新歌舞伎座「天童よしみ特別公演」

2012年3月6日　

新歌舞伎座「天童よしみ特別公演」
2012年3月6日(火)11時　新歌舞伎座　3階4列


雨も降るし、仕事は無いし、確定申告も終わったし、雪組公演はまだ先だし
なんかぽっかりと空いたので、近隣の劇場や映画館の演目を調べました。
映画はあまり食指をそそるものが無い。劇場は・・新歌舞伎座以外、演目入れ替え中。
ということで、新歌舞伎座へいってきました、。「天童よしみ　特別公演」です。

↑こんな消極的な理由で行ったにもかかわらず、大満足♪♪♪
芝居は脚本がよかったので、とても楽しめた。めっちゃ笑ったわ～♪
そしてショー。歌うまいっっっ！！！すごいいい声。感動的。
大阪だからか大阪弁でのMCが面白くて♪　MCの間、客席大爆笑。上手いわ～。

天童よしみさん、今年で歌手デビュー40周年だそうです。
素晴らしい声でした。「歌に力が有る！」「声の持つ力」というのは
今年最初の公演（『インフィニティ』）で感じたことですが、またしても実感。
艶の有る伸びやかな声、迫力ある響く声。そして正確な音程（当然のこと書くなって？）
ほろりと泣けて、考えさせられて、元気付けられて。華やかで楽しい公演でした。



天童よしみ特別公演
「夫婦善哉外伝　雨やどり恋歌／天童よしみオンステージ」


第1部お芝居「夫婦善哉外伝　雨やどり恋歌」（1･2幕）　作･演出：わかぎゑふ

あらすじは・・
大正12年の大阪が舞台。養父母亡き後女でひとつで妹を養う千代子（天童）。
昼はカフェの女給、夜は屋台のお姉さんと、働き続け。愛される守銭奴（笑）
しっかりもののアイデアマンで、近隣の人々から好かれ頼りにされている。
なのに妹（石原あつ美）は勝手に好きな人（金持ちの息子）と結婚を決めてきて
「お姉ちゃん、あたしのためにもぉそんな仕事せんといて！」と言い放つ。
生きがいと存在意義を無くし、がっくり来る千代子。
辛い思いを共感してくれるのは厄介ごとに巻き込まれやすい気のいい用心棒･良吉（赤井）。
いろいろあって（もう書ききれない＾＾;）
千代子のアイデアで会社を持ち直したことから千代子を絶賛するタオル会社社長の言葉に
「あたし、他人の役に立つ？」と自信を持ち直し、「自分のために生きる」ことに目覚め、
新しい一歩を踏み出すまでを描く。

まあ他にも、身売りする娘のエピソードや、東京ヤクザの進出への攻防など
大変優れたエピソードが綺麗に絡まっていて、伏線がしっかりあり、全部回収され
それはそれは素晴らしい筋立て。重要アイテム「傘」の使い方もよかった。
吉本新喜劇をより練り上げた感じ（時間が長いから）。秀逸な人情劇ですね。
・・・もうちょっと恋愛要素を濃くして、ロマンチック要素（キラキラ）を振りかけたら
宝塚でも充分出来るんじゃないか？と思ったくらいだ。（月か星が似合いそうだ）

「この子には私がいなけりゃ駄目」と妹命！で生きてきた千代子は、
結婚と言う重要問題に、妹が自分に一言も相談してくれなかったことが
大ショックだったし、誇りを持ってやっていた仕事を
「彼のお家は資産家だから、もうそんな仕事せんでええのよ」
といわれてさらに傷つく。・・・この辺り上手かったなあ。
一応は周囲に合わせ妹を祝福しつつ、傷ついた心を表現してた。台詞演出演技、いいねえ。
妹のほうも、（多分だけど）何かにつけ「あんたのためを思って」と頑張る姉が
うっとおしかったのもあると感じた。もちろん感謝はしているけど、姉に自分のために
生きて欲しかったのかな・・と思ったのだな。
危なくて体力的にも辛い夜の仕事(屋台)は辞めて欲しかったんだよ。
結局、姉を傷つけるしか出来なかったけど。もう少し妹の心を出す場面があればなあ。
あと妹がちょっと・・・可愛くなかった・・。私のイメージでは昔の純名里沙さん(古^^;）。
愛らしい容姿で誰からも可愛がられ、可愛くて我侭で他人への思いやりが足りない・・
と言う役。（純名さんがそうだといってるんじゃなく、コゼットのときのイメージ）
今回の石原あつ美さんは、可愛さと残酷さが不足した。ここだけ惜しかったわ。

赤井英和さんは朴訥な用心棒を演じていたせいか、ちょっと棒読みっぽく感じた。
でもいい男で、思いやりもあって、この後の千代子との幸せな展開を予想させた。
彼が居ることで、千代子にも「幸せな家庭」が予想されたところが大変大きな存在。

あと印象に残った大役が、タオル会社の社長さん（曽我廻家文童）。
最初から出てきて、要所要所にいいコト言いに出てくる。この人のお芝居上手い。
本当にいい味出してて。この人の存在で千代子が立ち直ったのが、納得できる。

そうそう重要な役が、カフェやら近在の店を所有する不動産屋の女社長（三林京子）。
そして東京から来たインテリヤクザ。この二人がいろいろと事件を起こしていく。
結局、カフェの土地を奪うためにやりすぎた東京ヤクザ一味は詐欺で逮捕され、
共犯のはずの女社長は「いやぁ騙されんでよかったわあ♪」とシレッとのたまう（笑）
このしたたかさ！すごい。しかしこの後、この女社長も女郎にしようと思ってた娘に
無期限でお金を貸してあげるし（お金をあげてしまわず「真面目に働いて返してや」と
いうところが、ツンデレでカッコいいのだ。大阪商人っぽいねえ）経営方針を社会的に
良いほうへ転換している。
カフェのマスターの気のよい（騙されやすい）老人と、隣の酒屋の面白夫婦。
裏の寄席の支配人（真っ当な大阪商人）と売れない芸人コンビ（賑やかし）。
いい味出してましたな。彼らは人情モノには無くてはならない存在だ。

主演の天童さんも相手役の赤井英和さんもネイティブ大阪弁なので、
大阪芝居の台詞がナチュラル。しかも昔の商家の大阪弁。上品な船場言葉風の。
東京ヤクザの役の人だけが大阪弁じゃない嫌味な東京弁（東京公演・・いいのか？）。
役者の台詞に全く違和感が無い。これは嬉しい。
イントネーションの変な大阪弁は本当に苦しいのだわ（大阪ネイティブだから：笑）

お芝居だけで２幕あり、上演時間は正味2時間。
長い時間ですが、ストーリーをきっちり描いてくれました。
今回は舞台転換の時間が短かったです（「女たちの忠臣蔵」が長すぎただけ？）
役者の間がよくて、本当によく笑いました。こういう明るい芝居、いいですね。

ちょっと逸れますが。すごく気に入った場面。
千代子が「うちはケチなんやない、始末してるだけなんや」と言い、
「始末するときは、上手いことサジ加減が大事なんや、それが情や」と締めた。
そして実例を挙げて説明したのが、3つの弁当から少しずつとって4つ目の弁当を作り
結果、4つの均質な弁当をつくり上げたこと。これは見事。
専門用語を使って解説すると以下の通り。
まず「ケチと始末」の違いは「ロスとコスト」の違いを意味する。
つまり、利益を獲得するために費消されるのがコスト、利益につながらないのがロス。
削減すべきはロスでありコストではない。ここを間違いロス・コスト分析をせずに
【一律コスト削減】なんてやると利益まで減少してしまうのだな。
大抵のケースで「コスト」は見えやすく、「ロス」は見えにくいから、
見えるところ（目に付くところ）から削減して失敗するケースが多い。
だから「まずは見える化が大事」というのが現在の流行。千代子さん偉いよ。
ついで、「情でサジ加減を」と言う部分は、まさに今話題のテーマ。
日本企業は大抵が過剰品質になっているので、過剰部分を削ることで原価削減となる。
しかし品質を下げすぎて、必要品質を落としてしまっては意味がない。
実際は高品質が高評価につながっている場合が多く、どこまで「過剰」にするかが問題。
そこのサジ加減＝最適化が難しい。それを「情」と表現。上手い。
これ、テキストに使いたいくらい分かりやすいわ（笑）
タオル会社の社長が「タオルを小さくして、せこい、と言われないよう工夫を」と願い
千代子が「刺繍をして差別化すればいい」とアドバイスする。それが大当たり。
千代子はいい経営コンサルタントだわ。スカウトしたいくらい。
以前、経済産業省の実証研究でやったテーマだよ、これ。
いや~ためになりました。分かりやすい。今度授業でこの事例を使ってみたい。



第2部ショー「天童よしみオンステージ」　構成・演出；長束利博

こちらは天童よしみさんと男性８人のダンサーによる歌謡ショー。
生演奏。楽団は人数が多いのに「天童よしみバンド」と紹介されていたので
お抱えのようだった。音はいいね、さすがにあの歌の伴奏を勤めるだけはある。
トランペットなんて素晴らしい！（全然音をカマさないし＾０＾ソロで聴かせた）

ダンサーが８人。全員男性で白燕尾にシルクハット・・動きもちょっとタカラヅカ？
なので服部良一メドレーを踊っているときは（天童さんお着替え中）
もう『ASIAN WINDS』を思い出して仕方なかった。８人だし曲アレだし。

あとのMCで天童さんが「皆さん、曲を聞いていろいろ想い出が蘇りましたか？」と
仰っていたが、ASIAN　WINDSを思い出していた人はどのくらい居ただろうか。
私が生であれらの曲を聴いたのはあの時限りなもので（＾＾；）

天童さんの歌声は冒頭に述べたとおり。本当に素晴らしかった。
ショーの衣装は全部ドレスだったけど、ウエスト部分に括れが無い。全く無い。
足は全く見えない。手すらほとんど見えない。頭部以外全身を覆う豪華な衣装だ。
お顔が大きく手足も長くないので、客席（３階端っこ）からはっきり顔が見える！！
後ろのダンサーたちは顔がはっきり見えなかったので、舞台人は顔が大きいほうが
良いと言うのを実感。歌を聴かせるのが最大の使命の方だと思うので、問題なし。
天童さんに全く踊りは無かったです。でもいいんです。歌だけ堪能できたら！
普段、歌に踊りに容姿に・・と３つもの美しさを欲張って堪能している私ですが、
今回は圧倒的な歌に、後の２つはどうでもよくなりました（大失礼かな＾＾；）

歌の中では「愛燦燦」と「心の花」がよかったです。
「心の花」は昨年５月に被災地に慰問に行かれたときの映像が流れ、歌詞が字幕で出て
やがて天童さんの生歌が重なって・・と、優れた演出でした。
苦しいときにあの歌を聴いたら元気が出る！と思える歌声であり、歌詞でした。
この歌、iTuneでダウンロードしたいと思ったもの。

ショーでは、ほとんど出ずっぱりで歌いっぱなし。
曲調も似たような感じのものばかり（ド演歌）なのですが、飽きない。退屈しない。
圧倒的な声の力ですね。紅白歌合戦で見て、上手いなあとは思ってましたが、
生で聞くとやっぱり迫力が違う。今日は行ってよかった。
（氷川きよし君が来たときは絶対に行かねば。男性では一番いい声だと思ってるから。）




今回、勢いでつい『新歌舞伎座10回回数券』を買ったので、映画程度の値段で見れた。
それでこんなに楽しめるとは！生演奏だし。なんてお得。面白かったわ。
（宝塚も回数券売ればいいのにね）

しかし、11時開演で終演は15時。30分休憩が2回の計4時間。拘束時間が長い・・。
まあ、客席は時間が余ってそうな方が大変多かったけど。（私もやん~）
でも前回の「忠臣蔵」よりは客層が若かった。結構埋まっている。

名古屋、博多と上演され、大阪が3箇所目らしい。「大阪で上演できて嬉しい」と
仰っていたが、お芝居の舞台になった町だもんね。ニュアンスが伝えやすいかな？
全部覚えてないけど、MCが上手くて上手くて。もう何度声を出して笑ったことか。
ファンも熱心で、「よしみちゃーん♪こっち３階よ~！」と元気にペンライトを
振っている集団も居た。楽しそうだ。私もやってみたい（もちろん宝塚でご贔屓様に）。
グッズも充実しているようで、「よしみちゃん鉛筆」や「よしみちゃん携帯ストラップ」は
購買意欲をそそった。もともと2頭身キャラにしやすそうな方なので、可愛い出来だ。
残念ながらファンクラブに入るとか、CDを買わないと貰えないらしく断念。

というわけで、今回4時間の長丁場でしたが、笑って笑って、声の力を感じて
楽しく過ごしました。やっぱり歌の上手い人が好きだわ＞私。
（もちろん歌は当然でダンスも上手くて芝居も上手くて綺麗な人が一番好きよ^^）

あっという間に、今週金曜はもう雪組初日ですね♪

コメント 2

わかぎゑふさんの脚本なんですね、さすがだぁ～！

私、ほかでも何かわかぎさんの脚本が「よくできてる」と思った経験があります。

タータンのファンで昔はよく客席でおみかけしたのに、
最近全然で残念だわ、わかぎさんが惚れるような人が出てきてほしいな♪

私は以前中村美津子さんを新歌舞伎座で見ました。

やっぱり芝居がうまいのに驚いた！もう泣きましたよ、ほんと。
そして歌も本当に上手でした。

終わってから出演者（ヅカOG）の楽屋で遊んでたら
美津子さんが差入れのお菓子を自ら配りにいらして

「あんたもたべてちょうだい」みたいなことをおっしゃって

たしかすごくおいしいシュークリームを頂いた記憶があります。

新歌舞伎座、恐るべしっ
by hanihani (2012-03-07 17:00) 

hanihaniさん　こんばんは

そうなんです、さすが「わかぎゑふ」さんという素晴らしい脚本でした。
タータンさんのファンだったんですか・・宝塚にもぜひ書いて欲しいです。
やっぱり、脚本は重要ですね。演技力も歌唱力ももちろんですが。

中村美津子さん、良いんですね！新歌舞伎座公演ラインナップに
入っていました。回数券もあるので(笑）絶対見にいきます。
人柄もよい方なんですね。教えていただきありがとうございます～♪

そして・・その美味しいシュークリームがどこのものかが気になる(笑）
以前の新歌舞伎座はナンバだったから、「りくろーおじさん」かな～？
前の新歌舞伎座の直ぐ前が本店なんですよね・・でも安いから違うかな。
チーズケーキが絶品の店ですが、他のも美味しいんです。
（リーズナブルなので庶民には嬉しい・・だから行列してるし～）
今の新歌舞伎座は、直ぐ裏がチョコの美味しい店♪
こっちは高価格な品揃えですが、ご参照に（？）

新歌舞伎座。ナンカいいですね♪

by えりあ (2012-03-07 22:20)