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宝塚月組「暁のローマ」観劇感想 [観劇感想(宝塚)]

2006年5月20日(土)観劇感想 宝塚月組「暁のローマ/レビジューブリアン」
1階24列上手サブセンター

めちゃくちゃ辛口の、ネタばれです。
「暁のローマ」とっても面白い!と思ってる方、これから見る方は読まないでくださいね。
あと「キムシンの作品って大好きよ~」という方も、読まないことをお勧めします。




「暁のローマ」作/演出 木村信二
キムシンは私の好みに合いません。一番合わない演出家に決定です。

<脚本:ストーリー&目指したもの→解るけど、伝わらない>
ひとことで言って「薄っぺらい」。
一昔前に、ある巨匠が「暴君といわれる皇帝ネロを新しい視点で描いた」作品を作ったが、その新しい視点が「実は暴君でなく桁外れのマザコンだった」という人物像で終わっていたあの『皇帝』を思い出した。
おそらく「偉大なジュリアス・シーザーと暗殺者ブルータス」について新しい視点で描こうとしたのだろうけど、見当はずれもいいところ。観ていて怒りがわいてきたほど。
なぜカエサルがあのときに「独裁官」であり続けならなかったのか、時代背景がまったく描かれていない(分かってなかったのか?)。「ローマはみんなのもの」とブルータスは高らかに歌い上げるが、当時の元老院は600人以上の議員がいて(ローマの守備地域はヨーロッパのほぼ全域と西アジア、北アフリカという地中海周辺全域と広大だった)、それぞれ各階層・各地域(ローマは広大な地域を庇護していた)の利益を代弁するのだから、議論は百家鳴動状態。皆それぞれの立場・考えで議論をするのだから、どうやってまとめればよいというの???みんな自分が正しいと思っているのに。一人ひとり説得して回る?当然利益が対立する人々もたくさんいるわけで。片方に賛成すれば、片方は反対する。当たりまえ。だからそういう時代には、ある程度強制的な権力が必要となるのに。そうしないと国は前に進まない。ひとつのことを決めるのに長い長い時間がかかる。まだまだ外敵の多かったあの時代、そんな悠長な議論をやってたら、すぐに攻め込まれ、食料自給率の極端に低いローマは瓦解したであろう。あの時代のローマは、その限界が来ていた。・・・というのが時代背景(だと思う)
と、そういうことを一切描かず、「カエサルは王になりたいに違いない」「ローマはみんなのもの、民主制を取り戻すのだ」とはいかに!?今現在も制度上は民主制ですが?(「自分が王になれないなら誰も王にはしない」なんてご丁寧に本音まで入れてくれてさ。)
カエサルは王になりたくなんてなかった、というのはアントニウスの台詞ですが、実際に少し前には「三頭政治」を目指し実行し、どうしようもなくなって袋小路にいた民主制をポンペイウスたちと立て直している。ポンペイウスはカトーたち現実が見えていない理論家に担がれて、カエサルと対立してしまうのだけれど。
そう、カトー。ブルータスの妻ボルキアの父。この作品では、大変立派な人物に描かれ、権力を一手に握って独裁者=王になろうとする人物に立ち向かった理論家とされていますが、私はカトーは現実を知らない机上の理論家だと思っていました。制度が現実にあってないから、あちこちほころびがでているのに、それを無視して理想論だけいう頭でっかちの理論家・・・「頭はいいけど使えないやつ」だったのではと。カエサルの政策にかなりいつも異論を唱え邪魔したらしいけれど、カエサルは彼を暗殺しなかった・・・。(理想とのギャップに絶望して自殺したようですが。)
ついでに、最後にアントニウスとオクタヴィアヌスの漫才で、「ブルータスも民主化の先駆だという評価も最近あり」といってましたが、耳を疑っちまいましたよ。
だって、現実を見ずに理想に走った民主主義者なのはわかるけど、理想の実現に「暗殺」を選んでる時点で、それは「民主主義」から一番遠い「テロリスト」の先駆ではないのだろうか・・・? 民主主義者の選択が、自分の理想に邪魔な人物を暴力で排除することだとは、現代の観客へのメッセージとして間違っているのでないでしょうか。
 私のブルータスのイメージは、「レミゼ」にでてくる「アンジョルラス」なのですよね。(または明智光秀もちかいかな)。理想の燃え情熱があり、人望も知識もあるのだけれど、時代を見る目だけがなく、民衆と遠いところにいたゆえの悲劇の人物。彼は少ないけれど仲間と一緒に絶望的な戦いを戦い抜き、追い込まれて悲劇的な最後を迎える。なぜそう描いてくれなかったのかなあ。
今回は2トップ体制なのだから、同じローマなら、カエサルとポンペイウスをやってほしかった。ポンペイウスは自分では民主制が一番だとは思っていないけれど(現実を知ってるから)、でもローマは民主制なのがローマだからという理論家たちの意見にうなづいて形だけでもそれを取り戻そうと兵を挙げてカエサルと戦った。それ以前はカエサルの娘(すごい年下)を正妻に(仲も良かったらしい)するほど良好な関係にあったカエサルと、心ならずも考え方の違いから正面から戦うことに。―カエサル(瀬奈)、ポンペイウス(轟)でぴったりだと思うのに。
木村さん、脚本書く前にちゃんと資料調べしてないんじゃ?と思った作品だ。今後は原作あり作品にしてください。演出は舞台背景にセンスのある演出補を使ってね。
今回、面白かったのは、最初と最後の漫才だけだった。・・・でも正直、この漫才のせいで作品自体がシリアスかコメディか悩んだ。

<演出:大道具、衣装、音楽>
セットがずーーーーっと同じ。音楽も同じ調子の曲ばかり。「ジーザス」みたいにロック調のミュージカルを目指したのだろうけど、これも成功しているとは言いがたい。耳に残らないの(いや「カエサルは偉い!」だけは耳に残ってる:笑)。全部が同じ調子で。これはセットが単一という効果も大きい。(あとのショーを見て思ったけど、ショーのセットに予算取られて、こっちはお金なかったの? やっぱベルばらとファントムの谷間だから?)
とにかく単調で単調で、衣装もほとんど変わらないし。振り付けも背景の人々もずっと同じ。ぜんぜん使えてない。脚本だけでなく演出もいまいちです。私の好みに合いません。出演者のがんばりだけで見せる芝居は、ごひいきがいないとつらいです。

登場人物別に思いつくだけ。

<ユリウス・カエサル(轟)>
出番(場面?)が少なくて上に書いたような背景が全然分からないので、もやもやした。ブルータスとの関係も対して出てこなくて、「母が愛人やってる男なんて普通の息子なら反発するよね」ってレベルでしか描かれてないのが下世話すぎて悲しい。カエサルの偉大さが出てない脚本だったので無理もないけれど、あの轟さんでさえ偉大に見えなかったのでもうどうしようもない作品です。
轟さん、声がつらそうな時が多く・・やぱり年をとったのねえ、と思いました。お顔は相変わらずお美しいです。生前はいまひとつ偉大さが感じられなかったけれど、暗殺後(幽霊?)の迫力はさすがです。地の底から響くような声が怖い。

<ブルータス(瀬奈)>
ストーリー上の主役ブルータス、かっこよかったです。だけど役作りが(脚本がこれだと)とても大変だったでしょうね。カシウスとの友情が良かったです。歌安定しましたね。
なんだか全然似てないのに、真矢さん思い出しちゃった。

<カシウス(大空)>
今回一番おいしかったのはこの役では?と思わせるほどいい役、影の主役っぽい。ブルータスとのちょっと屈折した友情、操る若者たちとの関係、皮肉めいた口調の台詞。いいなあ。大空さんにあってました。すごくかっこよかった。

<アントニウス(霧矢)>
最初の漫才、びっくりしました・・・。アントニウスがナニワの芸人になってる!しかもかなり情けない人物として描かれていて、出番もなくて「えーー???」と思ってみていた。カエサル暗殺後に本領発揮ですね。あの説得力はさすがきりやん、とほっとしました。

<セルヴィーリア(嘉月)>
セルヴィーリアって本当はすごい才女で、あのカエサルの第一の愛人ってことで尊敬されていた人だったような。だから息子が馬鹿したあとでも生活は保障されていて、それなりに余生を全うしたはず。ちょっと現代の「愛人」ぽく作られすぎていたところが嫌だったけど、えりたんの存在感はすごいと思う。

<ボルキア(彩乃)>
何を訴えに出てきたの?っていう存在感の薄さ。歌はすばらしく存在感のある美しい声なのですが。出てきたら嫁姑の確執とか、ファザコンとか、な場面。最後はブルータスを支えるでも罵るでもなく、現実に耐えられずにあっけなく死んでしまうしねえ。これがトップ娘の役だとは・・やっぱりカエサル&ポンペイウス編で、ポンペイウスの愛妻でカエサルの一人娘ユリアをやって欲しかったですわ。

<クレオパトラ(城咲)>
クレオパトラもカエサルの理想に魅かれたスケールの大きな女性だと思っている。なんだかなあ。
カエサル暗殺後のアントニウスとの会話だけが、クレオパトラらしかった。
子供の名前(カエサリオン)が出てこなくて残念。カエサルはこの名にどう反応したかな?

<オクタヴィアヌス(北翔)>
アントニウスの漫才の相方。相方に比べて修行が足りない漫才師(笑)。カエサル暗殺時点では、ほとんど歴史に出てこないので仕方ないけど、出番なし。と思いきや、暗殺後に一場面もらってましたね。しかもこのあとのオクタヴィアヌスの将来(とローマの未来)を暗示する場面で、とっても良かった。

ショー「レ・ビジューブリアン」
きらきらした宝石らしい、きれいなショーでした。セットがきれいだった。
覚えているのは、泥棒の場面とラヴィアンローズの生きてる背負い羽(笑)これ面白かった!
実は今でもタイトルの意味が分からない。ショーは可もなく不可もないという感じでした。
ローマがある意味強烈過ぎて、感想忘れてしまった(詫)


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