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映画「新少林寺」 [映画鑑賞]

2011年11月30日(水)
映画「新少林寺」
TOHOシネマズなんば 


「三銃士」を見に行ったときの予告が、とても印象深かった。
別にそんなに興味があったわけではないけど、あの予告が忘れられず、
なんとか暇が出来たので(水曜だし)、今日見てきました。


私の直感偉い!(笑)
とても良かった。本気で泣いた。こんなに考えて泣いたの、久しぶり。


1912年の中国大陸、清朝が倒れて列強が進出し、国中が揺れている時代。
激動の時代。(この時にちゃんと国を作っておけば、今・・と思ふ^^;)
そこで必死で生きる人々。何が正しくて何を信じてどう生きていけばいいのか?
価値観がひっくり返った時代には、どう行動すればいいのか。幸福とは?
・・いろいろ考えさせられた。

この時代を生き抜く「男」が中心なのだけど、この映画、イイ男しか出てこない。
(もちろんカッコイイのは容姿だけじゃない)
軍閥の将軍たちも、少林寺の僧たちも、みんないい男ばかりで、泣いた。


この後、ネタバレしてます。





「新少林寺」


映画として、大変効果的な映像処理がされていた。

冒頭、泥だらけの死体。死体は全部軍人。
清朝がひっくり返ったため、軍閥が割拠する大陸。
敵味方が日々変わるような。「殺さなければ殺される。だから殺す」という世界。
それが冒頭シーンで、端的に表現されていた。
そしてこの場面は、ラストシーンにつながる。
凄惨な場面なのに、シンと静謐。映像美を感じるほどのラストシーン。
素晴らしい構成だった。

物語上のラストシーンは、
洋装の軍人、坊主頭の僧服、入り乱れた「中国人の男」の死体の山。
冒頭とラストシーンで、シンとした戦場の場面が効果的に映し出され、
何のために戦うのか、戦うことの是非を訴えかける。
でも戦わないという選択はないのだ。
(両方を全滅させんと、後方から西洋人が大砲を撃ち込んできているから。
今こそ中国人が力を合わせて、外国に立ち向かうべきなのに・・と
言葉を使わずに強く語りかける素晴らしい場面が挟んであるのだ!)
そこが秀逸。
この映画は単純な反戦メッセージ映画では絶対に無い!(と、私は感じた)。
甘っちょろいメッセージなんて無かった。
「これを見て、自分の頭で考えろ!!」という骨太の芯を持った映画だった(と思う)。


もちろん懐かしの香港アクション映画でもなかった。雰囲気は味わえたけど
アクションも素晴らしかったけど(やっぱりあの少林寺の訓練風景は素晴らしい)
それ以上の「何か」を訴えかけてくる映画だった。

これは一人で見に行って大正解。不覚にも本気で涙が出てきて、困った・・

ではカッコイイ男達について。



主役は候将軍(アンディ・ラウ)「こう・けつ」の名前の漢字が変換できない~
妻と娘を愛していたんだなと思った。家族を、国を守るために戦ってたんだ。
その結果、信じていた部下に裏切られてすべてを失った。
従ってる下級兵士達は、上が誰でも「とにかく上官の命令に慕う」だけなんだ。
「将軍の人柄を慕って」とか「将軍と理想を同じくし」ではない。
だから少数の上官をナントカすれば、簡単に全軍を乗っ取れるんだ・・・凄い時代だ。

婚約式の夜から、娘を助けて逃げるところ、自分のミスのため、自分の腕の中で
娘を死なせてしまったやり場のない怒り。
どこへ怒りをぶつけていいのか分からず暴れまくる。
料理係に、頭を冷やせといわれて。・・・冷やす。冷静になるんだよ!凄いのよ。
そこから再出発。ここから、この候将軍が素晴らしく強い男だと思ったのだ。
将軍であった時代は、誰も心から信じてなかった(娘くらいかな、打算無く愛してたの)
だが、僧:浄覚になってからは、違う。(少林寺の方丈も懐が深い)
信念が揺るがないというか、性根が座ったというのか。最後まで曹を信じ救おうとした。
凄い。普通ここまで悟れない。本気で「強い男」だった。
生きて時代を作って欲しかった。(曹もラストシーンでそう感じたと思う)

最後の最後に「あなたは変わった。今のあなたが好き」と奥さんが言う。
奥さんも葛藤があったと思うけど、夫を理解し本気で愛していたんだなあと思った。
こんな時代だから(政府高官っぽいし)奥さんとも政略結婚か親が決めた感じだと思うが、
それでもこの夫婦にはちゃんと愛があって、理解したんだ。こんな時代でも。
まだ最初のほうの場面で、親子3人でいるときは、いいお父さんしてたものね。
妻も娘も、彼のことを愛している、と言うのが分かった。愛される夫であり父だったのよ。

しかし・・この一人娘の場面。うちの一人娘と同じ年頃なので、号泣してしまうわ。
娘が「お父さんの絵」を描いて持ってくるところから、「あ、これは遺品になる」と
思ってしまい(当たってたが)、もう涙が出てくる始末。ベタな展開なのに~
同じ年頃の子どもを持ってしまってからは、かなり涙腺がゆるくなっているな。
だから、宋将軍の妻子がどうなったかも、実は最後まで結構気になっていた・・
(宋将軍は殺されたし、男の子だし、妻子とも殺されただろうな)

あの場面。
最初は宋夫人も自分の息子と候夫人の娘とを一緒に守っていた。(候夫人が戦うから)
最後は、逃げるのに必死になり、自分の子の手を引いて逃げた・・
母親の方へ走っていった他家の娘は追えなかった。一瞬引っ張ろうと手が出たけど。
少しでも余裕があったら、息子と一緒に助けただろうに。助けたかっただろうに。
何がどうなっているか状況も分からない中で、自分の息子を助けるだけで、
いっぱいいっぱいになったんだろうな。・・そんなに涙腺刺激しないでよ!って思う。
たったそれだけの、主軸から外れる場面にまで細かい描写がしてあるんだ、この映画。
同じ場面。
候夫人は必死で戦う。娘を逃がすために戦う。自分が倒されて死ぬことを前提に、
少しでも遠くへ逃げろという。夫は娘を抱えて逃げるんだよね、自分が強くて守って
やれると思うからだ。その対応に違いにも泣けるんだわ、また(;><;)
・・ここら辺の場面を細かく見て泣いている客も多いと思うなあ(私だ^^;)

娘。最期にお母さんに会えてよかった。最後はお母さんの手を握ってられてよかった。
本当に優しく思いやりのある素直ないい子だった。
お母さん、ちゃんと愛情注いで育ててたんだろうなあ。
お父さんもあの子を凄く大事にしてたんだろうなあ。
短い人生だったけどあの時代の子どものなかでは、幸せだったと思う。
あの子はすぐに天国に行ったと思った。(もうこの場面はボロボロです:涙涙)
どうでもいいけど、娘の名前が「勝男」で、最初可愛い男の子かと思ったよ。
女の子に勇ましい名前付けるんだね・・・


準主役の曹蛮(ニコラス・ツェー)。
最初に候将軍の副将をしているときは、きちんと軍服を着て身だしなみも整っている。
だが、反逆して軍を乗っ取ってからは服装はだらしなく、髭は伸び放題、髪はザンバラ。
「曹将軍」になってからの彼の心理状態、かなり悪いと感じた。
信念を持って、何かをやりたくて、裏切ったからじゃないんだね。
なんで裏切ったのか? 「侯がおびえを見せたからだ」と言うけど、ピンと来ない。

曹はいわゆる売国奴。自国の文化遺産にも愛着はなく、人を使い捨てにする。
国の将来も憂えてないし、人民の幸せなんて無視。国を守ろうという気もなさそう。
妻子(直接守るべきもの)も無かった。
曹は何を想ってたんだろうか? 何がしたかったんだろうか?何を目指したのか?
これが最後までわからなかった。(何も目指してないのは分かったが)
何もかも破壊したくなったんだろうか、と思ったくらいだ。
上手く考えられなくて、思い通りにならなくて、気に入らない玩具をたたきつけるように。
最後は、行動すべてが侯将軍に対する意地になってたようにも思う。
裏切りの理由も。
自分が理想としていた侯将軍が、家族を守るために弱気な一面を見せたからか?
それを自分に対する裏切りだと感じたのか?
それほど、彼にとって侯将軍は大きな存在だったのか。
だから侯将軍も、殺されかけても命を張ってでも曹を覚醒させたかったのか。
・・・・と、いま書いていて思った。
二人の関係、深い、深すぎる。


ひとつ気になること。
曹の反乱が成功した最大の理由は、あの辮髪の軍隊のおかげだよね。
婚約式をする料亭に突入したのは、全員あの辮髪兵だったもの。
あの辮髪の精鋭部隊?は、曹の腹心の女真族(本当は知らんが非漢民族)の人の
直属の部下っぽかった。彼らはなぜ侯将軍ではなく、曹に従っていたのか?
曹のお家の部下なんだろうか?普通の軍人と衣装が違うし。ちょっと謎だった。
彼ら無しでは、あれほど簡単には侯将軍は孤立し、追い込まれないだろうと思うのだわ。
うーん、最後に曹が少林寺に突撃するときは正規兵ばかりで、辮髪兵はあの巨漢一人
だったしね・・・曹の雇ってた傭兵部隊?影の軍団?わからん(^^;)
曹は外見も名前も漢民族だよなあ。


主要人物ではないかもしれないけど、宋将軍について書く。
侯将軍とは義兄弟の契りを交わした人物。彼は曹にはとっては尊敬に値ししない人物。
侯将軍も反感を感じてはいても、義兄弟だからと表に出さないでいる。
が、娘を嫁によこせと言われて、宋を裏切る事を決意。
その決意と機会を、曹が更なる裏切りに使ったんだけど。
これって・・・曹にとっては、志や武力(=自分)より家族を取ったように
感じたんだろうか? だから裏切った?
結局、宋は自分の年齢と身体の故障を感じて、すべてを若い侯将軍に譲り、同時に
まだ幼い一人息子を彼の娘と結婚させ、自分と息子の将来を担保しようとしたんだよね。
敵と戦って排除するのではなく、取り込んで互いに共生しようとした。
宋将軍、守りに入ったね。それを侯将軍は見誤った。
侯将軍が、最後まで宋将軍を信じていれば、曹に裏切られることもなかったのに・・と
思ってしまった場面だ。宋将軍、やっぱり重要人物。


もう一方の主役、少林寺の御坊様たち。
方丈(師父)、浄能(師兄)、浄海、浄空。そして料理係の悟道(ジャッキー・チェン)。

少林寺の場面は、やっぱりあの訓練が素晴らしい、何であんなに凄い動きができるのか。
私もいつも習いに行きたくなる場面だ。(無理無理だけど)
名前に「浄」のつく御坊様たちそれぞれの場面があって、個性が描かれてて、
彼らの行動すべてから、「少林寺」であることの誇りや自負を見せてもらいました。
あんなお寺を焼くなんて・・中国人よ、それは超えてはならぬ一線だろう!と思う。
(個人的に、中国は文化大革命から後はイカンなあと思ってるが、この時代のこういう
お寺や僧侶たち、軍閥の将軍達の行動を見ていると、やっぱり中国人は凄いなあと思う)

おっと実際にお寺を焼いたのは白人でした。この映画の白人、超極悪に描かれてる(^^;)。
だけど実際そういう行動を取ってたようだし。。。彼らは自国の繁栄のためには他国を
犠牲にすることは全く厭わないんだよね。
異教徒だからか「犠牲にしてますが、何か?」な状態だもんね。
白人が作る映画なら有り得ない描写でちょっと「よし!」と思ってしまった(^^;)

久しぶりにジャッキー・チェンを見た。私の子ども時代に香港映画といえばこの人だった。
いろんな映画を見たわ~大抵は娯楽作品で、こんなシリアスなのは初めて見た。
あのジャッキーが「武道は全然できない」とか言ってて。でも実際には強いし(笑)
あの料理人、侯将軍が覚醒する切っ掛けを作ってくれた恩人だ。
すべてを失って頭に血が上り、気が狂ってもおかしくないほど自暴自棄になった軍人を
覚醒させたんだから、「迷いを抱えた普通の人」描写だったが、凄い人物だった。

どうでもいいことだが、今回字幕で見た。中国語は全然分からない。私の耳は
お寺の一番偉い人 方丈が <おしょー=和尚>に
弟子で一番偉い人 師兄が <ししょー=師匠>に
聞こえた。これって昔の日本人もそう聞こえたんだろうか?(笑)
全く不明の中国語だけど、耳が↑に聞き取ってくれたので、脳内で日本語になってた。
中国語で映画を見てみて、「あ~やっぱり英語はちょっとは分かるんだ」と実感(笑)


この作品、DVDになったら、こっそり一人で見たい。そういう映画だ。

ラストシーンに入っていた雪の少林寺、素晴らしく美しかった。


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コメント 2

いのっこ

おはようございます。えりあさ~ん!

やっぱり、「新少林寺」観に行かれたんですね。
えりあさんが観に行きたいと書かれていたので、
私も気にかかっていました。

それで、えりあさんの感想を読んで、
すご~く惹かれているところですが・・・
(この週末は月組さんの全国ツアーに行くもので)

来週は涙が出るほど忙しいので、今回はえりあさんのレポで
観に行ったつもりになっておきます。

で、月組さんの全ツ・・・
やっぱり、霧矢さんは歌がうまいですねぇ。
一緒に行った父が「声量が違うなぁ!」と感嘆しきり。
龍さんの大人の演技が今回の私のツボでした。

追伸
1月そちらへ行けそうです!・・・ルン☆


by いのっこ (2011-12-04 10:08) 

えりあ

いのっこさん

こんばんは。「少林寺」よかったですよ。いい男が多くて
これも宝塚でやったら?なんて妄想も(無理無理ですが^^;)

月全国ツアー観劇されたんですね!
私も見たかったのですが、梅田はチケット無かったです・・
余りご縁の無かった月(霧矢さん)ですが、最後は見に行きます。

1月はバウですか?(笑) 私も近辺に居ます、きっと♪
by えりあ (2011-12-04 21:38) 

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