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宝塚雪組「ほんものの魔法使い」バウ [観劇感想(宝塚)]

宝塚雪組「ほんものの魔法使い」バウ
2021年5月29日(土)11時30分 10列上手

雪組バウホール公演も見れました。もう最近、上演しているか見れるか?というのが一番に来る。そういう世相なのね。
朝美さんはいつもながら何を着ても美しい。そして歌い方がちょっと望海さんに似てきた?空間を震わせるような歌い方になったような気がする。いい声だ。
縣さんの白いおっきな犬さん。素晴らしい跳躍力。犬より猫のほうがよかったのでは?と思わせる動きだわ。親友らしい遠慮ない話し方、犬らしい甘えっ子、無心な仕草が可愛くて。こんなに犬がかっこいいなんて思わなかった。
今回特筆すべきが、華世さん。3番手やん!!まだ2年目とは思えない芝居、歌、ダンス。久しぶりに大型新人を見た。
大変頼もしい大物スターっぷりですっかり忘れていたけど、2番手の縣さんだってまだ新人公演世代。この公演、全員に見せ場があり、全員が活躍、どちらかというと若い人のほうが活躍していた。だから集団場面はちょっと新人公演風味。こんな子がいたのね?~と発見がいっぱいの公演でした(やっぱり新人公演の効用と同じか)。

202105雪魔法使い.jpg


ロマンス
『ほんものの魔法使』
Based on the novel
THE MAN WHO WAS MAGIC by Paul Gallico
Copyright (C)1966 by Paul Gallico
Licensed by Mathemata Anstalt c/o Ensemble Entertainment through Tuttle-Mori Agency,Inc., Tokyo
原作/ポール・ギャリコ 脚本・演出/木村 信司


朝美さんのバウ、楽しみにしてました。容姿は美しく、最近歌が素晴らしく、お芝居もいい。
そんな人の主演、すごく楽しみにしていた。・・楽しかったよ。でも大人向けじゃないような作品。先日の宙バウ『夢千鳥』は18禁な内容だったのに、こちらはお子様向けファミリーミュージカルって雰囲気。バウホール作品にも対象年齢の表示の必要性を感じる。

そして。木村信二作品ってすぐにわかるのが、音楽。木村先生の作品はいつも音楽が平板なんだわ。長谷川先生の音楽は、シリアス作品には向くかもしれないけど、ファミリーミュージカルには元気が足りないような気がする。キャッチ―なフレーズが無くて、盛り上がりどころが分かりにくいの。今回は青木朝子先生とか元気な感じの音楽がよかったなあ。演出家と作曲家はコンビが決まってるのかな?それなら木村先生は権力に絡む陰謀渦巻く大人のシリアス作品を創るべし(愛憎ではなく陰謀!)。

マジシャンの街が舞台で登場人物がマジシャンばかりなんだけど、マジックはアダムとジェインくらいしか披露しなかった。小さなマジックだけ。望海さんのコンサートNZMや古くは『ヴィクトリアン・ジャズ』、『オーシャンズ11』の劇中マジックのほうが本格的だった。ちょっと期待していたのだ実は。

背景の大きな紅い薔薇がちょっと不気味で、もう少し可愛くできなかったのか。ファミリーミュージカルの背景にしては、怖い。牛さんやら蜂さんと合わない世界観よ。

今回、ダンテとジェインが結構深いテーマな会話をしているのだけど、横でモプシーがいろいろなことをしているので、ついついそっちに関心がいってしまい、大事な話を集中して聞いてなかった。ごめんなさい、それほどモプシーの動きから目が離せなくて。
テーマって、自然界こそ魔術のようなもの、ありのままの、普通の魔術(奇跡?)だから、それを見つけて驚き感謝して・・・ってことなのかな。とりあえずアダムの考えていた魔術と、ジェイン達マジシャンの街で考えられている魔術(マジック)は別ものとうこと。

アダムって何者?魔術師というより超能力者で、明らかにジェイン達と人類の種類が違うような気がした。アダムにも親や同族がいるだろうに(山の向こうに)、山のこちらとは交流が無くて知らなかったのか。アダムは家出して新しい世界を知ろうとしたのかな。ともかく、アダム一人異質、彼は異なる文明から来た人で、こちらの文化に同化できないことを悟って去っていったような、そんなファンタジーSF的な話だった。(モプシー見ていて話をちゃんと聞いてなかったから、違ってたらごめんなさい)



アダム(朝美 絢)
「ただのアダム」。魔法使いの村から人間の町へ出てきた魔法使い。超深読みしたら、隔絶された場所に暮らす超能力者の街または知られざる超高度文明に生まれた人で、一族の掟を破って、人間の街にやってきた(推定)。それは人間にも「魔術」を使う「魔術師」の街があると聞いたから。でも、アダムたちの種族とは魔術の意味するものが違い、文明レベルの差を感じて、異質な自分がそこにいてはいけないことを悟り、去っていくのだ。孤独だね・・。
常に優しく穏やかな口調、洗練された物腰、決して感情的になったりしない。SFに出てくる高度な社会に暮らす文明人の姿ではないか。レベルの劣る文明で、新しい発見をいろいろ楽しんでいるみたいな態度。感情豊かで純粋な(幼い)ジェインとの交流は楽しかったと思う。
作中、アダムから見て、対等だったのはモプシーだけに感じた。モプシーだけが同じ文明に所属するからのような。外の世界を十分知ったから、そして自分が与える危険な影響を知ったから、消えたんですね。山の向こうに戻ったのでしょう。
穏やかな朝美さん、抑えた芝居が上手い。ジェインとは恋愛はなかった思う。ただ可愛かったんだろうなあと思う。アレキサンダー教授やダンテとの交流は楽しそうだった。でもマルヴォ―リオやニニアンを通じて、彼らが拒絶を恐怖を感じているのわかって去る。去るときもすごくあっさりしている。次元が違うからか。アダムからはそういう超越感を感じてしまった。この話、原作を読んでないけど、ジェインの視点から書いてるのかな。なんだかジェインが主役の書き方に見えたから。
ラフな青年もすごくカッコよいのですが、やはり豪華な衣装のほうが似合う(私の好みでは)。若い青年役が多いけれど、もっと大人の話も見てみたい。

ジェイン(野々花 ひまり)
魔術師の町の市長の娘。16歳でもうすぐ17歳って。ジュリエットと同い年には見えない。見た目も中身もものすごく幼い。兄妹の様子を聞いていると、兄10歳、妹8歳ってとこかな?それくらい幼い。父や兄との葛藤も、とても幼い葛藤。父は徹底的に幼女扱いしているし、自我を認めてもらってない。自分の思いだけで他人に接する。他人の立場にたって考えられない。小さな寂しい女の子。それがアダムとの交流を通じて、少しずつ大人になっていくのですね。とても難しい役だと思う。
アダムのことは、だんだん好きになっていった。でも男女の恋愛というより、自分の人生を変えてくれた恩人、はじめて信頼した人、素敵なお兄さんって感じ。まだ恋愛未満。中身が幼女だもの。好意には違いないけど、恋愛は感じられなかった。次に再会できたら、恋愛に発展するかも?という余韻を残したラストシーンと感じた。
野々花さんのお芝居は、あまりキャンキャンしていないので助かった。この設定でキャンキャンされたら耐えられない。もう少しふっくらしていた方が似合う役、野々花さんは容姿がちょっと大人っぽい。背も高そうなので、幼女風味の役は大変そう。

モプシー(縣 千)
アダムの相棒、でかい白い犬。ちゃんと話もするし、犬らしく吠えたりする。モフモフしていて大変可愛い(この時期に暑そうな衣装だけど)。アダムは孤独なんだけど、モプシーがいるから孤独に見えない。モプシーの存在感はとても大きい。いろいろな場面で、モプシーがアダムを助けている。アダムと人をつなぐ役割をしていた。本当に「相棒」だね。
犬の役ってどうするんだ?と思っていたけど、昔の飛行士みたいな帽子で、上手く耳を作って、かっこよい犬になってた。ほとんど顔しか見えないから、きりっとした男らしい美貌が際立つ。バスケットに入れられて拉致されたりするし、もともとは小型犬なんだろうな。でもピレネー犬とかレトリーバーに見えた。モフモフで優しくて頼りになる相棒よ。
大型犬だけど、猫のようにしなやかに、飛び跳ねる。縣さんの跳躍を堪能した。すごい。舞台上で犬らしくいろんなことをしているので、つい目が行ってしまった。歌はまあまあって感じですがお芝居の声は良かったし、ダンスは素晴らしい。フィナーレでは、群舞センターですが、堂々としていて全く違和感なし。ショースターですよね。ショーになると目が離れないわ。早く主演を見てみたいと期待が急上昇。
この素晴らしい2番手スターが、プログラムでは衣装写真の下から2番目とは。この公演、2番手3番手が衣装写真の最後尾なんて、すごいね。


ニニアン(華世 京)
「比類なきニニアン」。予選でアダムに助けてもらって縁ができたために、いろいろ巻き込まれる若い魔術師。本来なら緊張のあまり予選落ちだった。だがアダムがフォローしてしまい、彼と関わったために、偉大な市長からつつかれ、万能な反市長から密偵を命じられるという可哀そうな人。気弱そうな青年なのに。
予選での緊張感、アダムと一緒にいるときの後ろめたさ。密偵を引き受けざるを得なくなるほど一方的に追い詰められる場面、嫌なのにでも断れなくて正体不明の恩人をスパイしてしまう複雑な心理。装飾過多な衣装と髪形なのに、結構表情がしっかり見えた。
でもラストシーン、3年で有名なマジシャンになってるって???何をしたんだ?アダムが影響を与えたのか?どういう作用だ。しかもすべてを捨ててアダムに会いに行くとかいう。いろいろとあまりに突然ですごく気になった。
ところで。華世さんって、主な配役の一番下、出演者の下から3番目って。とても初主要役・初台詞?とは思えない堂々たる演技。いやオドオドした人物なんだけど。でもお芝居上手いし、ソロも上手いし声もいい。ダンスも一瞬だけど良かった。すごい新人ですね。
フィナーレは朝美さんを真ん中に、上手が縣さん、下手が華世さんですよね。全員出てきたらあっという間に後ろに行ってしまったけど、間違いなく3番手。久しぶりに大型新人を見た気分です。次からが楽しみ。


<中立穏健派>
アレキサンダー教授(透真 かずき)
魔法使いのおじいさんのような雰囲気と衣装。何かを達観しているような方。長老といってたっけ。市長もいるのに長老・・?誰が一番偉いのだろう。世俗の権力など超越してそうな方で、魔術師の中で一番柔軟な思考の持ち主。アダムの理解者になりそうだったのに。優しく包容力のありそうなお声が素敵でした。

ダンテ(日和 春磨)
「華麗なるダンテ」教授と一緒で、市長たちの対立からは一線を置いている中立派。知的な探究心はあるけれど、アダムの能力を受け入れようとしている。この人もっと活躍しないと!って思う。中立派でアダム受け入れ派で動くならダンテだ。(教授は行動力という点では弱い)。なのに、押しが弱い。もっと迫力のある人で、アダムと絡んでほしかった。
金髪縦ロールが美しく、二つ名が納得。見た目は派手で華麗だけど、落ち着いていて物静かな雰囲気が知的でいい感じ。ヴェアトリーチェの弟みたいでそこだけ違和感。


<市長ファミリー>
ロバート(久城 あす)
「偉大なるロバート」、自分で「偉大なる」とか名乗ってるお茶目な方。市長であり、反市長派が一大派閥を形成している。ロバートの味方はいない。あまり人望が無いのかも。頭固いし。ジェインとは最後まで和解なし。息子とは話あったのだろうか。
別箱だと、ここのところいつも久城さんが黒幕だったので、構えてしまった。今回は違ったようで、普通の頭の固い父で、対ジェインのための役割だった。「その後」のジェインと父、兄の会話も聞いてみたかった。久城さんに一曲もないなんて!!!これもびっくりだ。

ジョゼフィン(千風 カレン)
ロバートの妻、ピーターとジェインの母。特に何もしないかな?父と同じ考えらしく、跡取りの兄を大事にして溺愛、反抗的な娘のことは気にしてないようだ。よくある家庭。自宅にアダムたちを招いた後、モプシーとちょっと絡むくらい。

ピーター(壮海 はるま)
ジェインの兄で、魔術師見習い。父からのプレッシャーと母からの溺愛という名の拘束に苦しめられているが自覚がなく、苛立ちを妹にぶつけるという最低野郎。ラストシーンでは妹と和解し内面が成長しているっぽいので、どんな話し合いがあったか家族会議が見たい。
妹は虐めるしマザコンで嫌な奴かだったけど、彼なりに葛藤があったのね、とびっくりするラスト。本作で成長したのはこの兄妹だけだった。
壮海さん、背が高いのね!なかなか気になる役でした。

<反市長派>
マルヴォーリオ(桜路 薫)
「万能マルヴォ―リオ」。市長と対立する魔術師の首魁。市長に取り込まれそうなアダムのことも敵視して、しっかりと正体を暴くべく、ニニアンを密偵に使う。なかなか腹黒くて素敵な魔術師。桜路さんのこんな黒っぽい役初めて見た。

メフィスト(星加 梨杏)
「メフィスト・ザ・ミステリー」だっけ? 魔術師村のトート閣下。魔術がどうであろうと人気抜群って雰囲気のビジュアル系魔術師だ。マルヴォ―リオの傍にいつもいて一番信頼が篤そうだが、特に何もしない。美しく佇むのみ。目の保養役。

ワン・フー(天月 翼)似非中国人
アブドゥール・ハミル(真友月 れあ)エジプト人
ラージャ・パンジャブ(蒼波 黎也)インド人風
この辺りは一体化していて、衣装が違うので区別はつくものの、役割は一緒(ほぼ違いがないような。)まだ違う役目があるのが、やや使い走りっぽいけれど、ゼルボ(紗蘭 令愛)手下の魔術師トリオ=予選挑戦者(風雅奏)と手下の魔術師コンビ(希翠那音&霧乃あさと)。予選で落ちたのに、いつの間にかセルボの手下になっていてびっくり。衣装も同じだもの(笑)。予選で別の才能を見出されスカウトされたのかも。

ファスマー(麻斗 海伶)
門番さん。最初にアダムの魔術を見せられ、町に入れる許可を出す。よく考えたら門番が許可を出すとか結構権力があるのね。お年寄り風だけど、声が若い。

<助手娘たち>
ワン・メイ(彩 みちる)ワン・フーの娘、ジェインの親友
ベアトリーチェ(愛 すみれ)ダンテの娘
ファーティマ(羽織 夕夏)アブドゥール・ハミルの娘
サティー(涼花 美雨)ラージャ・パンジャブの娘
ロクサネ(花束 ゆめ)アレキサンダー教授の孫娘
ワン・メイにちょっとジェインとの会話があるくらいで、他はいつもひとくくりで特に役割がないお嬢さんたち。親子というがあまり一緒にいない。結構な男尊女卑な世界感。女は添え物!のわりに女に迫力があるのが不思議だ。特にベアトリーチェ様は貫禄ありすぎ。このコンビくらい逆でもよかったのでは?女大魔術師(大魔女王?)と華麗なる息子でもいいやんとか思いました。娘役にろくな役が無い・・・。愛さんや羽織さんがいて歌の一曲も無い。女王蜂の千風さん、歌手蜂の愛すみれさんにやっと相応しい出番でしょうか。って蜂やん。
気になったのは、ワン・メイ。父から何を聞いて、ジェインに何を忠告したかったんだ?さっぱり謎だった。あの言い方では誰も信用しないのでは。それこそ「私たち親友!だから親友のいうことは絶対に聞くのよ!」っていう感性の小学生女子にしか無理な理屈だ。ワン・メイも幼いなあ。彩さんは大人の女性役ですら芝居がキャンキャンするから、この幼さなら出番が少なくてよかったと思ってしまった。


ちゃんとしたフィナーレがついてました。物語のラストシーンに、トップ2番手ヒロインが全員出ている。こういう時は3番手が次の幕開きからの場面を引き受けるのだけど・・・3番手があまりに若く、他に適任者も不在のようで、幕が下りてからフィナーレまでの時間が大変長かった。フィナーレは朝美さん板付きから。超早着替えお疲れさまです。
ソロダンスのあと、縣さんと華世さん登場。おお!黒燕尾による男役総踊り。カッコいい!
ドレスの娘役さんたち登場、若者ばかりだからか、リフトがばんばん入る。すごい。
朝美さん抜けて、縣さんセンターの群舞。すごい安定感。センターを任せられる人材だと確信する。ショーの場面センターはもうすでに務めてたっけ。そして白いドレスで野々花さん登場、やはりこういう大人上品な衣装のほうが似合う。朝美さんとデュエットダンス。挨拶までついたかなり本格的なフィナーレだ。朝美さん、声が空間を響かせるようになったなあって。バウホールなのでパレードは役の衣装。着替えが大変だ。でも見ている方は素敵な正統派フィナーレがあって嬉しい。


この公演はファミリーミュージカルで、子供が見たら喜ぶだろうなあって思った。『夢千鳥』は絶対に幼い子供には見せられないと思ったけれど(解説できないわ)、これは小さな子供に見せてあげたい。幼少時に刷り込むにはぴったりだ。
素敵な作品だと思いますが、個人的に言えば、朝美さん主演で見たい作風ではなかったな。もっと耽美なシリアス恋愛ものが見たかった。いうまでもなく超個人的な意見ですよ。

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