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OSK「円卓の騎士」初日 [観劇感想(OSK)]

OSK「円卓の騎士」初日と2日目
2018年12月21日(金)近鉄アート館 14:30 平土間下手  
2018年12月22日(土)近鉄アート館 16:00 段上下手 


久々の荻田先生のストーリーもの。楽しみにしていました。
期待通り!すごい作品だ。

歌が多い!登場人物が少ないのはOSKだからいつも通りだけど、
みんなセリフを歌ってる。エリザベート形式で、歌がまた難しい!
すごい難曲を歌いまくっている。楊さんが難曲を歌ってる!
みんなビジュアルが美しい。楊さんまた新たな魅力だ、かっこいい。

テーマが深い。
1幕は説明が多くて、少々睡魔に襲われる場面もあったけど、
2幕になると急展開。1幕の伏線がバシバシ回収されていく。
テーマが明らかになるのだが、これはドルイドというか多神教というか、
剣と魔法の時代の物語だけど、冒険活劇ヒーローものではなく、
時代の移り変わりの時期に必死に生きた一人の青年の自己探求モノ。
正塚先生の永遠のテーマを荻田先生風に描いたような印象でした。
もちろん周りの人々もそれぞれ信念に基づいて生きていて、
それが交錯しながら物語が進んでいき収斂する。テーマは一つじゃない。
さすが荻田作品。2回見ると味わいが深い。

201812円卓の騎士 表.jpg


ネタバレ(と私が思っているもの)を書いています。


円卓の騎士
【作・演出】荻田浩一
【出演者】楊 琳・舞美りら・愛瀬光・翼和希・城月れい・麗羅リコ・実花もも・壱弥ゆう・椿りょう・雅晴日・凜華あい・純果こころ・朝香櫻子(特別専科)

【協賛】牛乳石鹼共進社株式会社
【後援】大阪市 大阪商工会議所 公益財団法人関西大阪二十一世紀協会


ストレートなタイトルですが、第1テーマは「アーサー」の自分探しというか自己存在の追求。自分探しというと甘ったるい雰囲気が感じられるけど、そういう甘さはなく追い詰められた切迫感がある。絶望感も漂う。それでいて必死に未来を切りひらこうとする明るさもある。精神的にすぐに壊れそうに繊細でありながら、孤独な王としての図太さ力強さも併せ持ち、しっかりした王妃に希望の光を見つけるその嬉しそうな顔。精神的な支配を受け続け、それと気づかずその呪縛を逃れようとのたうち回る姿。葛藤。幼い子に見せる優しさと慈愛。記憶にない母への思慕。なんとも多面性を持つ主人公!それを楊さんが素晴らしいビジュアルで演じてくれる。こんなにも演技力があるなんて、と驚いたほど(失礼ですね)。

第2テーマが時代の変遷。移り行く時代を押し戻すとする旧時代の象徴である魔術師マーリンと、新時代の象徴のようなキリスト教徒ギネヴィア王妃。第2テーマはこの二人の戦い。陰謀術策を駆使してアーサーを絡め動かそうとするマーリンと、ストレートに直球でアーサーに訴えかけるギネヴィア。やり方も正反対。でもどちらもアーサーを動かし時代を動かそうとする。生まれた時から刷り込まれたマーリンの信念への強制的共感・使命感と、ギネヴィアから知る新しい価値観への共感、どちらにも引きずられ苦悩するアーサーが見える。アーサーを挟んで戦う二人の姿も見どころ。

第3テーマは、愛。これは主に母の愛。イグレインとモルガンに象徴される。イグレインのほうは、アーサーの実母でありながら、我が子をマーリンに奪い取られ、その寂しさを母を亡くした赤ん坊ランスロットを育てることで埋める。ランスロットは実母を亡くしたが、母代わりにイグレインに愛され育った。彼は自分がイグレインにとって「誰か」の代わりだと感じたことがあるのだろうか?まあランスロットは割とはっきりした性格で、どうしようもないことで悩まないタイプのようなので、そこは割り切って、孤児になるところを母として育ててくれたイグレインに純粋に感謝し、息子としての愛情を持っているのだろう。イグレインも素直なランスロットに慰められたことでしょう。だからイグレインは狂わなかった。狂ったのがモルガン。マーリンに「アーサーの妻に!」と言われ、すっかりその通りと思い込んでいたが、そもそもこの二人は姉弟として育ち、アーサーは彼女を姉上と呼んで慕っている。ずっと姉弟として育った関係で、いきなり夫婦は無理では・・・?モルガンにはマーリンの発言は絶対だから迷いがないけど、アーサーそこまで盲目的ではなかった。それゆえの悲劇で、モルガンは、アーサーに拒絶されて出奔、執念の魔力で子供を創造する。それがモードレット。イグレインのランスロットのように、ちょうどいい孤児がいなかったのか。そもそも息子を奪われたわけじゃなく、フラれただけなので、誰か愛する対象を見つければよかったと思うのだが、そうはいかなかったのか。モルガンのアーサーへの執着はちょっと怖いほどで、狂気が入っていると感じた。狂おしい愛、ですね。

この3つのテーマが3層構造でお話を進めていく。(と私は感じた)
すごく重層構造で、一度見ただけでは味わいつくせない、2~3度見てやっとすべてのセリフをかみしめることができるのでは?と思える作品でした。

3つのテーマのもとに出てくる人物は、第1テーマである主人公のアーサー。今回はかなり迷いがあり葛藤の激しい人物。迷いがなく明るく有能で、それでも裏に屈折した感情が見えるランスロット。まっすぐで内側から光り輝くような強靭な精神を持つギネヴィア姫。この3人が表の登場人物。
魔界のほうには、裏の主役ともいえる魔術師マーリン。彼は最初から最後まで、「ドルイドの復興」という目的のため、手段を択ばずに動いている。それは執念といえるほどの熱意で。
そのために犠牲になるのは表の人々だけではなく、仲間である湖の乙女イグレインと養い子モルガンも。彼女たちも無自覚なままマーリンの手駒になり、彼の思想に引きずられ人生を狂わせた。
そもそもの誕生からゆがめられたモードレットもまた超のつく主要人物。可愛らしい容姿に人形のような感情のない話し方、マーリンの望みを追求することだけを考えた迷いのない思想、目的達成のためには犠牲をいとわないその冷酷さ。
彼らが複雑に交錯しながら、物語が進んでいき、結果マーリンは敗れ魔法が支配する時代が終わり、人間の時代が来る‥というような感じの「一つの時代の終焉」という物語・・・だったように思う。でも私が思うだけなので、よくわからない。

ちょっと書いただけでもすごいな・・。さすが荻田作品というか。何層にも重なっているので、読み取るのが大変。重層構造だけど、ラストシーンに向かってすべてが収斂していく。それが誰にとっても幸せではないところが要点か。そこが荻田作品の神髄か。
荻田作品の中では、「螺旋のオルフェ」を思い出したなあ。あの不可解で不思議な美しい世界。謎が折り重なって現実と幻想が錯綜する世界観。今回の「円卓の騎士」も魔法の世界と現実が交錯し、何が何だかわからない不思議な美しい世界を構成しているから。

歌がエリザベート式にセリフになっているので、聞き落とすと大変ですが、今回は全員きちんと歌詞をセリフとして伝えてくれました。楊さんの難曲には参った!これ歌ってる・・と感動。今日は初日だったので、もう少し歌いこめば素晴らしいと絶賛されると思う。東京の千秋楽が見てみたいです。

じゃ順番に。

アーサー王(楊琳)
上にほとんど書きましたが、自身がなさそうな王子から聖剣エクスカリバーを得て王位についても、その内心は晴れず、ずっと鬱屈を抱えている様子がわかる。家臣たちもアーサーを王として認め慕う派(雅)、魔術師に育てられた王など信用できない派(壱弥)、とりあえず今のアーサーは連戦連勝なので着いていく派(椿)と、王国の内情はバラバラ。そこへ現れるギネヴィア。強烈に差し込んだ一筋の光のような存在。彼女の輝く言葉で、どんどん心の霧が晴れていくアーサー。焦るマーリン。マーリンの猛攻を受けて斃れるアーサー。彼の人生はなんだったのか?「自分」とは何なのか?自分が自分らしくいられる場所を探し求めるアーサー、「自分」、「自分らしい」、「なすべきこと/成し遂げたこと」それは何か?最後の場面でそれを問う。

いやー、この間の心理的な動きは素晴らしかった。楊さんがここまで芝居が上手いとは思ってなかったのですが(大失礼)、本当に急成長というかここ1~2年の目覚ましい成長力。ここまでのものを見せてもらえて大感動です。
悩み苦しむアーサーですが、根が陽性の楊さんが演じるから、どこかに明るさが見えて、みていて救われます。荻田先生は役者の持ち味を生かすのが上手いと思っていましたが、さすがですわ。
歌なんですが、超がついてもいいほどの難曲ばかり。しかもセリフになっているから聞き取れないと困る。それをきちんと歌ってくれました。怪しいところが皆無とは言わないけど、全く気にならないレベル。歌も本当に急成長で上手くなり、聞きたい歌声になりました。
ビジュアルも素晴らしくて。資金力に乏しいOSKですが、アーサー王の衣装は月組のアーサー王より好き。すっきりしてシャープでかっこいい。楊さん、惹かれます。


ランスロット(翼和希)
湖の騎士の所以が、湖の乙女に育てられたから、というのを初めて知った。湖の騎士はアーサーとの因縁もあり、この二人もマーリンの手のひらで操られていたんだなあ(湖の乙女も)。
彼はアーサーより背負っているものが少ないうえ、湖の乙女の母性愛に包まれて成長したので、アーサーよりかなりまっすぐ。しかしながら、両親のこと(出自)がわからず魔女に育てられた、という影は持っていて、明るい好青年の顔にふと暗い闇も見える。忠実な騎士としての表から、アーサーへの羨望、ギネヴィア王妃への隠された思慕など、ちょいちょいと見える。それでも他人の前ではきちんと隠していて、弱さを見せない立派な男。アーサーほど悩まない性格なのか、割り切りも良い。本当にアーサーの良い片腕だと思う。悩むアーサーにきっぱり王妃と、割り切りランスロットだ。が、老練の魔術師に嵌れられ、反逆者扱い。養母イグレインと王妃を連れて逃げる役目に。彼はこのあと、大陸に渡り、放浪の騎士業でもしていくのか。その場限りで明るく生きていくようでも、もう高揚する使命感は永遠に失われ、心に刺さった小さな棘、心の底によどむ澱を抱えながら、放蕩に生きていくのだと思いました。

翼さんにもソロが多く、大変良い声で歌い上げていて!もう完成度が高いけどまだまだいけそう。芝居ももっといけそう、というか、初日で私がアーサーとマーリンを追うのに精いっぱいで、ランスロットまで見切れてないからかもしれない。見通せないものが多すぎる、さすが荻田作品。ランスロットのビジュアルもすごくかっこいい。惚れ惚れするわ。


魔術師マーリン(愛瀬光)
「ドルイドの復権」をもくろんで、それだけのために生きている魔術師。古い時代の生き残りの最高峰の人物。彼がイグレインを操りアーサーを誕生させ、モルガンを洗脳して・・とかなり年単位の画策をしている。でも彼らは人形ではなく意思のある人間だったので、彼の完璧な計画は綻び破綻する。まあ計画自体、「机上の理論家が考えました」って感じで、現実感を欠いたし、人間に感情があることを無視していたので、順調にいっても目的達成は無理だったと思われる。誰だって戦いばかりは嫌に決まってる。
マーリンは思想家ですね、自分で活動しない煽動だけの革命家ってちょっと嫌だ。そりゃ誰も共鳴しない。時流も読めてないし。旧時代の生き残りのあがきだったのだな。きっと彼は、彼だけが知る「ドルイドの魔法の時代」の全盛期を思い、そこに帰りたかったのだと思った。でも戻れない。時は戻せないから。現実を認めたくない、自分の力で元に戻す!それだけがマーリンの生きがい。結局、マーリンの我儘。彼が「時の不可逆性」を知るために、どれだけ多くの犠牲を払ったのか・・・。時代の移り変わりを認めない、昔を懐かしむ老人(マーリン)の我儘が、この物語を動かしています。マーリンの人生を思うと、やはり哀しいですね。

さてこの作品を見るうえでの超主要人物はマーリン、彼の歌(歌詞)をよく聞いていないと迷路に入る。でも説明歌が明瞭なのでキーマン役はしっかり安心。裏主人公とも言える役で、さすが安定の愛瀬さんです。白いお引きずり衣装の魔術師ファッションが似合います。ところでドルイドの魔術師は、あの杖が魔力の元なのでしょうか?イグレインとモルガンは杖を持ってない時もあったと思うけど、マーリンは絶対に手離さないの。


ギネヴィア王妃(舞美りら)
キリスト教に改宗した開けた地域コーンウォールの王女様。多分生まれた時からキリスト教徒で、信仰に迷いがない。裕福な王国で両親家族臣下から愛情いっぱいに育てられた王女のような雰囲気で、元気で心に迷いがない。洗脳されている登場人物の中で、唯一明瞭な意思を持つ人物。「自分」があるのはマーリンもだけど、マーリンが闇ならギネヴィアは光。この二人だけが明確な自己を確立している。第2テーマは、この二人の戦いで、それが物語を動かしている。正面切っての戦いではなく、二人がそれぞれアーサーを動かしていくのだけど、恩師マーリンと愛妻ギネヴィアから違うことを言われ、どちらにも心を動かされ、アーサーどんどん迷い葛藤する。ギネヴィアはアーサーを救ってあげたいから、「なんで私の言うことを聞かないの?」と思ってると思う。彼女の思考は明瞭だからね。アーサーの迷いがわかるけど理解できないのでは。だから「さっさと古い執念すてろ、時代は変わったの、周り見ろ」くらい思いながら言ってると思う(こんな言葉は悪くないと思うけど:笑)。実際、彼女の言うことはいちいち正論だし。ほんと迷いがなく正しい考えの健全な女性。彼女が王のほうがいいのでは?と思うくらい。
だから、色々抱えつつ割り切って明瞭なランスロットとは話が合うと思う。面倒くさい他国の宮廷で、とても愛しているけどうじうじ悩む王(←彼女から見て)と暮らしていれば、ランスロットとの軽快な会話は王妃の気晴らしというか、楽しいひと時であっただろうなと思う。ランスロットだって、明るくしっかりした湿っぽいところのない王妃は好みのタイプだろうし。ちょっと疑念を吹き込まれたアーサーが疑心暗鬼に陥るのも、まあ読めた話だ。不倫疑惑はギネヴィアにとっては、「はあ?何言ってんの?正気?」と青天の霹靂だったよね。
結局、彼女なりの愛で、ランスロットを拒否し、アーサーへの愛に殉じました。アーサーを愛した3人の女の中では、やはりギネヴィアに一番共感する。最初から最後まで、筋の通った立派な貴婦人でした。

明るく迷いがない舞美さんのギネヴィアは嵌り役だ!黄色い元気のよさそうなドレスがお似合い。お似合いなんだけど、着た切り・・・?短いドレスと長いドレス、同じでスカートの着脱だけ。ショールと黒いマント羽織るだけ。やっぱりさ、ヒロインには、最低2役は作ってあげて欲しい。コーンウォールの王女時代と、キャメロットの王妃時代、せめて2着欲しい。いつも舞美さんの衣装点数が少なくて不満だ。


モルガン・ル・フェイ(城月れい)
マーリンのもとで、アーサーと一緒に育てられた魔女。ずっと仲良しの姉弟として育てられたように見える。ところがいきなりマーリンが「アーサーの妻として息子を生むのだ」とか言い出す。モルガンは、大喜びでそれに従う。が、アーサーは姉としか思ってないうえ、ギネヴィアと出会っているので、姉を妻にはできない、したくない。結局、アーサーはここで初めてマーリンに逆らい、ギネヴィアを王妃に選び、モルガンの愛を拒絶。弟として姉を慕う気持ちしかないって。そこから始まるモルガンの悲劇。人生の転落。
マーリンも、そういう意図なら、最初から姉弟ではなく、「アーサーはモルガンと結婚するのだ」と幼児から洗脳しておけばよいのに~とか思った。この縁談は思い付きか?と思うほどだ。偉大な魔術師のくせに人の心がわからないマーリンらしいけどねえ。
そんなマーリンの犠牲になったのはモルガンだ。すっかりアーサーの妻になる気満々だったのに、ひどい拒絶にあい、もう傍にいることもできない!と出奔。その気持ちはよくわかる。家出した先に、イイ男がいて彼女が真の愛に目覚めたら、アーサーやマーリンのことを忘れ幸せになれたんだろうけどね・・・。そういう男は現れず、彼女は想いを煮詰めて、子供を創造してしまう。さすが魔女。すごい魔女。そんなことができるなら、いちいち子供産まなくてもいいいやん!って、マーリン思わない?
結局、この能力はこの物語の中で最重要で、モードレットから新アーサーまで、モルガンの魔力がすべてを動かす。モードレットという絶望から新アーサーという希望まで。そんだけ大魔法をつかってまだ生存しているモルガン、マーリン以上のモルガンの魔力の強さにびっくりしました。

城月さんは美声の美魔女。容姿も魔女っぽく赤毛で妖しい雰囲気にしているが、悪い魔女と一言では言えない複雑な背景と感情もつ一人の女性として描かれている。彼女もかなりの主要人物。モルガンはエピソードごとに何度も感情を転換するの。その揺らめきが哀しい。こういう報われない女の役が似合いますなあ。


湖の乙女イグレイン(朝香櫻子)
アーサーの実母でランスロットの養母、マーリン配下の魔女で、若い二人に絡むが、彼らのために何もできないただただ哀しい女。二人にとっての母性の象徴のような女性で、恐ろしい魔女というより脆弱な女神のような扱い。
マーリンの命令でアーサーの父王に嫁ぎ、アーサーを生むもすぐにマーリンに取り上げられ、死んだことにされて湖に封印?される。湖の傍で息絶えた母親から赤ん坊(ランスロット)を託され、奪われた息子の代わりに育てる。魔女が一人で育てた割に、ランスロットは魔術師ではなく立派な騎士に成長しているところが凄い。幼いころは家庭教師、成長してからは留学か?学問も武術も一流の先生をつけていたみたいだ。イグレイン、結構な教育ママ?やるなあ~って思った。
その愛しいランスロットまでマーリンの駒に奪われて、怒るイグレイン。でも少しも怖くない。彼女はマーリンを愛していて、彼に逆らえないように感じた。マーリンもそれをわかっていて、彼女にひどいことを強いているような・・。マーリンの我儘を聞いてくれるたった一人の女性だもの。あらマーリンに対しても母性を発揮していますね、イグレイン。慈愛に満ちた母のような愛を持つ女性なのですね。最後は森に還るマーリンに付き添うしね。この二人の愛も遠回りしたけど、ドルイドの古い森で二人幸せに暮らしてください、と思いました。

朝香さんはすっかり母親役がはまり役に。楊さん翼さんの母としての愛情、愛瀬さんへの母のような包み込む愛まで見せてくれました。正直「乙女」というのはなんだかな~って思いましたが、母らしい役はとても素晴らしかったです。



モードレット(実花もも)
モルガンがアーサーへの想いを煮詰めて土くれから作った人造人間。土人形に命を吹き込むとは、「神も恐れぬ悪魔の所業!」とギネヴィアが非難するけど、その通りだ。どんな宗教でも、「死人を生き返らせる」とか「人を創造する」というのは、かなりの禁忌。秘中の秘の技で、最高の魔術師にしか使えず、それでいて決して使ってはならない魔術だよねえ。モルガンはそれほどの魔術が使えるのか!と驚いた。
そのモードレット、モルガンが造ったのは赤ちゃん。それをマーリンが一気に少年に成長させてしまう。マーリンもこういう難しい魔術が使える!って見せてくれたのね(笑)魔力使いすぎて倒れてたけど。おかげで、感情のない、マーリンの信念の権化のような人物になってしまった。目的達成のためには、手段を択ばない!を体現した人物だ。マーリンのような甘さも気の名の長さもない。性急で短絡的で、目的達成のためだけに突き進む感情のない人形。まさに怪物。
終盤はモードレットの独壇場。もうランスロットもアーサーもマーリンすら蹴散らして、突き進む。一気に物語を終焉へ持っていく。最後にアーサーと戦い、彼の命を奪うのもモードレット。アーサーも怪物モードレットを斃し、力尽きる。母モルガンがモードレットをもとの土くれに戻し、風に散らす。そしてアーサーの最期を看取る。

2幕後半はまるで「エリザベート」のルドルフのように、モードレットは出ずっぱりで一気に全部持っていくような感じでした。実花さん、大抜擢!すごい大役。
初の男役いや少年役。可愛い姿に人形のような無表情と冷酷さが効果的な最終兵器。実は一番の主要人物では?と思える活躍でした。子供らしく見えるよう、幼児体形に作ってましたね。可愛い金髪で。可愛らしい容姿と明るい声、戦慄する残虐なセリフとのギャップが素晴らしく効果的でした。


ここまでが主要な登場人物。
あとは風の精霊シルフィードの麗羅リコさんが、妖精たちと一緒にアーサーの周りでいろいろ囁いたりする。ふつうの人間には聞こえないし見えない。麗羅さんの動きは精霊のようでぴったり。残りの5人の若者が、精霊に扮して周りに従う。精霊の衣装は、PACKみたいで、幻想的。体の線が出る衣装なので、体形がわかる。体絞るの頑張ろう!という人もいた。
椿りょうさんと壱弥ゆうさん雅晴日さんは円卓の騎士(名無し)。セリフがないように見えて、内紛したり(3人しかいないのにすごい)アーサーへの周囲の思惑を代表して表現しているのが素晴らしい。椿さんと壱弥さんには結構立派なソロもある。二人ともすっごい歌える!
ギネヴィア王妃の侍女が凜華あいさん、純果こころさん。可愛い普通の人間の女の子で、さすがコーンウォールの子なので、幻想には動じない。その健全な思想と日常性で、王妃を支えているんだろうと思われる。

主要な象徴といえば、
エクスカリバーは有名エピソードがあるし良く知っていたが、アロンダイトは知らなかった。伝説の聖剣(魔剣)の名前ですか。アーサーの剣がエクスカリバー、ランスロットの剣がアロンダイトなんだって。今回はアロンダイトが大活躍、持ち手の差もあるけど、アーサーが持つエクスカリバーを跳ね返すくらい(アーサーは心に迷いがあるからな)。いまだかつてこんなに強力な剣は見たことないほどの活躍でした。アロンダイトはランスロットが持っていてもあまり威力を発揮しないが、魔法で造られたモードレットが持つと威力倍増。魔剣になるのだな。アーサーもランスロットも「優れた騎士の象徴である聖剣」として剣を持っているけど、魔術師が持つと魔力を開放し魔剣となるのだと理解した。魔法が滅びた世界では、もう聖剣の出番もなく、この2本の剣は湖に沈められ、二度と人の手には触れないのだろうなと思った。この剣たちもまた、古い時代の象徴だったのですね。

衣装はすっきりしていて、とても良い。ギネヴィアのドレスがあと1点あれば言うことない。騎士の衣装も変に鎧をつけなかったので、すっきりと体形にあってかっこいい。アーサーもランスロットも、キャメロットの騎士たちも、似合っている。
魔術師と魔女たちは、ドルイドの杖とずるずる引きずる衣装。こちらも魔女らしくすっきり素敵。精霊たちも、シルフィードは三角の耳もつけていて、動きにそってなびく衣装でとても綺麗。風の精霊に見えた。その他の精霊たちの衣装は、照明でかなり森の精霊っぽく見えた。

そう照明
今回1-2幕を通じて、セットがまったく変わらない。ちょっと立体のあるセットでそれ自体も素敵だが、これが照明一つで森の中、湖のほとり、宮廷、といろいろ変わるのだ。下手は3段になっていて壁がある。この壁に照明を当てて、いろいろ場所が変わる。3段あるから立体的で動きのあるセットになってる(セットは動かないけど、人が立体で動くから)。中央に階段、上手に奥と手前。段あり。素晴らしく計算されたセットで、感動的。照明ひとつでこれだけ場面が変わるのね!
ああ、そういえばタイトルロールの円卓は出てこなかったな(笑)。どうしても「円卓」というと高級中華料理店のテーブルが思い浮かぶ私。中華な赤い装飾や牡丹灯篭やランタンまで一緒に思い浮かべてしまうので、雰囲気が壊れるから、あまり円卓円卓と連呼しないで~と勝手なことを思った。いや円卓の意味もきちんと説明されており、共感できるのだけど、頭に浮かぶ円卓が赤いんだ(笑)


ということで、いろんな伏線がガンガン張り巡らされていて、あとから考えると、「そうか!」と思える場面が満載。セリフの意味が深い。裏にどれだけの想いがあるのか、は一度では見切れない。一回だけ見ても面白いけど、2回見ると伏線の意味を感じながら見られるので、さらに深く味わえる。荻田作品は奥がブルーホールのように美しく深いので、2回以上見るのが絶対にお勧めだ。

短いフィナーレがついている。さすが歌劇ファンを分かっているわ、荻田先生。
歌劇の衣装で(たとえ短くても)フィナーレがついていると、重いテーマのラストでも、明るく楽しく劇場を後にできる。OSKには必ず最後に「桜咲く国」があるけどね。
ちゃんと青ベースの歌劇衣装で、フィナーレ。髪はそのままなので、みんなロングヘアを束ねた感じになっているけど、歌劇ショーの衣装。まずは愛瀬さんが歌い、翼さん率いる男役が踊る。娘役が下級生から順に登場し、舞美さんが率いて娘役総踊り。次に翼さん登場!男役全員登場、楊さんがばーんと出てきて男役総踊り。娘役が合流して全員で総踊り。の時に、翼さんが歌う。これが上手い!絶品の歌で全員が踊る。3段セットの上まで使うから、少ない人数のわりにかなり迫力がある。3段の一番上に、一番長身の椿さんを配するから、余計に迫力が出るのかな。
楊さんのロングヘアがカッコよくて、美しくて、ロングヘアも似合う~と感動した。元が美女なんだってことを実感した。


今回一緒に見た人の感想は「なんて難しいテーマだ!」とか「歌すごすぎる。これを1日2回公演するの???大丈夫?」とか「アーサー美しい、なんてかっこいいの!」「ランスロット歌上手い」「ギネヴィア可愛い」「モードレットすごかったね」っていう感じでした。
やはり荻田先生の作品はクオリティが高いので、誘い甲斐がありますね。ほんと安心して誘える。あと楊さん主演だから歌劇の男役の美しさかっこよさも安泰、翼さんがいるから歌劇の歌も安泰、安心して初見の人を誘えます(笑)。


今回は、協賛がついたのですね!「牛乳石鹸」。入り口で石鹸1箱(石鹸の解説?とセットになっている)いただけました。嬉しい。使うわ~赤い箱が懐かしい。「牛乳石鹸、良い石鹸♪」って思い出す。牛乳石鹸も90年とか?すごいなあ。

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