SSブログ

宝塚宙組「白鷺の城/異人たちのルネサンス」 [観劇感想(宝塚)]

宝塚宙組「白鷺の城/異人たちのルネサンス」
2018年10月11日(火)11時 2階8列センター


ストーリー性のある和物ショーって結構楽しい。
宝塚ではあまり見ない形式だけど、OSKではよく見る形式だからか。
宝塚でももっとこういうのを上演したら楽しいのに。
人数が多いし衣装も装置も豪華だから大変見ごたえがある。
今回2階から見たから、全体が見えてとてもとても美しかった。
大野先生はストーリー性のある和物ショーというジャンルが向いている、
セリフが少ない分、諄さが取れてゴタつかず、すっきりする。
あと、真風さんが大変に着物が似合う。驚くほど美しい陰陽師!
真風さんって洋物コスプレも現代スーツも似合うのは知ってたけど、
平安や戦国の陰陽師まで似合うとは。ともかくお姿は大変美しい。

お芝居は、ルネッサンスものだが、物語は完全にロレンツォ・デ・メディチが主人公。
彼を明確に主人公にしたほうが、ストーリーがすっきり明確に濃くなったのでは。
どうも焦点が定まらないような展開でした。脚本がふらついているというのかな。
芹香さんのロレンツォは素敵だけど、真風さんが似合わないとも思わない。
さらに演出が・・・メリハリがなくて盛り上がらない。山場どこかな~って思った。
そうかと思えばいきなり「皆殺しの谷作品」かと思うラスト。しかもええ?!だし。
本編はまあそんな感じでしたが、フィナーレは素晴らしかった。絶品といえる。
ラインダンスも、娘役総踊りも男役大階段も、デュエットダンスも、素晴らしい。
上から見ると全体の動きが美しく、オペラグラスを使うのがもったいないくらい。
近くで見てもみんな髪型からかっこよく。ダンスは胸キュン&優雅な振り付け。
衣装もセンス良くて素敵!
田淵さんも、ストーリー性のある洋物ショーにしたらよかったのでは?なんて思う。
あら和物洋物ショー2本立てになったら完璧に「春のおどり」(笑)たまにはいいと思うけど。

ショーもお芝居も、2階センターから見ると大変美しく、
この公演、1度は2階から見るるといいなと思いました。

201810宙白鷺.jpg

-本朝妖綺譚-
『白鷺(しらさぎ)の城(しろ)』
作・演出/大野 拓史


大野先生の作品は、書き込みが凄くて、多分時間が足りなかったんだろうな~と想像させるような作りになってしまっていることが多いように思っていた。今回、1本のストーリーはあるものの、ショーということでセリフは極限まで少なく、登場人物は必要な人物だけに絞り(かなり少なく)、でもショーだからみんな出て踊っている、という構成になっていて、かなり美しくすっきり綺麗に仕上がっていた。こういう「ストーリー性のある和物ショー」というジャンル、宝塚ではあまり見なかったけれど(ショーだけど、ラインダンス不要の1部だし制約が少ないみたい)かなり良い。


第1景 プロローグ 
陰陽師・幸徳井友景(真風)、明覚(寿)、宮本無三四(桜木)
上手下手のせり上がり登場、組長はすぐわかったが、もう一人が謎で。真風さんでも芹香さんでもないのは分かった。豪快で濃い人物から愛月さんかな?と思ったけど声が違う。桜木さんだった。ちょっとびっくり。どちらかというと繊細で品の良い人物が多かったから、こういう豪放磊落な役のイメージがなくて。でもできるのね~似合うのね~(日本物化粧とはいえわからなかった)。すごい。

第2景 「玉藻」 玉藻ノ前(星風)と安倍泰成(真風)
平安王朝の雅な場面、チョンパの幕開きの美しさはここで味わえる。やっぱり宝塚の和物ショーはこれがなくては!幕が上がって電気がつくと、客席がどよめくのよ~♪これこれ。すごく気分が盛り上がる。雅な男子と乙女。色とりどりの美しい着物姿でずらりと並ぶその壮観。センターが芹香さんで、ひとりで銀橋も渡り、まるでトップのよう。そんなに華々しく登場しておいて、特に役はない。・・この厚遇はお詫びか?と、最後まで見て思った。

第3景 「信太妻」 葛の葉(松本)、安倍保名(愛月)
ミエコ先生、お年を召されましたね・・声にエコーがかかっているのは、神性を出すためでしょうか?突然降ってくる異様な声に驚きました。動きもなんだか。愛月さんが去っていくミエコ先生に取り縋ってるのですが、どうしても「最愛の妻を引き留める夫」に見えなくて参りましたわ。保名役は本専科のオジサマでないと難しいって。若く美しい保名が、老いた姫に追いすがる姿は、何か騙されているようにしか見えなかった。そりゃ退治しないといけない妖魔だな、と妙に納得し因縁の陰陽師(真風さん)に声援送りたくなる。ただ彼は標的を間違っているが。ミエコ先生は、すべてを超越した天帝あたりの役どころでよかったのでは?組子との年齢差が厳しいので、物語の中に対等に入るにはかなりの困難があると思うのでした。


第4景 「妲己」 妲己(星風)、吉備真備(真風)
中華の場面が、これまた大変美しくて。豪華絢爛、唐の長安の華やかなりしころ。滅びた都で幻の宴を再現する妲己。映画「空海」を思い出す。あれも幻想の長安が出てきて、楊貴妃が踊っていた。同じイメージ。吉備真備がこれまたかっこよくて心根も良い人物に見える。妲己が玉藻ノ前になったという伝説は昔からよく見るけど、なぜ妲己が日本に来たのか納得できる理由がなかった(と思う)。今回初めて納得した。日本から来た吉備真備が誰よりもイイ男だったからだ!!!
この場面のお二人がとても似合っていたので、「虞美人」なんて再演したら似合うのでは?と思った。(周囲の懐かしい衣装が、思い起こさせたのだと思われる)。真風さんの項羽は似合いそう~芹香さんも劉邦似合いそうだし。

第5景「女化ヶ原」 戦国時代、北関東の武将・岡見宗治(芹香)、軍師の栗林義長(真風) 八重(天彩)
ということで日本。いきなり北関東。安達ケ原ですか?殺生石のお話ですね。このお二人のことは浅学なため知らなかった・・。なんか急に男の友情みたいになって、「あれ、玉藻は?」と思った。八重とかいう別の女性と良い仲になっているし、どうした?と戸惑う。でもかっこいから許す。(あまりにあっさり全滅したけど。)
この場面、芹香武将が部下を率いて銀橋にずらりと並ぶ。端から2番目という位置でありながら、大変目立つ方がいて「だれだれ、将来有望??」と勢い込んで確かめたら、桜木さんであった。この方、場面によってかなり印象変えてきますね~すごいなあ。
殺生石が割れて(噴火みたいな映像・・どんな石やねん)玉藻の前が大変美しいお姫様姿で登場。ここでやっと八重との関係が判明。そういうことか~お姫様、岩の中で400年寝てたんだ。

第6景「白鷺城」 富姫(松本)、プロローグから続く。
やっと本題。回想シーンが終わって、プロローグからの続きですね。ここでも荒武者・桜木氏が、陰陽師を引き連れて姫路城の化け物退治。これは刑部姫が正しいような気がする。まあ、「葛の葉、刑部、そして富姫」と注釈がつくから、わかる。やっぱり詰め込みすぎだわ大野センセ。
この場面でいきなり、二人が相思相愛で、武芸者に倒された玉藻を追って、陰陽師も自死する。あまりの急展開にちょっとついていけなかった。武芸者と僧侶はさっさと逃げるし。富姫が「お待ち」と言って二人を再生させ結びつけるのも唐突感あり。私がついていけなかっただけかもしれないけど、大野センセ詰め込みすぎ!と思ったのでした。これ一応ハッピーエンド・・なの?
小さな映像がかなりいろいろ働いていた。2階で見たときは映像がはっきり見えなくて、「ふーん」って感じでしたが1階の良席でみると、かなり良い効果を醸している。大野センセ、こんなに映像に仕事させるなら、2階B席でも見える大きさでお願いしたいです。


第7景「狐火」 フィナーレ 
さてさて一件落着後。狐の嫁入り。まあわかる。そしたら、いきなり大勢が祭りの格好で出てきて、ねぷたやらでてきて。まるで民謡メドレー(OSK定番)。民謡メドレーが始まらなくて良かった。
ラストの衣装、あれでいいのか?玉藻の前さま。モンペだよ?あのお引きづりの豪華絢爛姫様衣装とはいかないかもしれないが、モンペ!!!それでいいの?とかなり激しく動揺した。

演出に村山友五郎氏が入っているから、似ているのも当然なのかもしれないが、このショーものすごく既視感があった。こういうの好きだから良いけど。眠くならずに楽しめました。大野先生、一度OSKの「春のおどり」(和物)を演出してみて欲しいわあ。絶対楽しめる作品を作ってくれるに違いない。このジャンルを極めて欲しい。ストーリーはほどほどでいいから。



ミュージカル・プレイ
『異人たちのルネサンス』—ダ・ヴィンチが描いた記憶— 作・演出/田渕 大輔

2幕がストーリーもの。異人たちのルネサンスっていうお話だが、「異人」って誰?てっきりダヴィンチ(真風)の話だと思ったら、ロレンツォ・デ・メディチ(芹香)のことなの?最初に作品発表があり、ダヴィンチ主役というのを読んだとき、当時としては異色の存在、宇宙人からレクチャーを受けたという噂まである天才という単語では表現できない異能の人が、それに苦悩し、芸術や才能を花開かせる話かと思った。でも全然違った。主人公はロレンツォ・デ・メディチ。彼と政争していた「パッッツィの陰謀」の話。ダヴィンチの話は恋愛がメインで、芸術上の葛藤はほんの一部。親方との会話の端っこに出てきただけ。彼がその才能のせいで異端視されることもなく、頼もしい仲間がいて、親代わりの優しい親方夫妻がいて、権力者に目をかけられて、順風満帆ではないでしょうか。ただ一つの間違いは、幼馴染の初恋の少女が、その権力者の愛人になっていたこと。彼は愛には悩んでいても芸術には悩んでないように見える(芸術に迷いがある、みたいなことを言ってるけど、親方との会話だけで、そういう場面はない。彼の苦悩の9割以上はカテリーナとの恋の話)。
同じく愛に悩み、兄へのコンプレックスと嫉妬でぐちゃぐちゃなどす黒い感情に支配されて、最悪のコースをたどる弟ジュリアーニ(桜木)。この弟のほうがずっと苦悩している。兄も弟を軽んじてなくて愛しているのは分かるし、弟も兄への嫉妬の中に愛があるのも見える。すれ違いからの悲劇が何とも言えないラストへつながる。・・・これ、絶対ロレンツォが主役だよ。彼は弟のことだけでなく、フィレンツェの町のこと、メディチ家のこと、家業、バチカンとの対応など、いろいろ葛藤している。レオナルド・ダヴィンチはこの中で使えるコマとして優遇している。優先順位のトップはメディチ家の家長として、稼業と街を安全に発展させること。その手段の一つに芸術振興があるって感じ。だから自分自身も商品のように上手く演出して、富裕で物分かりが良く柔軟で頼れる支配者を演じているように見える。彼の孤独や苦悩こそもっと掘り下げたら、深みのある良い作品になると思うのに。もちろんロレンツォ主役。今でも真の主役だけど、主役はレオナルドになっているから。だから傍系の話がクローズアップされ、本当に議論すべきエピソードが飛ばされ軽く扱われ焦点があやふやになって、睡魔に襲われるような場面が多々発生するのだ。なんて思ったのでした。
なんというか、「ダヴィンチ主役なのに、焦点そこ??」って感じのストーリーでした。


ということで、私が思う順に書く。

ロレンツォ・デ・メディチ/芹香 斗亜
フィレンツェの統治者、ルネサンス芸術のパトロン。この都市の支配者。若くして当主となり、平民なのに支配者として君臨する。なんて大変な地位。分裂状態のイタリアの一つの国の君主なのだから、どれだけ大変か。それを周囲にわからないように、柔軟で女好きで芸術好きという偶像を作って、自己演出しているように見える。弟に対しても。それが利きすぎて、弟は嫉妬と焦燥から黒い道をたどってしまった。弟にはもっと心の内を打ち明けていれば、彼の不安も解消して、心から兄に尽くしただろうに。弟のまえですら演技していた彼の孤独が苦しい。妻に対しても。妻との冷えた関係。けれどこの妻はどこか心の底で彼を理解していて、彼の自己演出に付き合っている大人のように見える。ロレンツォは妻にも心を許してないけどね。カテリーナは彼の安らぎ。可愛がっている猫みたいなものか。大事な商売道具(天才芸術家レオナルド)が真剣に望んだら、下げ渡してくれたのでは?と思う。その代わり一生彼のためにその才能を費やすことになり、偉大な芸術家として大成しなくなるかもしれないけど。
とにかく、だれにも心を許さない孤高の人物。彼を主人公として真ん中に置き、弟、妻、愛人、政的、商売敵、そんな彼らとの戦いを傍で見ていたレオナルドが、庇護者である彼の人生を語るという形式なら、面白い作品になったかもしれない。
芹香さん、かっこよかった~!!孤高の支配者、心の裏側や影の部分がもっと出せる場面があれば、もっと良かったと思う。でも十分主役として魅力を発揮していた。あと、なんかセリフ回しが彩風さんを思い出したけど、この期はそういう芝居を習ったのか?と思った。
あと衣装ね。あまりにお着換えが少なくて、予算乏しいの?・・・と思ってしまった。フィレンツェの支配者なのに衣装がずっと同じなんだもの。国賓のミラノ大公を招いたパーティと執務室にいる格好が同じって。教会で襲われた時の服も、さらに快気祝いのパーティの衣装も全部同じ。何とかして。


<ロレンツォが愛するもの>
レオナルド・ダ・ヴィンチ /真風 涼帆
歴史上指折りの天才だけど、天才を示す場面はほとんど出てこない。冒頭の鳥の絵を描くときの開設くらい?あとはみんなが言うだけ。芸術家としての苦悩も葛藤も見えない。あるのは初恋の少女への思いだけ。それが自分のパトロンの愛人だから、パトロンと恋人とそれぞれへの思いで苦悩しているだけ。普通の好青年。恋に苦悩する好青年なのよ!
支援してくれるパトロンと、初恋の少女と、その両方との良好な関係が築けないという絶体絶命に追い込まれた好青年、彼の恋の苦悩がこの作品のテーマ。それならそれでいいから、パッツィの陰謀やら法皇庁との話はあんなに時間割く必要ないと思う。グイド司教の野望くらいで、そこから彼女を救う!だけでいい。あんなにロレンツォのこと詳しくいらないそれより彼の親方や仲間との関係をもっと描いてほしい。芸術の話、芸術の悩みを。そしてフィレンツェの時代だけでなく、もっと彼の一生を描いてほしかった。子供時代も一場面だけでなく、もっとしっかりと。そしてフィレンツェを去って、諸国を流離うところも。彼の魂の変遷を。その中心にカテリーナがいるなら、ずっとそれを描いてほしい。彼が主役なら。あんなに簡単に「モナリザ」がでてきて、それでいいの?って思ったもの。

真風さんのお姿は大変かっこいい。美しいんだけど、なんというか「男役の美学」って感じの美しさ。私の好みかですが、明日海さんや月城さん、早霧さんって大変美しく、男役をしていてもですが、女性であっても美しい美人さん。でも真風さんは違う。男役の時が美しい。ああ、何を言いたいかわからないけど、とにかく「かっこいい男役」といえる方。1幕であんなに平安衣装やら古代中国衣装が似合ったのに、金髪ルネサンス衣装もまた見事に似合う。明るい金髪に黒の簡素な衣装が大変美しい。そう衣装、主役だけどかなり簡素な衣装。やっぱり予算・・と過る俗な思考。かっこいいんだよ~でもね。

レオナルド(少年)/愛海 ひかる
とても可愛らしい少年で、幼少時はカテリーナと同じ年、もしかすると年下に見えたのですが。大人になってからは、圧倒的にレオナルドのほうが年上に見えました。急成長しすぎ(笑)
あまり親に抑圧された少年に見えず、素直に自分の思いを出す少年に見えました。大人レオナルド(真風)とのつながりも割と自然に見えます。ただカテリーナとの年齢逆転がびっくりなだけ。

カテリーナ/星風 まどか
(カテリーナ(少女)/夢白 あや )
なんか純粋な愛人。純粋培養の修道女で、グイド司教のいうことをそのまま信じ込んで生きているよう。権力者の愛人をやっているのに、この純粋さ。権力者の愛人なんて立場にいるなら、そろそろ気づこうよ~って思うほど、純粋な世間知らず。彼女がもっと計算高い女だったら、権力者の愛人としての地位を確保しつつ、愛人(レオナルド)と上手くやっただろうし、もっと狂信的なら、レオナルドを退けたと思う。そのあたりの絶妙なバランスが、ロレンツォに愛されたのだろうなあ。
最後までレオナルドを愛しつつ、ロレンツォの愛人として彼を癒し、最後までグイド司教に忠実に生きました。ヒロインなのだから、もっと彼女の心の葛藤や変遷を丁寧に描いてあげたら、レオナルドが主役に見えたのかもしれない。「ロレンツォの愛人」「レオナルドの初恋の幼馴染」としてのカテリーナしか私は分からなかった。彼女自身はロレンツォを、レオナルドを、グイドをどう考えていたのか。あまり場面がなかったのかな。見落としたか?
カーニバルの時のオレンジのドレスが、簡素だけどとても綺麗だった。ラストのモナリザのドレスは、絵画に忠実にかなり地味でしたが、品があって似合っていました。生地は豪華じゃなくても、デザインやアクセサリーで豪華に見せられるな~と感心したカテリーナのドレスでした。
ところで、レオナルドがカテリーナのために作ってくれた天使の羽。客席から見ていると、蝙蝠の羽にしか見えず、「こうもり男爵もこういうのを背負ってたなあ」なんて思い出してしまいました。確かにレオナルド・ダヴィンチが作った羽はあんなデザインだったようだし、そこは史実に忠実なのだろうけど、それを愛する人の天使の羽代わりにしたってのは創作よね。なんかもっとロマンチックなほうが見栄えがしただろうな~と感じただけです。
レオナルドと同じ理由で、幼少時代のカテリーナももっと場面が欲しかったですね。ただ少女時代のカテリーナ夢白さん、かなり大人っぽい少女ですね。大人になってからあんなに純粋なのに、少女の頃のほうが考えてそうってなんだかイメージが合ってないような・・美人は美人ですが。

ルクレツィア/夢白 あや
一命をとりとめたロレンツォの新しい愛人、金髪美人で性格も容姿もカテリーナとは全然似てなさそう。華やかでよろしい。今度の愛人は物おじせずに素直で頭が単純そうなところがロレンツォ好みですかね。


<ロレンツォの家族>
弟ジュリアーノ・デ・メディチ/桜木 みなと
兄が優秀すぎてこじらせた弟。こういう暗い心の弟役って、チェーザレ・ボルジアの弟を思い出す。イタリアにはよくある兄弟関係なのかも。優秀すぎる兄を持つ普通の弟って関係か。
ジュリア―のも兄を尊敬し誇りに思っているのは伝わってくる。そして自分が兄に比べられて、劣っていると自覚させられ、それを克服するために、兄の役に立ちたい、自分で行動して兄に褒められたいという欲求がかなり強く感じられた。この兄弟の葛藤は見ごたえはあった。桜木さん、上手いわ。
ただカテリーナに惚れるところがあまりに唐突で、納得できなかった。ずっと同じ家に住んでたでしょ?彼女いつから兄の愛人やってるのよ?今まで何度も宴会で見てただろうに、なんで今恋に落ちるの???って。婚約者のミラノのお姫様も美人なのに、よくわからん。兄への反発で婚約者を嫌うのは分かるが、そこでなぜ兄の愛人?兄ではなく自分を選ばせることで、兄に勝ったと思うから?・・・「カテリーナ」じゃなくて「兄が愛する人」を振りむかせたかったのかな。
かなりこじらせた弟でしたが、兄との家族愛は感じました。彼をなくしてロレンツォは内心かなりつらかったと思う。だから軽薄に快気祝いを開いたのでしょうね、心の傷を隠すため。どちらも素直じゃないところが良く似た兄弟です。
桜木さんがこんなにお芝居が良いとは思ってなかったので(大失礼)すごく引き込まれました。もっといろいろな役で活躍を見たい人です。

正妻クラリーチェ/純矢 ちとせ
腹に一物ありそうな奥様。というか、母に見えて仕方ない。貫禄ありすぎ。ジュリアーノからしたら完全に母、ロレンツォの母といっても通りそう。かなり年上なのかしら。
公式の場でも愛人を同席され、愛人といちゃつく夫に特に何も言わず、フォローしてあげるとは、心の広い奥様なのか、実は影の支配者なのか。夫に何も言えない弱い奥様かもしれないけど、純矢さんのクラリーチェは弱い奥様説は成立しない強さを感じた。かといって夫を支えている風にも愛している風にも見えないところが、不気味な存在感を醸している。何かする(裏切る)のか?とずっと期待していたけど、特に何もしなかった(疑ってごめんなさい)。何を考えているのかわからない、何か企んでそうな奥様だと、そりゃ頭の単純な娘とか純粋な女性を愛人にしたくなるよな~とちょっとロレンツォに同情。

<ロレンツォの同盟者>
ミラノ公/寿 つかさ&イザベラ姫/遥羽 らら
法王庁を切り、メディチにつくと画策したミラノ大公。そのため娘のイザベラとロレンツォの弟と婚約を決める。二人ともかなり俗物。ミラノ大丈夫か?と心配になる。この父、遊んでばっかりなのだもの。娘もかなりしたたかな感じ。父から娘への愛情を感じるし、娘も父のための結婚を頑張っている。ジュリアーノにあんな態度を取られたら、普通なら怒って帰りそう。美人なのにさ。でも父の同盟のため、国のため、頑張ってジュリアーノの気を引いて幸せに結婚しようとしている。偉いわ。父も心配そうに見ているのが心温まる感じ。横にいるロレンツォ夫妻の冷たさや兄弟の葛藤なんかと対照的。


<ロレンツォの敵対者>
ローマ教皇/寿 つかさ
メディチ家と対立する最大勢力のトップ。グイドはこの人の手足で、最後は切り捨てられた。さすがローマ法王という政治家。ロレンツォ主役なら、法王をもっと出してグイド司教を操るところを見せて欲しい。冒頭場面はよかった。これきりでしたが。

グイド司教/愛月 ひかる
もっと腹黒く法皇を陥れるように見えたら、さらに良い役になったなあと思う。もっと陰謀家であっていい。将来美人になる孤児の少女を洗脳して権力者の愛人に、刺客として送り込むなんて、なんて手が込んだ陰謀!!素晴らしいではないか。素性の知れない神父が、法王位を狙うなんて、目標大きすぎ。それのどの大物に見えなかったけど、でも着実に頑張ってきたのね。
その大事なコマのカテリーナ、純粋すぎてあまり役に立ってないような気もしないでもない。もっと取り込んでおくほうが良かったのに。使い捨ての駒にもなってない。あれなら「ロレンツォの愛人を買収して」でもできそうな役割。別の面から見たら、ロレンツォ好みの愛人を育ててあげた良い人みたいじゃないか。グイド司教からカテリーナへの愛情は感じなかった。だからコマで刺客なのかと思ったのに。刺客としての教育は不足しているようだ。もっと大量に少女を引き取って養育し、権力者に愛人として送り込んでいるのかもしれないけど、この作品を見る限り、彼の駒はカテリーナ一人に見える。なんか損してないかグイドさん。いっそ愛人養成所を経営したほうが良かったのに。
今書いていて思ったけど、彼はかなりの年上なんですね。もう中年というか、法王を狙えるくらいの年齢。老練な年齢感が薄かった。もっと奥深く内面が濃い人物で、ロレンツォを恐れさせ、法王から敵対されるような大人物だったら面白かったかも。うーん。グイド司教が中途半端に描かれているのも、混乱の一因に思える。愛月さんはセリフの声が聞き取りにくいので、混乱に拍車がかかるのが難点。私の耳と相性わるいのよ~

フランチェスコ・パッツィ/凛城 きら
悪者らしさがいいねえ。でも利用されている感じが出ている。ロレンツォよりもずっと小物で俗物に見えるところがイイ。ただ、彼と組んでるグイドも小物に見えるのがちょっと。グイドに操られている感じがもっと出ると私好み。最後はあっさりとロレンツォにやられてしまいました。途中まで良い感じだったのに残念だ。


<レオナルドの工房の仲間>
親方ヴェロッキオ/松風 輝
レオナルドのことをよくわかってくれるいい親父。嫉妬や葛藤はないのがイイ人。彼が唯一レオナルドと芸術の話をするが、なんか「恋に迷ってスランプに陥った弟子を励ます親方」という感じに見えた。天才へ対応ではないような。これは脚本のせいだ。完全に。
松風さんも声が割れて聞き取りづらいことが多発した。いいセリフなんだからしっとり聞かせてよ!と思った。

工房の女将ルイーザ/花音 舞
レオナルドも工房の弟子たちも、みんな子供みたいにかわいがってる。肝っ玉母さん。いい人。

ペルジーノ/澄輝 さやと
ボッティチェリ/蒼羽 りく
クレディ/和希 そら
フェルッチ/留依 蒔世
シニョレッリ/瑠風 輝
ごめん誰が誰だか全然わからない。ボッティチェリが「ビーナスのモデルになって」と酒場の女に言い寄るところだけ、「あれがプリマヴェーラ!?」と思ったので記憶にある。あとは分からない。もっと役割を振ってあげたいメンバーですよね。


<レオナルドの街の仲間>
サライ/天彩 峰里
この人主要人物。彼がいないと話が進まない。超重要人物。最初の登場から印象的なエピソードを入れてもらい、自身の来歴が語られる。もちろんレオナルドとの関係も。レオナルドに「レオナルド・ダヴィンチ」らしきことを語らせたのは彼だけ!だし。このエピソードがなかったら。レオナルド・ダヴィンチらしさが全然ない作品になっていたかもしれない。
そしてその後、工房の仲間と一緒にレオナルドの恋人奪還作戦に加わり、誰よりも重要な働きをする。それがパッツィやグイドに目を付けられ、裏切る。裏切りの場面もちゃんと用意され、サライの葛藤が見える。裏切っただけでなく、ちゃんとそれをレオナルドに知らせるということもしている。本当に彼がいないと話が進まない。何より大事な場面にレオナルドが絡めなくなる。そこから出番はなくなるが、自分のしたことをちゃんと確認し、ショックを受けて肩落として去っていく場面まであった。
出番も多く、この物語では超主要人物に違いない。
天彩さん、男の子らしくて可愛い。工房で混じっていても違和感なく仲間に加われる愛嬌が感じられる。彼の心の動きがかなり複雑だけど、しっかり見えた。レオナルドとの関係も良く分かった。すごく目立つ役をもらった娘役さん、売り出し中の方なのね。

居酒屋の女将ロザンナ/美風 舞良
サライの伏線になるセリフを言う人物。この辺りは大変深い。言葉遣いは乱暴だけど、ジュリアーノに忠告もしているし、イイ人なんだ。酒場の女将さんって、みんなのおっかさんみたいに世話焼きしてるんですね。



<フィナーレ>
銀橋で3人が搭乗。下手から、和希そら・留依 蒔世 ・瑠風 輝と並ぶ。実は誰が誰だかよくわかったなかったので、「工房のメンバー」って理解。私は瑠衣さんがいいな。
次がラインダンス。 衣装も振り付けもすごい可愛い。あの衣装で回ると可愛い。
娘役の額縁的な配置の大階段素敵、衣装もシンプルでかっこいい。ここの真風さんがかっこよくて倒れそうになるほど素敵。娘役に囲まれても甘くならないところがイイ。娘役さんの衣装もシャープで真風さんにぴったり。ここの衣装好き。娘役のマスゲーム、2階から見たらとてもかっこいい。
大階段の男役。娘役と入れ替わるところ、すごくかっこい良くてぞくぞくする。このセンターは芹香さん。すごくかっこいいダンスで惚れ惚れした。真風さんと対決する感じのダンスがある。いいわあ。真風さんは途中で去り、この後は芹香さんがずっとセンターで踊る。ここの振り付けもかっこいい。
娘役トップが会談上から降りてきて、下手花道からうずくまってせりあがってきた真風さんとデュエットダンス。リフトが軽々って感じでかっこいい。さっきから「すごくかっこいい」という単語ばっかり書いてますが、ほかに書きようがない。真風さんと芹香さんってショーのストイックな感じのダンス場面が最高に似合う。このお二人、雰囲気が合う。
エトワールは天彩さん。可愛いですね。エトワールとトップだけがショー衣装で羽があり、あとはみなお芝居の衣装。そこに違和感あり。みんな芝居衣装か、または「ロミオとジュリエット」みたいに、パレード衣装で統一してほしいところ。
と、まあ不満なこの点くらいの文句なしの素敵なフィナーレでした。だから田淵さんも「ストーリーのあるルネサンスショーにしたらよかったのに」って思ったのでした。ショー2本立ていいやん!



どーでもいいこと
この原稿をほとんど書いた後、2018年10月23日(火)13時 1階5列サブセンターで見ました。近くで見てよかったのは、真風さんの男役としての凛々しい立ち姿、ホント綺麗。それはそれは感動した。しかし星風さんのカテリーナのドレスの生地やロレンツォ様の衣装の生地があまり・・・なことにも気づいてしまった。田淵センセ本当に予算が少なかったのね・・・としみじみ。宝塚は豪華が売り物なのだから、主要人物の衣装はゴージャスなのがいいなあ。せっかくのルネッサンスなんだし。この時代の衣装なら過去作品にもいっぱいあると思うの、その加工でいいから、地模様とかが入った綺麗な生地が良い。そういえば同時代作品に同じ花組の「ミケランジェロ」っていうのがあったよね、豪華な衣装。あれは芸術家としての創作上の苦悩がいっぱい入ってて(良作とは言えないが)、愛華さんが吠えながら彫刻していたのを思い出した。へんてこな話だったけど勢いがあって楽しかった。


今回、10月はかなり忙しくて、なのに出張先でで体調崩したりして、感想文が溜まってしまいました。順番に書いていきます~この寒暖差に耐えられなかった私、年齢を感じる今日頃です。



nice!(2)  コメント(2) 
共通テーマ:演劇

nice! 2

コメント 2

パクチー

えりあさま

 本当におっしゃる通りです。
 私も、ロレンツォ主役の方がいいのにと思ったのですが、
 芹香さんファンなので、ロレンツォを追いかけて観てしまったせいで偏った視方になっているのでは、と自分に自信がありませんでした。
 ロレンツォと真風さんにして、芹香さんをパッツィにして話を進めていけば、すっきりするのに。
 どうしてもレオナルドを出したければ、語り部的な扱いにして、傍から見たメディチ家を語るのもよかったかも。

 あと、ロレンツォのお洋服ですが、芹香さん曰く、クローゼットの中は全部あのお洋服らしいです。にしても、一度くらいお召し替えがあってもいいのではと思います。

 あと、私がどうしても話に乗れないのは、きっとカテリーナの設定がよくわからないせいだと思います。彼女が何を考えているのかさっぱりわからない。ロレンツォが嫌いなのはわかるけれど、いつからどういう経緯で嫌いなのかわかなないし、レオナルドを愛しているのかもわかりづらい。プログラムには、少女の心を持っていると書かれていて、田淵先生の女性観に問題があるような気がするし。
正直、初見なのに記憶が飛び飛びになって、隣で観劇していた主人に「寝てても起きてても変わりないくらい見せ場がなかったから安心しろ」と言われる始末。
星風さんは、モナ・リザというよりは、ラファエロの描く聖母に似ているので、ラファエロを主役にしてもよかったのかも。ラファエロは女たらしだから、面白くなるかもと妄想してしまいました。
「ミケランジェロ」、大鳥れいさんが病弱な設定の役で、「それだけはないわ」と思いながら観ていたのを思い出しました。

by パクチー (2018-10-26 20:42) 

えりあ

パクチー様

私も公平な視点とはいえないかもしれないけど、今特にご贔屓といえる方がいないので、全体を見てます。でもこの話は絶対にロレンツォ様が主役。おっしゃる通り、ロレンツォ真風、パッツィ芹香でも権謀術策渦巻く面白い話になっただろうに~なぜこの状況で主役がレオナルド???なんですよね。

ロレンツォ様のクローゼット情報ありがとうございます(笑)よほどあの服がお好きなのですね(大笑)でもかっこいいのだからいろんな衣装を着こなしているお姿も見たかったです。

カテリーナってロレンツォ様が嫌いだったんですか?私には好きにも嫌いにも見えず・・司教に言われて愛人になったから愛人らしくしているっていうように見えてました。レオナルドが出てきてちょっと「ロレンツォ様よりレオナルドのほうが好きなの」という感情が見えたくらいかな。カテリーナは全然主体性ないですよね。
ロレンツォ様は頭の空っぽで素直な美人が好きなのかと思ってました。カテリーナの役作りやりにくかったでしょうね>星風さん。田淵センセに問題ありに私も1票!
一般的な美女絵とは言い難いモナリザに似せるのも難しかったでしょうし、ラファエロの優美な天使ほうが似てる。ラファエロといえば、「ミケランジェロ」では春野さんがモテモテ絵師でしたね。あーなんか「ミケランジェロ」再演でも良いような気がしてきた。ガーっと吠えながら彫刻する真風さんも似合いそうだ。まどかちゃんなら病弱な令嬢OKですもん(笑)

私は前半途中からミラノ大公の宴会まで2回見て2回とも睡魔に襲われました。盛り上がらないのだもの~全然。真風さんもかっこいけど芹香さんも素敵。このコンビすごくいいなあ!って思います。「白鷺」のほうの武将&陰陽師コンビ、こんな作品作って!!!って思いました。


by えりあ (2018-10-26 21:05) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。