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宝塚雪組『一夢庵風流記 前田慶次』ストーリーについて [観劇感想(宝塚)]

宝塚雪組『一夢庵風流記 前田慶次』
ストーリーについてのみ語る回


『前田慶次』を3回見て、さらに友人に解説してもらい、やっと分かりました。
初日を見た感想で、「なんで山場をこんな早くにもってくるんだろう。座りが悪いわ」
と思っていました。山場の無い脚本だなあ・・と。
しかし、今日一緒に見た友人解説により、私がクライマックスだと思っていた箇所は、
脚本的には山場ではなく、ストーリーのテーマで言う最後のクライマックスは
そのあとにあったことが判明しました。・・大野先生ごめんなさい。
私は、物語の真のテーマも山場も、舞台から全然読み取れてませんでした。
この物語は、友情(と愛)がメインテーマだったのですね。
前田家のお家騒動、陰謀術策な時代の変化のなかで懸命に生きる人々、というのは
メインテーマではなかったんですね。ここが誤解の元だったのか。
一度脚本を読んでみたい。ルサンク買って読まねば・・。

以下ネタバレ満載です。





宝塚傾奇絵巻 『一夢庵風流記 前田慶次』 ~原作 隆慶一郎『一夢庵風流記』(新潮文庫刊)~
脚本・演出/大野 拓史

というわけで。私は前田家の内紛とそれに絡む政権の動き、腹に一物の戦国武将の動き、
そこに生きる慶次を中心とする人々の生き方メインテーマだと思っていました。
だからクライマックスは、前田家をかき回し、それにより北条を動かし徳川と図って
豊臣を転覆し、前田を乗っ取る計画を実行していた雪丸が殺され、黒幕たる家康の陰謀が
秀吉に露見し、慶次による処断。そして秀吉と家康の会話の、あの場面だと信じてました。
だってねえ・・雪丸の陰のある登場の仕方、雪丸と二郎三郎の謎めいた話し方、
二郎三郎の存在感、・・要所要所に出てくる両者。それぞれ、先に含みを持たせた会話と
なにか企んでいる(腹に一物ある)表情。これは本筋の伏線だと思うでしょ~?
雪丸って(いつもながら)敵役のラスボスのような存在感と雰囲気があるから・・
二郎三郎もその貫禄から、影の!がぴったりで。そりゃどちらも私の主観ですが。
だから彼らの陰謀が(慶次によって)潰えるあの場面がクライマックスだと思ったのだ。
家康の行動、雪丸の最期、偸組の面々の最期・・そのあまりの残酷な非情さに、
慶次はそういう世界を厭い、堂々と戦うカブキモノの世界を選んだのだと。
・・・まあそこで終わったら、ラストシーンが暗すぎますか。ね。
(まあ未涼さんのファンだしねえ・・・贔屓目入ってるかもな~)

とにかく、メインテーマもストーリーもそう思っていたから、
その後の場面はイキナリ話しぶつ切り、急に年月流れすぎ!と感じていた。
もう第2幕だと思ってみていた。
特に直江と一緒に戦場に立つ場面は2年後だし、なんか唐突感があったのだな。
ラスト前向きで終わるために、無理無理に付け足したのかと。

という感じだったのですが、今日一緒に見た友人が「違うんじゃない?」と言った。
助右衛門の存在が、慶次との友情がストーリーのメインテーマだと言うのだな。
「へ?」と思って何でそう思うのか聞いてみた。(私は助右衛門は、いつもの親友で
主人公の傍に居て、主人公の心を代弁するだけの存在かと思ってたのだわ)
そしたら。
助右衛門と慶次は幼馴染で(そうだ回想シーンが結構ある、まつも含めて3人)。
ところが、政変があり慶次が前田を追われた。だが助右衛門は家老の嫡子として
新政権側=利家側に組し何も出来ず、慶次の恋人だったまつの結婚について、
阻止も出来ず(推定)、手を尽くしても(推定)慶次を見つけられず、
またどうすることも出来ず、己の無力感と慶次への罪悪感に苦しんできたのかも
しれない(推定)。だから慶次との関係は、親友とはいえかなり複雑な心境にある(はず)。
まつと慶次の関係は、家老としてみれば言語道断、しかし親友としてみれば・・という
大変に複雑な心境のはず(推定)。だから二人の接近には気を使うはず。
(しかし劇中では、助右衛門は全然気付いていないように見えるが・・鈍感?)
加奈と雪丸のことも。雪丸はかつて大事な妹をたぶらかし、家を乗っ取ろうと(つまり
自分を殺そうと?)した手ごわく憎い相手(推定)。加奈の心理を慮るとかなり複雑なはず。
加奈の様子の異変に気付き(「痩せたな」とは言ってるから)、そこから推理することも
あるはず(推定。でもここでも鈍感力を発揮していたような)
ラストシーン。助右衛門が慶次を呼び出し、切りかかる。その会話。
そこには、互いに互いのおかれた立場を知り、すべき行動を知り、互いの心理を知り、
それを思いやる友情が見える(はず)。だからこそ、一言一言に何重もの意味が込められ
想いがこめられ、重い重い会話になる(はず)。
「二人が会う」と聞いて走り出すまつも同じ。彼らと同じ思いと感情を持っているから、
慶次を殺さなければならない助右衛門と殺されるつもりの慶次を止めるために走る。
そして二人の男のために、原因である「あの女と別れるといえ」と、慶次に言うのだな。
二人は互いを思いやり、別れる。そこは男の友情に感じ入り、号泣必至の場面(推定)。
友情に熱い慶次は、その後直江との約束を守るために生き抜き、直江のために
戦場に駆けつける・・そういう男なのだというラストシーンだ。
ここがこの作品のテーマに沿ったクライマックスだと言うのだな。

言われてみたら、台詞がしっくりくる。まつと慶次の行動も理解できた。
(慶次と助右衛門の会話、慶次だけえらい深刻やな・・と思ってたのだ)
そうか・・そうだったのか!慶次と助右衛門の友情が太いテーマだったのか。
陰謀は、揺るがぬ友情を際立たせるための、横糸に過ぎなかったのか。

友人に指摘され、なんでそれに気付かなかったかも分かった。
早霧さんのお芝居が、あっさりしすぎてるように思うの・・・。
上記のメインテーマ解説も「かなり複雑な心境のはず」と状況から推理し、
助右衛門の行動に(推定)とか足していかないと全然分からないくらい、
助右衛門からはそういう感情が感じられなかった。(私は)
例えば、聚楽第で慶次を呼び出す際も、助右衛門が彼の名を呼ぶのだけど、
葛藤が全く無い。あとでまつが「あの場に慶次が出ることがどれほどの覚悟か
知らず、ひどいことをした」と謝りますが、助右衛門も分かってなかった?
まつに「慶次の返事どうだった?」と聞く場面もそうですが、屈託がないよーな。
(まつ同様)全く分かってないんじゃない?と言うほど葛藤が無い。
秀吉に2回目呼び出せと言われるときも同じ。
もっと「慶次に何かあるかも」とか慶次の覚悟を考えて心配してあげて~とか思う。
と言う感じで、あまり慶次への助右衛門の友情が感じられなかったのが
メインテーマが分かりにくかった原因ではないかと思い当たった。
(全部主観なんで分かってる人にとっては「何言ってるの、バカモンが!」ですね。大失礼)
多分さ、早霧さんの台詞が妙に歌舞伎調というか、力みがあって聞き取りにくいのが
大きいと思う。声の調子から、現在の助右衛門の心理が判断できないの~。
更に私の耳と早霧さんの声の相性が良くないのか、早霧さんの台詞の半分くらいしか
伝わってこない(歌もそうだけど、抑揚のつけ方が私と波長が合わないのかも。)
慶次と助右衛門の友情がメインの縦糸テーマだったら、このあたりは大変重要な
はず。次に観るときにしっかりみたいと思うけど。助右衛門はものすごく重要で
複雑な重い役だったのですね・・彼の表情を見ていたら話が分かるほどの。
さすが2番手の役。

と言う友人の解説を聞いて、やっと脚本本来のテーマと山場を知ったのだった・・
まあ友人もかなり推測を話していた。「そーは見えないとこもあったけど、台詞聞いてると、
脚本書いた人はそう思って書いたんじゃないかな、と思う。」と。
これが正解と自信を持って言えるわけじゃないけど、確かに台詞と
他の人物(慶次やまつ)の行動をみていると、正解に思える。
後の場面、蛇足じゃなかったんだ。。。。

スミマセン、正直に言うと未涼さん贔屓です。だからそっち観てしまいます。
雪丸の表情に仕草にいろいろ語られていることを読めてしまいます。
彼と加奈のこと、影に生まれた身だけど表に出たいと言う切望、そして絶望。
だからこそ世の中をひっくり返すしかないと言う希望。たとえ武将としては
卑怯な手段(遠くから銃撃)をしてでも目的を達成したかったこと、などなど。
雪丸の思いと、過去の人生が見えました。そうして生きていて、最期に信じていた人に
裏切られ、というより最後の希望が断ち切られたとき、家康の刀をよける気も
無くしたのだと感じました。あれほど堂々と自信に満ちていた人が、取り乱した一瞬。
どれほど「それ」に掛けていたかを感じて、彼が哀れで胸が苦しくなります。
慶次もそれを知って、凄く辛そうなやりきれない表情をしてます。
そして言い切る。自分は違う!と。
だからここがクライマックスだと思ったのでした・・。

早霧さんファンの方は、ちゃんとテーマが分かるんだろうな~と。
助右衛門の表情見てたら分かるのかもしれない。見てた積もりだけど、
でも私には分からなかった。ああああショック。
うん助右衛門が未涼さんなら分かったかも?ファンゆえ(笑)。

こんな感じで、一回しか見なかったら、いえ誰にも思い入れの無い友人と一緒に
見に行かなかったら、テーマとクライマックスが分からないままだったでしょう。
ひとつ賢くなりました。


ここで個々の人物について語りたいところですが、あまりに長いので、
別にします。で、登場人物が多すぎてまだ書けてません・・・途中なんです。
大野先生こだわりを書いていくと、人物名だけで3ページ行ったよオイ!
大野先生の心意気にぜひお付き合いしたいので、また後日。

本当に7月2週目までは忙しいんですよ~何でこの時期に退団公演を(泣)




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コメント 2

meg

詳しく書いてくださってありがとうございます!
兵庫で3回、今日東京2回目を観劇し
未涼さんの哀しさしか解りませんでした。(涙)
こちらを拝読し、今日は眠れそうです。

by meg (2014-08-03 21:15) 

えりあ

megさま

コメントありがとうございます。
これが正解というわけではないんですが、御参考になれば嬉しいです。
ゆっくりお休み下さい(笑)
私もこの説を導き出して、やっとすっきりしました。

by えりあ (2014-08-03 23:59) 

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