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クリエ「シークレット・ガーデン」 [観劇感想(その他)]

クリエ「シークレット・ガーデン」
2018年6月15日(金)13時 シアタークリエ 14列

ポスターを見た時から見たかった作品。
原作のバーネット女史の「秘密の花園」が大好き。
幼少時(おそらくBBC制作の)テレビドラマに嵌って、
少女名作文庫の原作を読み、漫画をよみ、感動した。
そのTVドラマのイメージそのままのポスターに惹かれた。

さすがに舞台なので、TVのようにはできず改変されていたけど
メアリーとアーチボルト&リリーがイメージ通りで美しいお話だった。
ネヴィル叔父様とメアリーの両親が、根本変えるほど改変されてたかな。
原作は子供目線だけど、舞台は大人目線だからか。

楽曲も美しかった。ただ幻想的というか、幻影というか。
ワーッと盛り上がる感じではないので、たまに睡魔も来る。インド風は心地よすぎ。

セットが大変美しい。ヒースの荒野や、枯れた庭、秘密の花園に見える。
もちろん閉じれば古いお屋敷、暗い部屋。インド。
少し動かすだけで、空間が変わる。見事ですね。さすが松井るみさん。
衣装も美しかった。リリーの花のドレスが幻想的でイメージ通り。

ストーリー的には結構大事なところが改変されていますが、
原作を知っていたので(矛盾点は無視し)、心温まるラストシーンに感動。

花園201806秘密の.png



ミュージカル「シークレット・ガーデン」

脚本・歌詞: マーシャ・ノーマン
音楽: ルーシー・サイモン
原作: フランシス・ホジソン・バーネット「秘密の花園」
演出: スタフォード・アリマ



こんな感じで原作大好き、花總さんなら見たい!と行ってきました。
ほとんどイメージ通りだけど、一部原作と違うところ(というか私の記憶と違うところ)があって、違和感あり。あと、私が見た媒体(TVドラマ、小説、漫画)は全部、子供目線でメアリー主役だったので、今回の舞台はアーチボルト主役の大人目線。そこが大きく違うなー。受ける印象がかなり違う。もちろん原作を読んで感じるアーチボルトの心理は描かれいる。でも子供のころはあまりよくわからず、「お父さんが優しくなってよかった~」くらいしか・・少し大人になってから読むと、かなりアーチボルト(お父さん)の心理が深く描かれているとわかる。一切出てこないその奥様とメアリーの両親は、幼少時に読んだときには影が薄かったのですが、大人になって見るとかなりかなり大きな影響を与えている、とわかる。
この舞台は、大人目線。大人が感銘を受けた原作を舞台化し、それをわかりやすく視覚化してくれた。ま、確かに子供目線で上演したら、「夏休みこどもミュージカル」とか、小さな子供が楽しむ冒険&友情物語になってしまって、原作の持つ重みが感じられなくなって、良さが味わえないものな。原作だって子供目線ながら、大人も感慨深く味わえる作品だから、その良さを生かした、と思う。
私だってBBC放送を見ていたころの私からしたら「おばあちゃん」と思える年齢だけど、いまだに、この原作大好きだ。なんでかわからないけど、昔から一番好きなのだわ。



アーチボルト 石丸幹二
屋敷の主人、本作の主人公。原作はメアリーが主人公でメアリー視線で話されるので、途中屋敷を出て行ってしまうアーチ伯父様はあまり出てこない。でも今回はアーチお伯父様が主人公なので、伯父様の心理がかなり克明に語られる。彼の身体コンプレックス、リリーへの愛の深さ、コリンへの複雑な複雑な感情。メアリーに対する感情の変化。かなりよく分かった。これは石丸さんが素晴らしいのかもしれないけど、ほんとに良く伝わってきた。なぜリリーがあれほどアーチを愛したのか、共感できるほど。アーチはそのまま大きくなったコリンなんだよね(弟がいる分、社交性があるのかも)。コリンにとってのメアリーがリリー。
ここまで描いてあるなら、リリーとアーチのロマンスも見たかった。


リリー 花總まり
アーチボルトの亡き妻、コリンの母。大変な美人で優しい理想の女性、として描かれている。アーチの思い出の中のリリーとして登場するから、かなり美化されているのかもしれないけど、彼女と接することが一番多かった庭師のベンの証言からも、素晴らしい女性であることはわかる。そのリリーだが、アーチとコリンを置いていけず地縛霊となっているような登場。良い地縛霊といったらよいのか、心残りがありすぎて成仏できない風情。
舞台に登場するリリーは「リリーの亡霊」と「アーチの記憶のリリー」がいるように感じた。記憶のリリーは聖女のように美しく気高く慈悲深い、もはや女神。亡霊のリリーは、もどかしくて悔しそうで無力な地縛霊。そんな風に感じました。
花總さんはいま何歳だっけ?全然変わらないなあと思う。高貴な役か幻想的な役をするととても嵌るタイプの役者さん。現代人や等身大の役が似合わない。だからリリーのような役も得意なのね。日常的ではない美しいドレスを着てた佇む姿が大変美しく、幻想的な装置の中に溶け込んでいた。そこに立ってるけど次元が違う(霊界?)ように見える。歌も宝塚時代よりとてもよくなっていて、上手いと思えるレベルになったと思う
私が一番最初に宝塚で買ったスチール写真は、花總さんだったと思いだした。初演エリザベート様のお写真だったわ。もちろん一路真輝さんのトート閣下と一緒に買った。宝物だったな。花總さん、この世のものとは思えないくらい美しかった・・


メアリー 池田葵
インドで両親を亡くして伯父であるアーチボルトに引き取られた。「つむじ曲がりのメアリー」と呼ばれるひねくれた子供。原作での主人公。原作はメアリー目線で書かれているから、アーチの苦悩やリリーを失った喪失感と絶望、コリンへの複雑な思いが行間から察せられるような作りになっていて、直接出てこない。メアリーにとってのアーチは無口でよくわからない伯父様、リリーは会った事のない知らない伯母様、コリンは我儘な子供、として描かれる。むしろマーサやマーサの母(舞台では出てこない)、ベンが大きな役割を果たしている。
今回のメアリーは、アーチ主役の舞台でも「あたしが主役なの!!」という存在感で、見せてくれた。歌も上手かったし、ひねくれた子供の可愛げのなさをとても上手く演じていたと思う。
ほんっと可愛くなくて、インドでも両親から遠ざけられ、インド人の召使を人とも思わず、親切にしてくれるのは当然、他人のことなど思いやりもせずに生きている(原作では。舞台ではメアリーの両親はとてもメアリーを愛している。これは大違い)。
そんなメアリーが、誰もが自然体で生きる荒野で、秘密の花園を得て、自然と親しみ自然のもつ優しさに包まれて思いやりの心を持ち、豊かな感性をはぐくみ成長していくお話。
だから偏屈だけど自然を愛するベンや、自然を友とする自然そのもののようなディコンと触れ合ううちに影響を受け、マーサのおおらかさ、マーサ母の優しさに触れて人として成長していくのよ。成長していくメアリーだから、コリンに強烈な影響を与え、エネルギーを分けてあげられ、コリンも成長していくことができた。
このお話のメアリーは、美人でもなくひねくれた性格で、このままいったらかなり孤立した人生を送りそうなところは原作通り。ただ父と母、インドの乳母たちに愛されていたことを、本人は知らなったけどとても愛されていたと描かれている。最初から愛を知らない子供ではなく、愛に気付かなかった子供になってる。大きな違いだわ。
池田葵さん、ものすごく上手かった!メアリーぴったり。


コリン 鈴木葵椎
アーチとリリーの息子。病弱で寝たきり。超がつく我儘で扱いづらい子。彼も孤独と不安の中、我儘の鎧をまとって頑張っているのだけど、メアリーにはわからない。そこで二人が本音をぶつけ合って誤解を解いていく場面、とても好きだ。誰もが腫れものを扱うようにコリンに接するのに、メアリーだけは違う。そしてディコンも。彼は不器用な二人を優しく見守ってくれる(この場面はとても少なかったように思う。もっとあってもいいよな)。
コリンと父、メアリーのラストシーンはとても良かった。
コリンの鈴木君、ちょっと小さい?コリンとメアリーは同い年と思い込んでいたので、コリンが年下に見えてしまって。歌もメアリー圧勝という感じで、頑張れ!と応援したくなった。


ネヴィル 石井一孝
アーチの弟で医者。コリンの主治医。この人のイメージも違った。原作のイメージでは、「コリン亡き後、当主に」という財産狙いの腹黒い陰謀家だったの。ぜんぜん違うやん。
医学的に間違っているけど、兄想いの良い人。まあ兄想いでコリンのことは二の次だけどね。
ちょっとはロンドンの医者の話も聞けばいいのに。兄がコリンに期待していることも、コリンが感じていることも希望も未来も何も考えてはいない。ただただ、「コリンを生かすこと(生命維持)」だけしか考えてない。生きてりゃいいってもんじゃないよ?あんたそれでも医者?と突っ込みたい。財産狙いでコリンの死を願ってないのなら、あの言動はヤブ医者に見えて仕方ない・・。
彼も視野狭窄に陥っているようでしたので、狭い世界を出て、ロンドンとかで世界をみて、彼を愛してくれる良いお嬢さんが見つかるといいなあと思います。
兄との二重奏は圧巻ですね。どちらも上手いし、なんか似てるんで兄弟といわれて納得。


マーサ 昆夏美
近在農家の娘で、お屋敷のメイドというか下働き。やったら元気で、天真爛漫で、それでいて思いやりのある人。まだ若いよね~二十歳にはなってないと思う。あのおっかさんの娘だなあって思える器の大きな娘さん。今回は彼らの母が出てこないので、マーサが母の役目もしていた。だから余計におっかさん。
歌いまくってましたね、すごい声で。いや~すごい力強かったです。


ディコン 松田凌
マーサの弟。動物と話せる自然少年。彼がポイントになるのですが、ちょっと年長すぎ?マーサと同じくらいに見えてしまう。本当はメアリー、コリン、ディコンは働いてない子供チームなのですが、このディコンは青年に見える。年長感がありすぎると、「秘密を共有する仲間意識」がちょっと出にくい。本当はディコンもちょっと年上の子役がいいと思った。ディコンが子供じゃなかったら、メアリーは心を開かないと思う。
あと歌。なんか一番????が飛んだ。音程大丈夫?という感じ。一番心配した。


ベン 石鍋多加史
お屋敷の庭師。秘密の仲間に入る唯一の大人。原作では頑固でつむじまがり、メアリーといい勝負のがんこいじいさん。そこがメアリーとの共感につながるのだけど、このベンは温厚なよいおじいさん。マーサに近い。マーサ母の役目、ベンも分担したみたい。
いろいろ出てこられてたけど、歌やとっても素敵。おじい様だけど声がいい。


ローズ 笠松はる
メアリーの母。リリーの妹。この人もリリーと同じく最初からずっと亡霊。娘にくっついてインドからイギリスの荒野まで。えらいやん。私の持ってたイメージでは、社交好きの美人で、子供嫌い。自分に全然似てないメアリーを遠ざけている人。自分のことしか考えてない、我儘な「社交界の花」だった。
でもこのローズは、社交的ではあるけど、普通の女性で、優しいママ。メアリーはちゃんと愛されて育ってて、なんで「つむじ曲がり」と呼ばれるほどの子になったのか、ちょっと説得力が・・・。夫との仲も良いし、いいお母さんでいい家族に見える。それなら、ひねくれたメアリーが生まれつきの性悪娘になってしまうやん。とか思ってしまいました。
それほど優しい声で歌ってメアリーを見守ってたママでした。
生前場面では、「評判悪い根暗男」に惚れてしまったお姉さんのことも心配していたしね。いい人やわ。

アルバート 上野哲也
メアリーの父。インドで軍務についてた(でも軍服着てない。)。結構な上官らしい。部下も慕っているようだし、評判も良く人格者みたい。妻も娘も大事に思っているようで、コレラのときには二人の身の安全を!と必死になってる。メアリーがたったひとりコレラから助かったのって、両親が自宅でパーティを開いていて、邪魔なので追い出され、一人ひねくれて隠れてふて寝してたから、だと思っていたので、この優しい両親なら、メアリーも一緒にいて犠牲になってそうな気がする。メアリー、丈夫な子だ。
妻と一緒に娘にくっついて、イギリスで亡霊している。優しい父だ。亡霊になってもずっとメアリーを守ってるし。
ということで、メアリーの両親はとても優しくてよい人で、「つむじまがりで可愛げのないメアリー」を形成する両親とは思えない。またメアリーが一人コレラから逃れられる理由もわからない。


という感じで、メアリーの両親とネヴィル叔父様が良い人になった結果、メアリーが生まれつきの性悪娘のようになってしまい、残念だ。原作では、メアリーは根は素直なよい子なのに、両親に除外されて寂しく、周りの召使たちは「我儘なお嬢さんをはれ物に触るように」扱ったので余計に寂しく、ひねくれた。という設定だったと思う。だから同じ立場のコリンともすぐに理解しあえたと。マーサやディコン、ベンから愛情をもって普通に接してもらい、凍った心が解けていく様子が、子供たちの見どころ。
心が解けたコリンをみて、明るく素直な(リリーに共通する)本性が表出したメアリーに触れて、アーチが自分を取り戻す。3人は家族になって幸せに暮らす。そんな話。
まあメアリーが生まれつきのひねくれものでも、インドが合わなくてイギリスの荒野で心ほぐれて幸せになるなら、まあいいか。

というわけで、私は多少の違和感を持ったものの、アーチ、リリー、メアリーにはとても共感し、この物語が持つ感動をもらったのでした。

この作品は大阪公演がないので、東京で見れたらいいな~と思っていたところ、ぽっかり時間が
があいたので、見に行けました。・・・まあ移動にタクシーすっ飛ばしたけど(笑)
小さめの会場、少なめの人数、とても幻想的なセットが生かされ、役者も良くて見に行ってよかったです。


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