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宝塚宙バウ「SANCTUARY サンクチュアリ」 [観劇感想(宝塚)]

宙バウ「SANCTUARY サンクチュアリ」
2014年9月11日(木)14:30 宝塚バウホール 後方センター


本日はダブル観劇。同じ演目を2回観ることは滅多にしない。
でも違う演目2つを見ることは時々ある。日がないからだ。
(つまり午前中に花組『エリザベート』を観劇、感動のあまり感想は長い。
リンクはったので御参照ください)


演出家が若い人で、新しい演出家のバウは結構佳作が多い。
あらすじを読むと、面白そう! ・・・ということで行ってきました。

大当たり!すごく良かった
田渕先生!凝った台詞がいっぱいで、テーマが明瞭。時代選定とテーマが合致してる。
この必然性がなかなか備わってない脚本が多いから、それだけでも秀作といえる。
ほんとうに脚本が素晴らしい。
演出的には少々地味で暗い場面も多かったけれど、登場人物が大変少なかったけど、
物語と台詞が素晴らしい。ぜひぜひ脚本家になってほしい。
見ごたえありました。これからも田渕作品は見に行こ!と思いました。
(舞台が暗い、人が少ないといったって、正塚作品ほどではありません。普通です)

あと衣装が!雪組『ドン・カルロス』で見たものがいっぱい!!同じ時代だからですね。
宙組はあまり見てないので、出演者はほとんどわからなかったけど、衣装はわかった(笑)
すっごく懐かしかった。(そういう客は少ないだろうね・・・大好きだったのよ、あの作品。)

出演者は、王妃マルゴの伶美さんが素晴らしく気高く美しい。これぞ絶世の美女、王族。
特筆すべきはカトリーヌ母后の純矢さん。この人が芝居のクオリティをあげていた。
占い師のおばあさん(花音)さんと二人かな。この二人が芝居を締めていた。
アンリ4世になる愛月さんが、なかなか男らしくて素敵。主役っぽい方ですね~
彼をはじめ、歌が(あまり無いけど)破綻している人も居なかったし、
全体でみてもなかなか良かった。(芝居は・・・・な惜しい人が何名か・・いたが)。

「SANCTUARY サンクチュアリ」 田渕大輔


王妃マルゴで有名なあのマルゴ。解説読むと、やはり田渕先生もあの「マルゴ」を見て?
アンリ4世はまた別で有名だし、カトリーヌ・メディチも超激動の人生を送った女性。
この時代、主役はれそうな人物がいっぱいだものね。よくまとめたわ・・
結構史実とは変えてるし、映画とも違うし(特にヒロインのマルゴ)
あの人数であの時間でよくこれだけ上手くまとめたな、と。テーマもがっちりで。
しかもちゃんと宝塚風アレンジで。本当に凄いなあと感動した>脚本。
最近デビューの若い演出家には、期待大ですね!!嬉しい。

今回「アンリ」と呼ばれるのは、アンリ4世になるナヴァール王のアンリだけ。
アンジュー公とギース公は、それぞれ「公」で呼ばれ名前は一度もでてこない。
多少違和感があるが仕方ない。だって二人ともアンリだもんな。
アンリが3人というややこしい時代だ。(ほんといえばナヴァールはスペインだから
アンリは「エンリケ」でいいんけど。「エンリケ」って呼んだら気分が出ないからな。)
それにしても、ヨーロッパ人ってば、名前のバラエティ少なすぎ・・。

そして、もうひとつ。宙ファンの方にはどうでもいいことだけど。
カトリーヌ・ド・メディチの長女、今回のヒロインマルグリットの姉エリザベート、
つまりスペイン語でイサベル。それが『ドン・カルロス』のヒロインなんだよね。
皇太子ドン・カルロスの元婚約者でフェリペ2世の王妃、。雪組では沙月愛奈さんが演じた。
ほんっと同じ時代。だから衣装が被りまくるのも当たり前なんだな~。
フランスはスペインほどカトリック至上主義じゃなかったんだね。異端審問長官とか
出番ないって感じだもん。ギース公も、スペイン行けば価値観一緒だったかもよ。
ナヴァール王アンリがスペイン行ったら、入国した瞬間、死刑!で終わりなくらい。
このどーでもいいことを思い出し(衣装が刺激するから)、知らないジェンヌさんばかり
なのに、妙に親近感を感じ、とても懐かしかった。


では個別に。


アンリ・ド・ブルボン(愛月)
ナヴァール王で、プロテスタント。カトリックとプロテスタントの融和のための政略結婚。
そのためにフランスにやってきた。結構いっぱい罠にかかってる。「イナカモン」とか
言われてましたが、結構純真で誠実な方でした。当初は騙されまくりで・・
何を信じればいいか全く五里夢中。幽閉されたり、殺されそうになったりと大変。
そんな中、つんでれマルゴの誠意に出会って、やっと信じるもの、愛するものを得ました。
これから(史実は別ね、マルゴが別人だから)愛する王妃とともにフランスと統治し、
あの栄光のブルボン王朝時代を築いていくのですね・・!と感慨深かった。

愛月さん、実ははじめてちゃんと見たかも(宙みてなくてごめん)。
すごく主役っぽい方ですね。なんというか男くさいタイプで、ワイルド系も似合いそう。
歌も良かった。(今日は朝「エリザベート」で素晴らしい歌を聞いた後だったので、
かなり厳しいめなのに、普通に歌を聞けた。ということは、実は上手いのでは!?)
お芝居も、作者が「王妃マルゴ」を意識して書いたというのに、「主役」に見えた。
なかなかの存在感があり、だから主役っぽいという妙な表現になったのかも。
本公演ではあまり目立つ役はされてなかったのかな・・?よく判らないけど、
力量のある役者さんだと思うので、これから意識してみてみよう!と思いました。



マルグリット・ド・ヴァロア/マルゴ(伶美)
マルグリットという名の王女や王妃もいっぱいいる。だから「マルゴ」と愛称で
呼ばれているのですね。美貌の王女で、男好きで奔放で・・というのが定説。
今回は前半分はOKで、後半分は変更されてる。アンリ一筋のツンデレ王女に。
マルゴだけドレスの肩が思いっきり開いてるのは、後半部分の名残かもしれないが、
とにかく美しい。普通のドレスでも十分美しいと思うが、あの肩だしドレスは拘りか?
それでも下品にならないところが、さすがというべきか。
母や兄に政治的に利用され、愛に飢えた孤独な王女。何も信じられない・・と
言っていたのに、純粋で誠実なアンリに出会って、自分を信じられるようになりました。
だから、アンリになんと言われても、アンリを助けたかったんですね。
奔放でも男好きでもない、その余韻を残しつつ(というか現代風に言えば不良ぶってる?)
ツンデレの純愛美女になりました。さすが宝塚のヒロイン!

伶美さんのお芝居は好きだ。こういう冷たい美女は嵌りますね。気品があって美しい。
そして時代物が似合う。いわゆるコスチュームモノ。容姿だけではなく、芝居の質が
現代モノより西洋時代劇が似合うのだ。凛々しく品があり、高貴な孤独、陰があるから。
「美女」といわれて納得する。「可愛い」で誤魔化さず、「美しい」が似合う人は少ない。
端正で凛々しい正統派美女だ。最近滅多に見なくなったので、とても嬉しい。
(正統派美女とは早霧さんの女役がまさにそうだった。二人が組んだら最強美男美女!?
ビジュアル最高だね。二人とも女役も男役もできるから交代できて幅も広がるし?)
歌も、今回はとても綺麗に歌ってたと思う・・が、全体に歌がとても少なかったので、
なんとも。ラストのデュエットは大変美しく聞いた。声も綺麗だし、これだけ歌えたら
私としては十分。もうちょっと歌えたら『エリザベート』のシシィ見てみたいわあ。
この豪華衣装が似合う正統派美女が寄り添える男役を探すのが大変だな・・・
愛月さんは似合っていたから、男らしいゴージャスな男役なのね。これから注目だ。


<カトリック>
カトリーヌ・ド・メディチ(純矢)
かの有名なメディチ家から来たフランス王妃。もう激動の人生を生きた女性。
彼女を主人公にして欲しいくらい。1本ものじゃないと無理そうなくらい波乱万丈よ。
今回は、頼りない国王(シャルル9世)と無謀な野心家の次男(アンジュー公)、
そしてすれ違いで心の離れた娘(マルゴ)に囲まれた、孤独な母親でした。
カトリーヌのことを理解していたのは、占星術師ルグジェリだけ・・。
ラストシーンも哀しい一人の母親の姿で。
「冷酷で」といわれるほど、冷酷でも何でもなく、ユグノーとは和解しようとしているし、
頼りない王を支え、内乱を防ぎ財政を立て直し、必至で王国と子供たちを守っている母に
しか見えなかったわ。親の心子知らずって感じ。

純矢さん、素晴らしく上手い。この人が居なかったら、この芝居をこれほど感動して
見ることは出来なかったのでは?と思える。素晴らしい演技力で舞台を締めていた。
最優秀助演女優賞を差し上げたい。大絶賛です。


占星術師ルグジェリ(花音)
カトリーヌは占星術を重視してて、かのノストラダムスが側近に居たんですよね。
今回はルグジェリという老婆。思わせぶりな態度が素晴らしい占星術師でした。
この人と王妃カトリーヌの関係も、いろいろ奥を思わせてくれて、深みを与えていた。
素晴らしい老婆ぶりに、カーテンコールで感動した。
腰が辛そうな役なので、お大事になさってくださいね。


シャルル9世(秋音)
頼りない国王。夫亡き後(長男も)この息子が大フランスの王。それを支えていかなきゃ
ならない母の心はどれほど痛んでいたか。それでも息子を愛して、頑張ってきた。
この息子はかなり精神的に脆弱ですね。本当は修道院にでも入れたほうが幸せになれた
ような性格ではないかと。国王に向いてない。それは母も良くわかってる。だけど王なの。
取り替えようとは思わない、もう遅い。それをアンジューってば・・。
シャルル9世、この人も信じられるものが無くて、すがったコリニーに騙され、
ギースに操られ、良心が見せる悪夢に悩まされ、悲惨な最期を迎えてしまいました。

弱弱しい王様がとても似合ってました。全然知らない方ですが。弟や妹より若く見え、
それはまあ精神面が幼いからか・・と納得しました。プログラム見ると実際若いな。


アンジュー公(春瀬)
シャルルの弟で、物語中、唯一の母親似(性格)の息子。非情で冷酷で、
目的のためには手段を選ばず手を汚せる人物。でもね、自分で手を汚しちゃダメなの。
王者になれないのよ・・!超えちゃいけない一線があるのよ!この馬鹿息子が!と
母は思ったでしょう。(彼、史実ではちゃんと国王アンリ3世ですけどね)
全く「どの子も出来の悪い・・」と、頭を抱えている母の姿に同情してしまいます。
まあ、「策士、策におぼれ」あっさりやられてしまいました。母がっくりでしょう。

アンジュー公だけ、衣装がスペインモノじゃない。なぜ?シャルル9世も違ったか。
なんかシマシマ衣装でマントが小さくて、あまり豪華に見えなくて残念だ。
ギースやアンリが着ているあの肩羽織りのスペイン衣装のほうが豪華なのにね。
春瀬さん、お顔は私の好みではなかったけど、お芝居は良かったです。


シャルロット(愛白)
マルゴの侍女で親友。なんというかカトリーヌとルグジェリの関係みたいな。
彼女だけは信頼できると、マルゴも思ってるように見えたのだが、
「信じられる人」の中には、身分が違う侍女は入らないのね。
特に何かをしたわけではないが、常にマルゴの傍に居て、彼女のために行動している。
なかなか良い侍女だった。特に何も役割はなかったけど。可愛かったです。


ギース公(凛城)
カトリックの熱狂的な信者で、異教徒(プロテスタント)は力で排除したい。
いや壊滅させたい。そしてマルゴが好き。アンリにとっては二重の意味での敵。
主役と張る2番手。すごい美味しい役だ。だが・・ちょっとばかり残念なことに
凛城さんのお芝居では、折角の美味しい役所が十二分に生かせてなかった。。
ように感じた。というのも、アンリと上手くかみ合ってないというか、力の
レベルが合ってない気がしたのだわあ。迫力不足?力量不足? もちろん主観ですよ。
この役を芝居が上手い人が演じていたら、歴史に残る素晴らしい役になったのでは。
(そう思うと、月バウ『月雲の皇子』はストーリー脚本演出も素晴らしかったけど、
珠城&凰月のどちらも芝居が上手く、絶妙に拮抗していたから、絶賛の嵐だった
のではないかと、思ってしまった・・『サンクチュアリ』は演出も足りないけどね)
このお芝居、ギース公がちょびっと残念であった。私にとって。じゃあ誰が?って
言われると、今日見た舞台には居なかった。もっともっと影があって、黒い役が
難なくこなせる視線の鋭い役者が必要。アンリが白いからね。
う~ん、この役、難しいかも。


ナンセー(美月)
王子様よりご主人様より立派な衣装の部下。ギース公の部下ですが、こちらも熱心な
カトリック。ギースに言われなくたってアンリなんか大嫌い!という感じが出てます(笑)
彼は腰ぎんちゃくではなく、ちゃんと自分の意志で行動しているなあ、と思いました。
結構ちゃんと、能動的に動いているんです。細かいわ。


<プロテスタント:ユグノー>
ジャンヌ女王(花里)
ナヴァールの女王にしてアンリの母。この作品ではアンジューに毒殺されてました。
(アンジューってば母にも言わずに勝手に殺してしまって・・やっぱり放置できないわ)
ナヴァールでは誰も気付いてなかったのに。この母の遺言が、「アンリをフランス王に!」
でした。孝行息子だけどマザコンではないので、自分の頭で考えてますね、アンリ。
ふと、じゃナヴァールはどうなるんだろう・・?と思ったけど、小国だからフランスに
吸収合併でいいのか。登場すぐに死んでしまって、あとはずっと亡霊でした。
しかし若い母だな・・。

オルトン(七生)
アンリの小姓。彼がなかなか役目が大きくて。私が脚本で唯一指摘したいのが、
アンリが改宗するとこ。「オルトンのために!!」ってマルゴもアンリも言うのだけど
「違うやろ!」と突っ込みたかった。そりゃ瀕死のオルトンを助けるのは人道的には
大変良いことだが、既に外では何万人ものプロテスタントが、ナヴァールの国民が
殺されてるのよ?彼らを助けるためとか、生き残りを国へ返すため、とかなら判るが、
たった一人の侍従を救うために君主があっさり改宗したって聞かされたら、
プロテスタントの人「ちょっと待てや!」と馬鹿馬鹿しくなってしまうわ~って
思いました。オルトンも「僕のためにアンリ様が改宗されて」とか言ってますが、
国民は2人しか居なかったんですか~?それなら納得ですが~?と言いたいです。
可愛い小姓でしたが、あまりの優遇振りに、実はアンリの弟(王族)かなんかで伏線か?
とか思ったほどです。


コリニー提督(松風)
この人、プロテスタントなんですね。最初の場面でフランスに居て、シャルル9世に
懐かれてるから、カトリックかと誤解してしまった。紛らわしい男(笑)
しかも、彼が対応を失敗するから、(自分も殺されたけど)、サンバルテルミの大虐殺が
起きてプロテスタントが大量に殺され、カトリーヌ母后の計画が壊され、
アンリは幽閉されてしまった。全くいいこと無し。あの対応はまずかったと、
見ていて私も思ったよ。シャルルは貴方の手中にあったのに、何であっさり手放す?
もうちっと頭使って欲しい、ラスボス風だったのに、あっさり退場が、哀しかった。
そういえば、1幕で主要人物のほとんどが死んでしまって、2幕どうするんだろ????
と真剣に思った。そしたら、2幕は怒涛の展開であっという間に終わり、登場人物が
大変少ないことに気付かずにいた・・。実際、少なかったよね。2幕。


こんな感じです。若手でやっていたと思いますが、とても美しくて良いお芝居でした。
脚本は素晴らしいけど、演出がもう少し華やかだったらなあ~と思います。

宙は次回大劇場もコスチューム者で、大変期待値が上がった。
今日のバウで健闘された人々に、大きな出番があることを祈っとこ。



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