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新歌舞伎座「ジェイミー」初日 [観劇感想(その他)]

新歌舞伎座「ジェイミー」初日
2021年9月4日(土)17時 1階16列


新歌舞伎座でやるというので、見に行きました。
いろいろ考えることが多く、なかなか身につまされる場面もありました。
現代イギリスのリアルなのだろうけど、大変ポリコレを感じました。こりゃ大変だ。

演出家の指示だと思うけれど、セリフが単調な超早口で(今どきの若い子のリアルかもしれない)学生同士の会話の半分くらいが聞き取れなかった・・・大人の会話(大人同士・大人と子供)は聞き取れたので、単に私が若くないという事実を痛感した。もうバアサンなのね。

安蘭さん(→目当てに行った)、いいお母さんだ。いい役者ですね。身につまされたよ。
あとはドラァグス(女装ゲイの皆様)がみんな超いい男声!あの容姿であの声!最高だ。ママも学生も先生もみんな素晴らしい声で堪能できました。


202109ジェイミー2up.jpg


以下は私の勝手な解釈で書いてますので、深く突っ込まないででくださいね。




ミュージカル
「JAMIE」

音楽:ダン・ギレスピー・セルズ
作:トム・マックレー
日本版演出・振付:ジェフリー・ペイジ
翻訳・訳詞:福田響志

最初、アメリカの学校の話かと思っていたらイギリスだった。ジェイミーの誕生日から始まるのだけれど、16歳というのが信じられなくて、18歳だと勝手に思っていた(あとから調べてイギリスの義務教育終了が16歳で、これが日本の高校卒業に近いイメージだと納得)。イギリスの子、成長が早いねえ・・・。日本の16歳はまだまだ子供なので、脳内では18歳に変換してみていました。

ドラァグの方々。この単語、一般化していますね?LGBTの運動から始まり、ものすごい普及度。そんなに一般化しているのか、社会的地位を獲得しているのかと驚く。日本にも上陸しているのかな? まあ日本には歌舞伎も宝塚歌劇もあるから、出雲阿国な歴史的に女装男子や男装女子にそれほど違和感もない気がする。そんな大騒ぎせずに、他人に迷惑かけない限り好きにしたらいいやん?って感じ。
今回のドラァグの4名様、大変な美声で感動しました。衣装的にはあまりお似合いとは言えない(そりゃ本職のドラァグじゃあないし)男性的な容姿でしたが、めいっぱい楽しんでいる様子がとても素敵でした。
私の中の「女装男子」は、タイのニューハーフ(女性より女性らしく繊細で美しい)なイメージがあるので、体格的に男女差の大きな白人や黒人の人は大変ですね。黄色人種とくにアジアの東と東南のほうは男女の体格差が小さくて、異装が似合うのよね。ちなみに「男装女子」は当然宝塚歌劇の男役ですわ。現実にはあり得ないほどの男らしくかっこよく美しい男ですもん。男性を連れていくと、男役の男らしいかっこよさに嵌るのもこのためだと思われる(笑)

人種の話が出たので。やっぱりイスラム系が普通に学校の教室にいるのですね。スカーフで髪を隠した女子が2名いた。うち1名がヒロイン!そういう時代なんだ。ただイスラム女子の普通の服装は、大変地味なので(そういう趣旨だから)舞台では大変かな。イスラム女子は、夫には髪も肌も見せまくるけど、夫以外には絶対に見せないという趣旨なのですよね。髪が他人に見せてはいけない魅力ポイントなのか・・若いころは髪形アレンジやアクセサリーでいろいろ工夫するのが楽しかったので、おしゃれの幅が狭まって大変ねと思ってしまう。逆に白人は肌の露出が多すぎだと思う。そこまで見せなくても・・と思うことがよくある。よくこの両者が同じ場所で生活できるなあと感心した。本当は「多様性を受け入れる」がテーマだと思うのだけれど、「そこそこ」が大切なのでは?と思ってしまった。

とにかく、舞台1つ作るにも「ポリティカル・コレクトネス(political correctness)」に配慮しなければならないのかと思った次第。差別是正というけど、別にそこに差別意識ないよ?って単語にまで噛みついてくるのが怖いところ(アメリカ&白人国家は面倒なのね~と思う)。少数派の意見が大声になりすぎでは?と危惧することも。個人的にはLGBTへ配慮するのも良いが、それなら全世界に1割いるという左利きにも配慮しては?と思うのだった。矯正する必要なしを常識にすべし。

主人公のジェイミーは、真正面からこの差別と闘っている。個人で好きにすればいいやん?わざわざ波風立てなくても・・と思うのは私が事なかれ主義な大人の日本人だからでしょうかね。プロム(卒業パーティ)という公式の場ではルールに合わせ、自分の希望を通せる場(ここではドラァグのお店)で好きに楽しめばいいのに~と思ってしまう。「絶対にどんな場面でもドレスを着るな!」と言われたら戦えばいい。でも、違うよね。公式のルールを守ってねと言われているだけではないかと。例えば、ランボーみたいな戦士になりたい!と戦闘服で参加する学生がいたら、先生はやっぱり止めると思う。消防士になりたい警官になりたい、お嫁さんになりたいからウエディングドレス!となったら、どこのコスプレパーティだよ?ってなり、それは卒業パーティじゃなくなるのではないかと。ドラァグクイーンを目指す夢そのものは誰にも(現実主義の教師以外)否定されてないし、応援されている。じゃあ目指せばいい、ちゃんと卒業してから。
ジェイミーがドラァグクイーンを目指すのも大変なのはわかる。「職業」として理解されない少数派だもん。そこは頑張れ!と思う。一番身近な母親が味方だし、ヒューゴとかその道の先達も味方に付いてくれている。心強い。一人で悩まなくていい。
彼らが戦うのは、「女優を目指す」と「ドラァグクイーンを目指す」が同じレベルに扱われることだと思う。教師は否定するよ、どっちも。でも同じ「現実を見なさい!」のレベルだからそこに差別はない。それが彼らが目指す公平な社会なのでは無いかと思ったのだった。えっと、ジェイミーが性同一障害で、中身が完全に女子であれば話は変わる。制服も女子のを着ていいし、パーティはドレスでいい。完全女子生徒扱いすべき事案。だけど彼は「ドレスが好きな男の子」と自ら発言していて、性の自認は男子ではないかと思うのだけど。違うのかな? 
だから私の理解では、ジェイミーが「プロムでドレスを着る」のは、わがままだと思ったのだ。みんなドレスやスーツ以外に着たい服があるかもしれない。だけどルールに従っている。学校行事なのならルールは守るべきであり、ルールがおかしいというなら、ルールを改正すするために動くべきだろう。「プロムには好きな服装で」というルールなら、ジェイミーがドレスを着ても何の問題もない。みんながルールを守っている中、一人LGBT配慮でわがままを通せと主張しているようにみえ、ここには共感できなかった。(ラストシーンでは、ドラァグクイーンのドレスではなく、ドレッシーなパンツスーツだったので、ジェイミーはこの点を多少は理解していたような気もする。ま、先生からしたらOUT!だったので揉めたけどね。)

だから、ドラァグのお店でステージに立つから、みんなに見に来て!と言い、実際にちゃんとステージを務め(場面はなかった)、みんなに納得させた場面は素晴らしいと思う(なぜこの重要場面が無いのだ)。ここはジェイミー(&ドラァグの皆様)の頑張りで、彼らが戦いに勝利した場面だと思う。ウエストエンドで興行されている舞台と同じように、ドラァグの舞台が認められればいい。決して際物ではない。そのためにドラァグみんなで頑張るべし!(男だけで演じる歌舞伎は、誰も際物なんて思わないし、見に行く方は高尚な趣味と思われますもん。文化よ芸術よ。ドラァグも100年も頑張ったら芸術文化になるよきっと。)

と、私にとっては大変いろいろ考えさせられる舞台であった。
だがまだ考える点はある。最重要点だ。

母と息子(と父)の関係。これは身につまされた。
息子の趣味がどうでも、何を目指しても、ただ認めて応援する母。これ本当に難しい。価値観の違う子供への対応としてはマーガレットは満点だよね。普通、自分の価値観の中で幸せになってほしいと思ってしまうから、理解のない親と言われ子供に嫌われる。素直に応援できる母は尊敬に値する。さらには。「そんなだからパパに捨てられるんだ!」という衝撃の台詞を吐いた息子をそのまま受け入れ、謝れるなんて、人格が素晴らしすぎる。あのどうしようもない父の実情を知らせたくなかった気持ちもわかるし、そのために気を使ってきた息子にそんな台詞を投げつけられたら、「もう知らん。好きにしろ」って見捨ててるのもありじゃないかと思うし、少なくともしばらくは許せないような気がする(私は薄情な母だなあと反省する。ごめんうちの子)
だからこの場面、この後どう対応するのか、真剣に見ていた。・・母の態度が衝撃的だった。理想の母だ!素晴らしすぎる、「良い子が育つ魔法の言葉」とか育児書に書いてある通りの対応ができている!!(もしかしたらマーガレットが普通で、私が最低すぎる親なのかもしれないと、またまた反省)
どうしたらマーガレットのように子供に対応できるのか。頭でわかっていても、とっさに言葉も態度も出てこない。愛が足りないのか、人格がまずいのか・・と観劇後に考えている(今ここ)。
父の考えは分かりやすい。彼の価値観からすれば、女装男子は許せないのだ。だからそれを受け入れる母親ごと排除した。そして彼の価値観にあう家庭を新たに手に入れた。だからジェイミーは彼にとって不要なんですね。はっきりと愛が無かった。この父も冷たすぎて一般的ではない、と思いたいけど、そうじゃないのかな。この作品の「敵(の象徴)」みたいな存在だから。
学生たちのは差別というより、いじめで、「何か違っている点」を持っている子を虐めているように見える。このクラスにはたまたまジェイミーがいたから目立って虐められているけど、彼がいないなら別の理由で誰かほかの子が同じ目にあうような雰囲気。だから最後は和解できた。でもジェイミー父は違う。女装男子なら、どこにいてもどんな立場でも否定し差別する。ジェイミーが戦うべきは、父(に象徴される人々)なのですね。

配役的には、あんなに女装男子を否定し嫌った父が、違う場面で別人として女装して楽しそうに歌っていたので、あんた実は・・って楽しかった。


私が見た回の配役で書きます。(★がWキャスト)


ジェイミー・ニュー:森崎ウィン★
16歳になったばかりのゲイの男の子。ドレスが好きで、女装男子の頂点「ドラァグクイーン」を目指すという。それを親にも友達にも明言しているところが力強い。もともと明るい性格のようだし、こういう立場の割には悩みや孤立感は少ないと思う。
明るく素直で、ヒューゴたちドラァグの大人たちが彼に肩入れするのが理解できる。ほんといい子だ。プリティも惚れるよね(ゲイの親友として、好きと言えないプリティのほうが可哀そうだ)。
彼なりにいろいろ真っ向から戦っている。まだ若いからなんですが、この後もまっすぐしっかり、真の敵を見定めて戦って勝利していく子だと思う。彼のドラァグ「ミミ・ミー」とうまく付き合っていける子だ。プロムの時に、(一応)ジェイミーとミミ・ミーを分けて考えられたから。将来が楽しみよ。
歌も素晴らしく上手かった。16歳はともかく、高校生に見えます。

マーガレット・ニュー:安蘭けい
ジェイミーの母。夫と離婚して息子を育てている。彼女の親友レイが「家族よ!」って言って学校にまで一緒にいっているから、そういう関係?と思ったけど、普通の熱い親友だと分かった。
夫は息子を受け入れなかった。だけど彼女は受け入れた。だから離婚した・・のかな?息子にそれを知らせたくないから、おそらく離婚の理由はほかの息子に関係のない理由を告げたと思う。そこから彼女の「理解ある父親」作りが始まったと思う。後に引けなかったのでしょうね。本当はジェイミーがちゃんと大人になって、父の価値観を受け入れられるようになってから話そうと思っていたと思う。それがやりすぎてばれてしまい。どうしたらいいかと思ったでしょうね。それにあの言葉。許せなくても仕方ないと思うほどだわ。咄嗟に「誰のせいよ!」って言ってしまうかも。「あなたのためにやったのよ」って。それを一言も言わず、息子に誤り、自然にすべてを受け入れる姿は感動的でした。理想の母親ここにあり。ジェイミーがいい子なわけだ。今回の安蘭さんの母親に、私は打ちのめされました・・・。すごい女優です。


プリティ:山口乃々華★
イスラム系女子、医者を目指す優等生。成績優秀で、ジェイミーの親友。よき理解者としてアドバイスしたり、支えたり、慰めたりと大活躍。わりと良いおうちの子に見えたから、いくらゲイでも男の子を夜部屋に入れたらまずいのでは・・?と心配した。ジェイミーもそこは気を使ってあげてよと思う。結構無意識にプリティに頼ってるよね。プリティは健気で、性格がとても可愛い女の子している。ゲイの親友だから、理解者として親しくしているから、だからジェイミーが好きでも言えないよね。その乙女心がとっても切なかった。ハーレクインロマンスとかだと、この二人は異色の幸せカップルになるような未来が予想できる(笑)
歌は絶品。衣装が地味で(仕方ないけど)ちょっと残念。


ディーン・パクストン:佐藤流司★
イケメン男子、ジェイミーが嫌いで突っかかる。本当に正統派イケメンという雰囲気。クラスのリーダー、スクールカーストの上層部にいますよね。学校ではジェイミーの敵として存在しているけど、なんだか「夢に向かって、誰が何と言おうと正々堂々努力している奴が眩しくて虐めた」みたいに感じた。彼の夢は何だったのかな?
なんだか好きな子を構って虐めるようなタイプだから、彼もジェイミーに好感を持っていたのは確かで、意地悪しても笑顔で手を差し伸べてくるジェイミーに負けを認めた感じで素直になった・・というのがラストシーンかと。
学生の中では目立つイケメンで、イライラした若者らしい雰囲気出してましたね。

ベックス:鈴木瑛美子  
ベッカ:山村菜海 ☆
人気のある女子、スクールカースト上級だね。ベックスはくるくる金髪の子かな。ディーンとともに女子の中で一番目立っていた。二人ともジェイミーには悪意はなくて、ディーンにつられて意地悪した感じかな? 実際にドレスやメイクの話をしたら気が合いそうなお洒落女子だ。この後、女の子の友達として仲良くなりそう。するとプリティがハラハラしそうで。プリティとも仲良くなったので、仲を取り持ってあげそうな良きおせっかいさんになり・・とか、その後が楽しそうだ。みんな歌上手いね。

ファティマ:伊藤かの子
イスラム系女子、普通の子。彼女がいるから、プリティの特別感が薄れ、普通の優等生に見えるという効果あり。イスラム女子でも、可能な限りお洒落したい!という根性を見せてくれた。可愛いね。

後の学生さんは区別がつかなかったの。ごめん。年を取ると若い子の顔は区別がつけにくいのよ。

ミス・ヘッジ:実咲凜音★
教師。「現実を見なさい!」が口癖のように進路指導をする。舞台が高校だから、まあ先生のいうこともわかる。高校卒業にもなって、実績もなく「女優になる!」とかいう子が大勢いたらちょっと頭が痛い。高校卒業設定だけど16歳?若すぎない?と思って調べてみたらイギリスでは16歳で義務教育終了なのね。日本でいえば中学卒業に相当するけど、その後進学と就職に分かれる感じで、イメージ的には日本の高校卒業なのだな、と納得。イスラム系の生徒も多そうで(女子だけに見えるが)、普通(中~下流?)家庭の子供ばかりだから、ほんと「夢ばかり見てないで、現実をみなさい。着実な人生を!」と言いたくなる気持ちはとってもわかる。夢の実現へ着実な努力をしなければ、簡単に道を踏み外してしまうものね。
スリムで美人な先生ね~と思っていたら、実咲さんでした。歌もさすが。実力派美人でしたものね。

ヒューゴ/ロコシャネル:石川 禅
伝説のドラァグクイーン(自称?)。今はドラァグ用ドレス販売店にいる。偶然彼の店にドレスを買いに来たジェイミーといろいろ話をするうち、彼を気に入り、力いっぱい肩入れする。とてもいい人。ところで、いきなりジェイミーを店のステージに立たせているけど、ジェイミーは歌やダンスはOKだったんだろうか?単に女装が好きなだけでは、舞台は務まらないと思うが・・と疑問に思った。きっと場面が無かったけど、ヒューゴたちによる特訓などがあったのでしょう(と思っておく)。
店番の時の普通のおじさん姿と、ドラァグの金髪に黒いドレス。どっちも濃いわ。
素晴らしい声で、誰?と思った。今回のドラァグの4人はミュージカル俳優としては有名どころを揃えたんですね。「レミゼ」や「エリザ」やいろいろなミュージカルで拝見した方ばかりでした。石川さんはフランツ皇帝やジャベールが記憶にあるわ。ほんといい声。

ライカ・バージン:泉見洋平★
トレイ・ソフィスティケイ:吉野圭吾
サンドラ・ボロック:今井清隆
こちらのお三方。吉野さんがお尻でていた紫のドレス? 今井さんが大人しめの茶色ドレス? 泉見さんがピンクのミニドレスかな。衣装のインパクトが強すぎてわからなかった。
3人とも良いお声を響かせていました。男らしい声なんですよね。

レイ:保坂知寿
マーガレットの親友。ほとんど家族。やはり母一人子一人では煮詰まるので、第三者が必要だと実感した。彼女は重要な第三者。この人がいなければ、この親子はここまで良好な関係が築けていないと思う。いつもマーガレットと一緒にでてきたが、役割的には縁の下の力持ちですね。

ジェイミー父:今井清隆
普通の保守的価値観の男性であるジェイミーの父。上に書いたのでもう省略。今井さんだ~ってわかった。


以上。大変考えさせられる舞台でした。
新歌舞伎座で、最後の最後に写真OKの場面があって。事前に知らなかったから焦った。急いでスマホを構えている間に、ほとんど撮影タイムは終わっていた。周囲も同様で、電源を切っていた方は、完璧に間に合ってなかった。
それを察してか、カーテンコールでも撮影OKしてくれた(ジェイミーが「あれ今いいのかな?」って言ったら、ロコシャネルさんが「いいわよぉ♪」って。)何とか撮れた。ありがとうございました。


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