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宝塚花組バウ「アイラブアインシュタイン」初日 [観劇感想(宝塚)]

宝塚花組バウ「アイラブアインシュタイン」初日
2016年9月15日(木) 14:30 初日 10列上手


演出家デビュー作は、いろいろ思い入れがあって面白い・・と
思ったことがあったので、チケットが手に入る限り見に行こうと思ってる。

今回も、作者の思い入れたっぷりの作品だった。
少し詰め込みすぎで台詞が膨大だったけど、良かった。
思いは大変ストレートに伝わる。それでいて、ストーリーにひねりもある。
台詞に理系用語が多くて、ダンスや歌が少なくストレートプレイのよう。
もう少し言葉以外で表現させてくれたら、もっと宝塚らしくなると思う。
なんか・・SF小説読んでるみたいな気分でした。

瀬戸さん、水美さん、亜蓮さん、かっこよかった・・!花組男役最高!って気分。


201609花アインシュタイン.jpg

ネタバレを最小限にした(つもりな)ので、わかりにくいかも・・。
でもネタバレはあると思ってお読みください。


サイエンス・フィクションラブ・ストーリー
『アイラブアインシュタイン』
作・演出/谷 貴矢


アンドロイドと人間の対立と融和が描かれている。
けれどアンドロイドの最大の特徴である「不老」「不死」が問題になってない。
人間とアンドロイドが「感情の有無」以外差がないように描かれていて
少々不自然。普通は、不老不死のアンドロイドが人間とともに生きようとすると
片方は老いて死にゆき、片方は永遠に同じ姿で取り残される・・そこに悲劇が
生じ、葛藤が・・というパターンが多いが、本作品はそこが全く問題にならない。
アンドロイドを「移民」に読み替えたら、すとんと納得できるテーマに思え。
ヨーロッパ、元々の住民の仕事を奪い、生活を脅かす「侵入者」。対立と排斥。
だが同じ存在であるとして、和解と融和に至る物語。
本作品のアンドロイド=移民だと考えると、大変リアル社会問題提起ですなあ・・
と思いながら見ていました。


命題はとても明確。だけど、証明過程があまりに長く大変に理論的。
すっごく理系な脚本だと思いました。自明の解を導き出すための証明の物語。
ひとつひとつ論点をつぶしていくんですが、数式が見えるような気分(笑)
その演出があまりにストレートすぎて、もっと練ってほしいな~ってところ多々。
こういうところは「デビュー作なんだな」と思えてしまいました。
装置の使い方なんかは稲葉先生風でかっこよかったです。
やっぱりSF風でしたが。

宝塚的にはストーリーも台詞(脚本)も大変特殊ですが、
ダブルヒロインであることもかなり特殊。
適材適所でヒロインを変えるOSK風というのでもなく、
1幕はエルザ、2幕はミレーヴァがヒロイン。
大変大きな2番手役トーマスが、プログラムではその他に入っていて扱いが小さすぎ。
同じく3番手はヴォルフだが、こちらもその他枠。この作品での比重なら、
トーマス(水美)は1ページ、ヴォルフ(亜蓮)は半ページの大きさが必要と思う。
プログラムから、不思議でした。


アルバート(瀬戸かずや)
20世紀半ばにアンドロイドを発明して世に送り出し、人類の文明史を変えた人物。
(この時点で、かなりのパラレルワールドが展開する。20世紀中盤の、つまり
ハインラインとかアシモフとか、70年代のアメリカSF小説を読んでいる気分に)
彼は大変な天才だが、いまは世捨て人。記憶を失い、隠れ家で暮らす。
だが、亡き妻に似た感情過多のアンドロイドと過ごすことで、記憶を取り戻し・・
やがて大きな流れに巻き込まれ、世界の流れを変えることに。
という、アルバートが始まりだけど、この物語は「巻き込まれ型」で進んでいく主人公。
個人的には、『夏への扉』の世界設定を思い出しました。猫が居たら完璧?(笑)
ネタバレになるので書かないけど、アンドロイドではなく、サイボーグでは
ないかと思うのですが・・ねえトーマス博士? 
(この世界、アンドロイドとサイボーグの区別がつけられてないのが、ちょっと
不思議でしたわ。ものすっごく大きな違いだと思うのですけど。その違いで
命題に対する解が違ってくるような気がするんですが。・・・無視されてましたね)
とりあえず、本作で出てくるアルバートの人生は幸せだったのだと思いました。
ミレーヴァはかなり不本意だったでしょうけど。突っ込みだしたらかなりいろいろ
書けそうですが、宝塚歌劇だし、ファンタジーだし(SFではない)それはしない。

瀬戸さん、すごい膨大な台詞。初日だったし少々台詞を噛みそうだったけど、
芝居歌ダンス、とても良いです。(歌とダンスが少ないのが残念)
衣装も髪色もとても似あっていて、堂々と真ん中。初主演とは思えない。
もっと早く主演でもよかったのに・・と思えた落ち着きぶりでした。
そして何より感じたのが「花組っぽい!!!」。
フィナーレで黒燕尾を見たとき、「花組」と内心で絶叫しました。
花組伝統の男役、花組の香りを漂わせた男役、私の大好きな花組。
大変自分勝手な感想ですが、「花組の男役」を受け継ぐ人物だと確信。
以前から大劇場ではそう感じていましたが、今回確信した。これぞ花組男役。
言葉で書くのが大変困難ですが、私の感じる花組カラーは(未涼亜希さんに
感じていたものですが)、瀬戸さんが受け継いでいる。今回大収穫でした。


トーマス(水美舞斗)
アルバートの親友にして実は・・という大活躍の堂々2番手です。
アルバートの隠れ家をしる唯一の人間、そしてエルザという彼の亡き妻に
似たアンドロイドを連れてきて、反アンドロイドに向かう社会情勢を探り、
原因であるアンドロイドの発明者であるアルバートをたきつける人物。
アルバート以上にアルバートのことを知り、彼が忘れた部分を知ろうとする男。
すべてのカギを握る人物、と言っても過言ではない。大変大きな役。
彼の行動動機は大変共感しにくいですが、一言でいうと「シスコン」かな(笑)
その思いだけで、突っ走ったんだなあ・・と思える物語でした。

水美さん、かっこいいし、歌がうまい!役作りも的確。素晴らしい2番手。
プログラムの写真1ページにするべき活躍ですってば。
ちょっと月組の珠城さんに似た感じですね。堂々と男らしいタイプ。
私の好きなタイプの声なので、たくさん歌ってほしい方です♪


ヴォルフ(亜蓮冬馬)
反アンドロイド、アンドロイド排斥を掲げる政党の党首。
「総統」と呼ばれ、それらしい軍服に、赤い腕章をしている・・つまりナチスに
象徴される軍国主義いえ保守勢力を象徴する、大変暗喩に満ちた人物。
だが実は?という正体(いやすぐに気づいたけど:演出がストレートすぎて)
彼もアルバートの過去を握る重要人物。彼自身も忘れているけど。
なかなか素晴らしい決断をし、命題に解を与えている。超重要人物。

確実に3番手。亜蓮さんは可愛いし背が高くてスタイル抜群、歌も歌えて。
ちょっと若い頃の悠浦さんを思い出してしまう方でした。
プログラムを見ると下のほう、フィナーレの並びは下手から4番目という端。
まだまだ若手なんだわ~これから楽しみ!!「リンカーン」でも目立っていたな
とお名前を見て思い出しました。期待の新星なんですね!


エルザ(城妃美伶)
大変感情に満ちたアンドロイド。とても機械人形とは思えない・・とおもったら
彼女もなんとなくサイボーグ・・?って思えるし、そう扱っているように見えた。
(谷貴矢先生は、人の魂は脳と心臓とどちらにもあるとお考え?そこも命題?)
実際、舞台でみていると動きも話し方も、まったく人間と変わらない。
他のアンドロイド(ハンスやアンネ)とは違う。そこも伏線なんですよね。
1幕のヒロイン、大変可愛らしかったです。


ミレーヴァ(桜咲彩花)
アルバートの亡き妻、彼女が亡くなったことは事件の発端。その謎を探る物語。
1幕はずっと亡霊のように出てくる。でもアルバートと会話するし、見ていて
少々わかりにくい。ミレーヴァとエルザがそっくり!!というのが大事な大事な
キーワードだが、ごめん。全然似てないと思う。ここは分かりやすい共通点が
合った方がいいと思った・・私が鈍いだけかも知れないのでナンですけど。
トーマスのやりたいこともわかんなかった、なぜ似てないの?って。
エルザよりだいぶ老けて見えたし、雰囲気も似てないし。
可愛いのに、えらい年上感がでていた。
この物語、宝塚でなければ、アルバートとミレーヴァはもっと高齢(老齢でも)
いいくらいですよね、その方が説得力がある気がした。だからか?


ハンス(天真みつる)
アルバートの家の執事アンドロイド。大変頼りになる。
彼にしても、かなり感情があるように見えるし・・アルバートが優秀すぎるのか、
学習機能が搭載されていて、進化していくのか(どっちにしてもアルバート優秀ですね)
機械人形らしい動きや会話、それでいて人情味あふれる行動と、とても素敵でした。
さすが天真さんというか、上手いわあ!悠真さんみたい~って思いました。


ヨーゼフ(英真なおき)
アンドロイド排斥政党の人。というか黒幕。彼が仕掛け人。見てたらすぐわかる。
彼の動きを注視すれば、総統の正体も検討がつくくらいわかりやすい演出だった。
でも悪人ではないんですよね。ただの寂しがり屋さん(笑)
この物語、悪人が居ない。そこもまた練りすぎというか、練ってないというか。
彼がいないと話が進まないという点で、ヨーゼフもトーマスくらいの活躍でした。
英真さんも、緩急の演じ分けが見事で、さすがでしたね。こういう役も素敵。

今回、歌う人がみんな不安なく聞けて、とってもストレスフリー。
安心して物語に入れるので嬉しいですね。

物語は詰め込みすぎだけど、面白かったし。ただ、1幕は説明が多くて少々疲れる。
舞台設定の説明があるから仕方ないけれど、用語も難しいしね~。
1幕で「おわり」かと思いました。すごく斬新な1幕の終わり方。
休憩時間、この後続きあるの?もしかして2幕はショー?と思いましたもの。
ちゃんと2幕もひねってあり、伏線を残らず回収してくれました。
ちょっと強引なこじつけもあるような気もしますが、すっきり回収されてますので
気持ちよく帰途につけました。


あとね。用語(?)の定義がよくわからなかったところがあり気になる。
(私の知識不足なんだけど・・私だって一般的な宝塚ファンとしての知識レベルは
あると自負してるつもりなんだけどさ、わからなくて気になるところがある。)
アルバートが主題歌として(たぶん)歌っていたのですが、
「アンドロイドと人間の特異点」って…。見ているときなんか違和感があって。
彼が探していたのは、特異点ではなく融点、数学用語でなく天文用語でいえば、
ラグランジュ・ポイントではないかな~?とか思ったけど、数学用語みたいだし。
私は理系じゃないし「何でもいいや、雰囲気は分かる」って思って流しました(笑)。
アンドロイドとサイボーグの違いもそうだし。気にしてはいけないのだろうけど、
重要論点だよねえ~とか思いつつ。大声で語ってはネタバレになるし難しい。
SFはなかなか難しいなあと思いました。定義を語りすぎると面白くないし、
ただでさえ1幕は説明が多くて少々疲れたくらい。これ以上定義を論議しだしたら
たぶん寝る・・だから雰囲気で流すのが良いのだ。これはSFファンタジーなんだし、
と思いました。でも機会があれば、もう一度しっかり台詞を聞きたいですね。
SF読みまくってのはもう数十年前だし、変な疑問だしてごめん。よーわからんのよ。


というわけで、宝塚では大変珍しいSFモノでした。
雰囲気が70年代SF風で、それはとても面白かったです。
谷先生が2人目になるので、何て呼ばれてらっしゃるのでしょう?
今後に期待大ですが、一度ショーなど担当されたら、凄く面白い作品が
できるのでは?と思いました。フィナーレが凄く素敵でしたから。
フィナーレ、最高に素敵でした。私の中では超花組で盛り上がりました。
シンプルな黒燕尾の場面!瀬戸さんの魅力満載。かっこよかった・・・



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