あと、声。これは変わった。もともと若いころからハスキーボイスだったのに、さらに掠れている。周りの声が若いから、目立つ。一般の演劇なら、この年でも(周りも同年齢なら)違和感がないと思うけれど、若い周りとの差がありすぎて聞いていて辛い。ご勇退という単語が浮かぶ。己を捨てられるときはいつ来るのか。同い年だけに、気がかり。

クリスチャン/瀬央 ゆりあ
ガスコンで、ガスコーニュから出てきたばかり。顔が良くて武骨者。その日にロクサーヌとお互い一目惚れで恋に落ち、シラノの協力であっという間に結婚。ロクサーヌが求め胸を焦がす恋文は、ずっとシラノの代筆。だけどね、瀬央クリスチャンは本当にロクサーヌを愛していて、でも言葉がでないからそれをシラノが代筆していたようにも感じた。このクリスチャンは馬鹿じゃない。そういう美辞麗句の世界を知らず、言葉が出てこないだけに見えた。
もし。彼が結婚後すぐに戦場へ行かず、ロクサーヌと結婚生活を送っていたら。クリスチャンの言葉にならない愛をロクサーヌは感じられたか?という疑問がある。多分、小桜ロクサーヌは会話からすぐに代筆に気づいたと思う(彼女は頭の回転が良い)。そして騙されたと離婚する。それをシラノに相談して、シラノの代筆と知り、ハッピーエンド。そういうシナリオが思い浮かぶ。クリスチャンも、彼女の要求は己の世界に無いもの、それを一度手に入れた女のために必死で取り繕う情熱もなくなると思う。いつかシラノの気持ちを知り、自分の気持ちを知り(冷めるんだな)すんなり別れると思うんだわ。
結局、ロミオとジュリエットと同じく、ちゃんと相手を知れば「これは違う」と気づくクリスチャンとロクサーヌではないかと。このクリスチャンは頭使って考えそうな人物だから。ただ武骨なだけで馬鹿じゃないの。だから最後はロクサーヌにとの関係に絶望し、ほぼ自殺のような死に方をする。武骨者なのに繊細だったのね。ああ見えて神経の太いロクサーヌとは合わないと思った。
瀬央さんは綺麗だった。一目惚れされるのもわかる。外見も中身もいい男だと思う。2幕は前半しか出ないけど、最後はとてもよいお芝居だった。瀬央さんお芝居が良くなってると感じました。

ロクサアヌ/小桜 ほのか
登場人物の男性ほとんどからモテモテ。確かに歌は上手いし、頭は切れる。それなりに可愛い。だけどそんなにモテモテになるほどの女性かな~と、ひねくれた私は思った。クリスチャンとの一目惚れは納得できた。だがド・ギッシュ伯爵が策を弄してまで手に入れようとしたり、シラノが長年ひそかに恋し続けるとか、正直どこがそんなに良くて?と聞きたくなってしまった。ロクサーヌって計算高いし、したたかやん!女から見たら、そんなにいい人ではないかも。自我が強くて要求が高く、煩そうだし(ごめん)。だってね、最後の場面。彼女が惚れこんだ手紙を書いた人物がシラノだと気づいてから、あっというまにクリスチャンを忘れてしまったのよ。さっきまで十年以上も喪に服し愛し続けてきたのに、ちょっと酷くない?って思った。クリスチャンを自殺のような死に様に追い込んだのは、自分だと気づいてないな。それも酷い。思い込みが激しすぎるし、ほんと「手紙の君」が好きだったのね。
結局、手紙にこだわり続けすべての男を失った彼女は幸せだったのか・・と思うラストシーンでした。
小桜さんのヒロインは初めて見た(と思う)けど、歌が良いですね。そのためのヒロインだったのかしらと思ったくらいです。



ド・ギッシュ伯爵 /天寿 光希
ロクサーヌを手に入れようと画策する既婚者。部下に結婚させて献上させようとは、姑息だが妥当だ。きっと妻が怖いのだろう。姑息な悪役かと思いきや、意外と男気があり、ラストはいい男になって登場する。シラノたちの運命を握る重要人物ですね。
天寿さんも美形だと思うの。お金持ちで有能そうだけど、でもね。彼は既婚者というのが最大の障害で、論外でした。

ル・ブレ/美稀 千種
シラノの友人。彼はロクサーヌに惚れていないほぼ唯一の人物。シラノの心を知り、ロクサーヌの性質を知り、二人が上手くいくとわかっている人。だからいろいろアドバイスするが、シラノは全然聞く耳持たぬ。なんだか苦労人って感じですね。いいひとだ。
美稀さんの静かで温かいお芝居、しみじみします。

ラグノオ / 極美 慎
パティシエでシラノの友人。背が高くて美形。もうこの芝居、美形ばっかりやん!(ということは星組に美形が多いのか!)パティシエなので、ケーキとかばかりを軍隊に差し入れしているが、武骨な男たちは結構喜んでいるようだ。彼はガスコンじゃないので、武骨じゃない。妻もいるようだが、ロクサーヌにも気がある素振りはパリジャンのたしなみなのか。
シラノのために店を売り払う羽目になってるが平気。シラノの最後の最後まで付き合うという人物。ラグノオにも聞きたい。なんでそこまで入れ込む?って。
ラグノオは、ちょこちょこ出てきて、話をつなぐような役目。極美さん、背が高いので目立つ。役の少ない中、よく出てました。


ロクサアヌの腰元 /紫月 音寧
おつきの侍女ですが、大変明るく楽しい方。コメディには必須の空気を替える方ですね。お芝居の間がいいので、見ていて楽しかったです。

ド・ヴァルヴェエル子爵/天希 ほまれ
ド・ギッシュ伯爵の手下。1幕最初に出てきて、シラノと対決。あっという間に負けてしまいますが、立ち回りは見事。彼も男気あるんだよね~でも妻を上司に進呈しようとするところはいかん。は!彼はロクサーヌに惚れてないな(笑)
  

あとは童僕のコンビとかが可愛かったくらい。ガスコン青年隊はいつも一緒に行動していて、ほとんど区別がつかなかった。ガスコン青年隊では、隊長はともかく、シラノとクリスチャンだけ衣装が違うのね。いいの?(わかりやすいけど)。

そういえば、「三銃士」の時代。さすがに月組「All for One」のデニムの隊士衣装はないな~と思っていたら、フィナーレで出てきた!(笑) なんだか懐かしくて嬉しい。
雪「仮面の男」の時はマントがもっと長くて大きかったような気がする。今回の青年隊の衣装は見覚えがなかった。

フィナーレはほとんど瀬央さんでしたね。衣装が一人歌劇風で目立つ。轟さんはデュエットダンスのみ。あと極美さんもセンターをもらっていてかっこよかった。
フィナーレの銃士隊(青年隊っていうとなんか・・)はかっこよかったです。

ともかく、大野さんには「ちゃんと宝塚アレンジしてください!」と言いたかった。

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