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宝塚花組「銀ちゃんの恋」DC [観劇感想(宝塚)]

宝塚花組「銀ちゃんの恋」~銀ちゃん、本日も反省の色なし~
2021年9月7日(火)16:30 ドラマシティ 2列
2021年9月10日(金)13時 ライブ配信

「銀ちゃんの恋」は3度目にして初めての観劇。映像ですら見たことが無かったという縁のない作品でした。最近気になる花組、幸運にもチケットが手に入ったので見に行きました。

面白い!すごく感動した。もともとのストーリーや演出が良いのもあると思う。けど、主要キャストが凄く良かった。複雑な心理劇でもあるこの作品のメイン3人。物語上の主役な動きをするヤス、揺れる複雑な女心を表現する小夏、そしてクズ男なのに憎めない、いえ愛してしまうキラキラのスター銀ちゃん。すごくすごくお芝居が良かった。最後はハラハラして泣きそうな気分に。ほんと見てよかった。素晴らしかったわ。

202109花銀ちゃん.jpg

プレイ
『銀ちゃんの恋』~銀ちゃん、本日も反省の色なし~
-つかこうへい作「蒲田行進曲」より-
原作/つか こうへい
潤色・演出/石田 昌也   


つかこうへい原作「鎌田行進曲」も観たことは無いのですが、さすが人間心理が良くできていると思った。わがまま自分勝手で魅力的なクズ男、裏切られ捨てられてもそんな男に惚れ続ける美女、魅力的なクズ男に惚れきって心身ともに尽くし続ける愚直なまでに忠義な男。その3人が織りなす、一言では言えないそれぞれの複雑な感情の交錯がもたらす物語。自信満々なキラキラが魅力の素直な男の弱さと愛情、そんな男に惚れぬいた女が本気で愛した男、キラキラ男を守り抜くことが使命と心得た男の、愚かで真摯な漢らしさ。それぞれの2面性がきっちり表現されている。脚本演出も素晴らしいけど、役者の力量も素晴らしい。ヤス役の飛龍さんの実力は知っていたけど、銀ちゃん役の水美さんと、小夏役の星空さんのすばらしさには驚いた。こんなにお芝居できる人だったのね!
一場面一場面が持つ意味が多い。ちょっとした台詞や動きの中に込められた意味が大きい。すごい芝居やね。それを演じきった3人が素晴らしい。水美さんも星空さんも飛龍さんも歌が上手いわ。水美さん本当に上手くなって。

あと、「昭和の時代劇」と思って見ないと価値観が現代と合わないこともわかった。昭和は遠く「昔(時代劇の範疇)」になったのだなと実感。あの時代の空気を醸し出していて、レトロで心地よい舞台だった。



倉丘銀四郎(銀ちゃん)/水美 舞斗
主役。彼が「キラキラしていて誰をも魅了するスター銀ちゃん」でなければ話が成立しない。銀ちゃんがクズだけど魅力的で誠実さすら感じさせられる男じゃなければ、小夏は色男に騙されたままのバカだし、ヤスは頭が弱い子にしか見えない。二人ともさっさと見切ればいいのに・・と客に思わせてしまったら終わり。銀ちゃんを憎めない、愛すべき男に見せた水美さんのお芝居が成功していた。銀ちゃんがとても魅力的で素敵な男だった。美女も男も惚れる男だった。こんなに真ん中スターが似合う男役になってらしたんですね。ダンス場面が無くても、ちょっとした身のこなしが粋でかっこいい。殺陣が絶品、すごいスピード。顔も綺麗で、スタイル良し。あのギラギラの変な衣装も着こなせる。
小夏のことは好きだったのは間違いない、でも自分は今は朋子が好きになったから、子供もできたことだし小夏はヤスに任せようって。どういう思考回路か謎。しかも小夏もヤスもその考えを受け入れるとか、さらに謎。なんか洗脳された?場面もあり。昭和のスター及び周辺の人はこんな思考が普通だったのだろうか??? それほどまでに、「倉岡銀四郎」とは守る必要のあるスターなのか?ということだ。昭和の昔、二枚目スターに恋人やましてや妻子がいたら人気がなくなる!というのは見ていたから知ってる。そこは納得だ。だから銀ちゃんが、二人が身を犠牲にして「守らなければならない」スターじゃないと終わる話。小夏が秘密結婚に持ち込んでもいいし、ヤスが週刊誌に暴露して、自分を売り込んでもいい。でも二人はそれをせずに、銀ちゃんを守る方に動く。「銀ちゃんを守る」が二人の共通使命で、二人とも誠実だったので惹かれあう。銀ちゃんは朋子と付き合い、ようやく小夏の良さを思い出し、元のさやに・・と思ったときには手遅れだった。(小夏も筋の通った女だ。だから銀ちゃんが本気で惚れる。)小夏の本気を知ってからは、ちゃんと身を引く。
ヤスが自分のために階段落ちをする、と聞いた時の銀ちゃんの顔。ヤスのことも、罵ってわがまま三昧だけど本気で大事に思っていたのだなと。小夏とヤスへのこの態度がなかったら、銀ちゃんは軽蔑すべき男決定だった。銀ちゃんは一つ大人になったなと思った次第。
というわけで、水美さんの銀ちゃんを見て、初めて水美さんの芝居が良い!と思った役だった(ごめんなさい~ショーでは素敵と思う場面が多いけれど、芝居はなあ・・と思ってた)。認識を改めました。ラストの電飾スーツには驚愕。初めてあんな「キラキラ」衣装を見たような気がする。あれを着こなせるとは。これが似合うのがスターの証だ!って衣装でした。。


水原小夏 /星空 美咲
もうだいぶ書きましたが、まだ若いけど当時としてはトウが経つ年齢(30前かな)で、若い女優としてのピークは過ぎた。将来のことも考えていたと思う(当時は「女の幸せは結婚、絶対に結婚して家庭を持つことが女の最大の勝利」という時代だから。)そんな時に、恋人の銀ちゃんの子供ができ、では結婚・・!とはいかず、なんと配下の大部屋俳優へ下げ渡されてしまう。ここで大声で騒いで銀ちゃんに殴りかかっても誰も止めないと思う状況だ。
結局、銀ちゃんの理屈を受け入れ、当たり散らしたヤスの誠実さ優しさ、器の大きさ(愚直さ?)にほだされていくうちに、ヤスに本気で惚れていく。ヤスの故郷へいき「嫁」として大切にされる様子に、「結婚して子供を産むことが幸せ」という価値観に沿えば、浮気ばかのわがままな子供・銀ちゃんより、誠実なヤスのほうが良き夫・父親になることに、本能で気づいたのでは?。結局、銀ちゃんのプロポーズを断りヤスを選ぶ。
ラストシーンが気になったけど、ヤスは死んでなくて、無事役目をはたして生還(監督はなんて映画を撮るんだよ!銀ちゃんの電飾スーツに涙も引っ込んだ)。その後、親子3人で幸せになったと思う。ヤスは映画馬鹿だし(でも大卒だし)、映画会社の製作のほうに入ったらいいのに~と思ったわ。そうしたら本気で小夏の勝利ですね。
可愛くて、でも元・人気女優の印象と、一途な女と、大人の女と、可愛い女と、いろいろな表情を見せてくれた。この学年(研3)でこの役をこなすとは、将来が楽しみな素敵な娘役さんですね。
しかし愛希れいかさんによく似てる・・。だから貫禄を感じたのかもしれない。いや星空さん堂々としていていい女優だよ。

平岡安次(ヤス)/飛龍 つかさ
心底の映画馬鹿。銀ちゃんへの憧憬と尊敬が素晴らしい。ここまでほれ込めるとは。小夏も銀ちゃんのことをよく分かっていたけれど、ヤスもよく理解していると思う。
一途で誠実で可愛いヤス。いい男だわ。この作品、物語上の主役はヤスだと思う。ヤスの性格・行動が物語に深みを与え、感動の物語へと動かしている。ヤスがヤスじゃなかったら、小夏はスターに捨てられたシングルマザーで、銀ちゃんはスターだけど、最低のクズ男で終わった。
ヤス、九州は熊本の田舎(人吉の方ごめんなさい)から京都?の大学を出てるんだよねえ。実はインテリやん。だから映画会社のほうに入ってもやっていけると思ったり。故郷の盆踊り大会でスーツ着てちゃんとしてたら、すごくかっこいいもの。村長いや市長くらい行けそう?もともと実家もそんな貧乏ではないし(母の着物の質や言動が貧乏じゃない。都会の大学へ通わせ、その後役者とか好きにやらせている余裕!)、同じく大卒(青学なのね)の元・人気女優の嫁がいたら、市長選くらい軽いわ。銀ちゃんが「お前市長とかやれば」とか言ったら、本気でやりそうだ。
飛龍さん、芝居が上手い。本当に上手い。実はかっこいいのに、「こんな顔が見たいですか?」なんてセリフが腑に落ちる雰囲気を出している。凄い役者さんだ。真ん中スターの輝きではなくても、真ん中を光らせる、舞台のクオリティを上げる不可欠な役者さんだ。

<役者>
橘 /帆純 まひろ
銀ちゃんのライバル的俳優。坂本龍馬役で、だんだん主役っぽく出番が増えていき、銀ちゃんの機嫌を悪化させる人。本人もライバル視して煽っている。芝居はやっぱり銀ちゃんのほうが上手いわね(笑)。しかし、銀ちゃんも橘さんも、どっちも美形度高いわねえ。(橘さんの下の名前が出てこない!?)
東京で売り出ししようと思ってるようだし、なかなか野心家。でも実際は、映画に想いのある熱い男であり、やっぱり悪人が一人もいない作品だ。

トメ/峰果 とわ
ヤスの同僚?仲間的な位置の家庭持ちの大部屋俳優。ヤスと同じ勤王の浪士役。ヤスに対しての言葉が、本当にいい人。大部屋ながら安定した仕事があって、家庭もそれなりに幸せで、なんだか上手く生きているような気がする。銀ちゃんともヤスよりは距離を感じる。取り巻きの中では一番大人の男を感じた。峰果さん、いい味出されるんですね~初めて知りました。

ジミー/侑輝 大弥
銀ちゃんの取り巻きの大部屋俳優・・かな?沖田総司役を貰っているので、目立っている。顔が綺麗だ。君はすぐに大部屋を出るに違いない!って感じ。

マコト/翼 杏寿
銀ちゃんの取り巻きの大部屋俳優。髪形が坊ちゃんだけど可愛いタイプ。ジミーもそうだし、銀ちゃんの好みなのか。ヤスとトメは渋いタイプで、ジミーとマコトは可愛いタイプか。

<映画会社>
監督/悠真 倫
地味に「映画馬鹿」を体現している人。出番もセリフも少ないけど、それがわかる。だが実際に「階段落ち」で事前に危険が分かってて役者を死なせたりケガさせたりしたら、現代なら大問題で映画もお蔵入りになりそう。当時しか出来ない映画よね。
ちなみに、二役の田舎の町内会長さん、ええ味でしたなあ。誰かわからなかったわ。

助監督/希波 らいと
背が高くて目だつイケメン助監督。俳優になった方がいいのではというと思わせる。でも助監督らしく、監督に八つ当たりされ、役者に翻弄され、哀れな場面がいっぱい(笑)。でも彼も映画人の一人として、真剣に取り組んでいる様子が素敵だった。

カメラマン/紅羽 真希
カメラマンが撮った映像が舞台上のスクリーン(2つ)に映っていて、楽しかった。カメラマン一人じゃないと思うけど、なんかやっつけな仕事(笑)。カメラの前に主役を差し置いてモブが立っていたら、避けなさいよ~って。

専務/航琉 ひびき&秘書/美風 舞良
とっても歌の上手いの専務&秘書。会社のほうも大変なのね。役者も監督も「いい映画を作りたい」だけで動いているけど、専務(や秘書)は、「いい映画はいいが、何より稼げる映画を撮って売る」をしなければならないもの。お金がないと、いい映画も作れないし、専務も頑張っている。登場人物みんな「映画が好き」というのが伝わってきましたわ。専務のそれを知っているから、秘書はお金に冷徹でしたね。
秘書企画の和風「グランドホテル」見てみたい気がする(笑)

<その他>
朋子/都姫 ここ
銀ちゃんの新しい恋人。現代っ子の若いお嬢様。お金持ちのお嬢さんっぽい。おバカに見えるけど、実はちゃんと計算している賢いお嬢さんに見える。「可愛い若い女」らしくしているのかな。銀ちゃんとは似合わない感じで、あの銀ちゃんがかなり気を使っているし、可愛いだけじゃなく、権力あるお金持ちのお嬢さんなんだろう。

ヤスの母/京 三紗
九州の田舎の善良なお母さん。田舎の母の割に品があって綺麗だ。彼女を見て、小夏はヤスに惹かれていく引力の一つになった。息子のことをよく理解しているし、嫁に寄り添い気遣いできる(釘もさす)息子思いの頭が良い母です。すごい芝居上手い、さすが京さん。専科のお母さまたちの中では一番芝居が上手いと思う。好きだわ~

玉美 糸月 雪羽
ヤスの故郷の幼馴染で、ヤス兄の婚約者?かな(安次だから、次男ね)。なんか吉本新喜劇風の出で立ち。娘役さんにしては体当たりの役ですね、すごいインパクト。

保険屋/龍季 澪
ヤスが「階段落ち」を覚悟して掛けた保険の説明に来た保険屋さん。奥さんにハンコ貰いに来ただけなのに、ひどい目に遭わされた。一場面だけど印象的な役作りされてました。

スポンサー/舞月 なぎさ
結構酷い傍若無人な振る舞いで、映画人を全員的に回していて見事。札束で俳優スタッフの頬を張り飛ばして、クライマックスに向けて役者スタッフの気持ちを1つにする役目。見事な嫌味君でした。これが専務の仕込みなら専務頭脳派やね(笑)


余りに良い席で観劇したので、詳細が見えなかった。
そこで、本日ライブ配信を見て記憶を補完して書きました。水美さんがこんなにお芝居できるなんて、大感激でした!配信でも良かったわ~!



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