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宝塚星組「眠らない男・ナポレオン~愛と栄光の涯に」 [観劇感想(宝塚)]

宝塚星組「眠らない男・ナポレオン~愛と栄光の涯に」
2014年1月23日(木)11時 2階12列上手


小池修一郎作品はやはり見ておかねば!と思い、いろいろ片付いたので、
早速行ってきました。

さすが小池修一郎先生、素晴らしい演出だったわ。
あの盛り上がる演出は大好き。登場人物も多くて、みな必要で、
ストーリー上も無理なく展開していく。ほんっと演出は素晴らしい。
話題の曲・・まあ曲も良かったけど、ちょっとメロドラマ風なのが残念。
タイトルが『ナポレオン』ならもっと勇壮な曲も欲しかったなあ。
なんか『ロミオとジュリエット』風で甘い旋律の曲が多くて。
曲調全体が『ジョセフィーヌ』って恋愛モノならぴったりと言う感じ。
あと!歌のレベル高くてびっくり!!(失礼)と思ったら、ほとんど専科・・?
タレーランとバラス、最高だった。ストーリー進行役も分かりやすかったし。
(あ・・お芝居もやっぱり専科の効力大きい?)
まあしかしナポレオンとジョセフィーヌは宛書ですね。すばらしい宛書。
他のトップコンビでは無理!と思わせた。見に行く価値ありですわ。





ル・スペクタクル・ミュージカル
『眠らない男・ナポレオン ―愛と栄光の涯(はて)に― 』 作演出 小池修一郎



上でも書きましたが、「ナポレオン」という歴史上誰もが知ってる成り上がり
英雄の一代記にしては、力強い男っぽさに欠けたのが残念なところ。
宝塚ではあるまじきことですが、一般的なミュージカルなら「ジョセフィーヌ」
がタイトルロールで、ジョセフィーヌの一代記にしたほうが似合う感じの話と曲。
宝塚だから恋愛は外せない!ってことなのかもしれないけど、
「ナポレオン~眠らない男」というタイトル(とあらすじ)からすると、
田舎者の一兵卒が時代に乗って成りあがる栄光と、それが脆く砕けも失脚するとこまで
男っぽく力強く描いて欲しい気がする(好みの問題かもしれないけどさ)。
なのに今回のお話はジョセフィーヌとの関係がメインにおかれているから、
どうしても女々しく感じられる・・嫁姑や跡取の家庭問題とかでてくるしなあ(笑)
どちらかというと、ジョセフィーヌが主役で、革命で牢獄にいたところから、
無事開放され政府高官の愛人となり、さらには嫌々英雄の愛人とされて・・
それでも激しい求愛に彼を見直し、本気で愛しだしたたところに捨てられ、
それでも最後まで見届け愛した・・
という恋愛ストーリーになってたような気がする。曲が全体に甘ったるいし。
小池先生、本当はジョセフィーヌ主役にしたかった?まあもともと一般的な
ミュージカルは女性が主人公の方が多いようだし・・ね。
作曲担当のプレスギュルビュック氏もそんな感覚で作曲したのかなあ~とか。
とりあえず、ジョセフィーヌ側のストーリーが多すぎて、英雄ナポレオンの
描き方がかなり中途半端な感じがしました。
次に東宝で上演するなら、ジョセフィーヌ主役に書き直したほうがいいかも・・
とまで思いました(ナポレオンの場面を少々削るだけですぐ出来そう)。
演出がいいから飽きないし、壮大な恋愛モノ(嫁姑家族問題入り)としてみれば
なかなか面白い作品でした。



では個別に。


ナポレオン(柚希) 
似合う。泥臭い田舎者の成り上がり感が最高。決して育ちが良くなく粗野で単純な
ところがばっちり嵌ってて、本当にナポレオン!って感じ(盛大に褒めてます)。
小池先生は、礼音さん見てて「ナポレオンだ!」と思ったのかしら?ってくらい。
礼音さんは、王子様とか貴族の若様とかあまり高貴な出自よりも、もっと泥臭くて
力で成り上がる系の、平民ながら国一番の剣士とか似合うようなイメージ(私見よ)。
だから今回はぴったり。しかも女にも惚れたら強引に押しの一手で、駆け引きなど
まるで無しの、フランス男にあるまじき(コルシカはフランス男じゃないのか?)
直情型の単純男。もうその情熱とまっすぐさがぴったりでさ。
作中、バツ一年上二人の子持ち女との結婚に反対する母に対し、ジョセフィーヌが
「あのひとはコルシカ男なんだから、母親を取るわよっ」と切り捨てられるのも
納得する(笑)なのに、言葉を濁して妻を捨てなかったところに、ジョセフィーヌも
驚いて「あらこの男本気なの?」と見直したのかと思ったりした(笑)
今回ものっすごくはまり役、これは代表作では?だからこそ、英雄ナポレオンの
一代記だったらもっと良かったのになあ~と思ってしまいました。
この作品、大河ドラマだと思って見に行ったら、朝の連続テレビ小説だった。

柚希さんは軍服も似合うし粗野でりりしいところが素敵。歌も素敵。
星ではもともと柚希さんの歌はなかなか聞き応えがあって好き。
(でも他が・・辛かった。でも今回は凄く良かった。ストレスほぼ無し)


ジョセフィーヌ(夢咲) 
こちらも野育ち(植民地出身)で品がないところがぴったり嵌る(褒めてる)。
女の武器を十分に知り尽くして駆使する計算高くて可愛い愚かな「女」。
素晴らしいはまり役だ!と思う。ジョセフィーヌそのままのイメージ。
あとは歌がもうちょっと上手ければ・・ヒロインなので歌が多くてやや辛い。

さっきも書いたように、私にはこのお話ジョセフィーヌが主役でも可笑しくない
と思えるほど。だから当然彼女の場面が多い。彼女の過去や、心情を描いた場面に
多くの時間を割いている。そしてミュージカルなので、歌で表現する・・お願い
もう少し頑張ってください(ってもう遅いか。妹さんもこれだけは同じだけど、
裏声地声の切り替えが聞きづらいんだよねえ・・)
ビジュアルも役作りも本当にぴったり。これも夢咲さんの代表作間違いなし!


タレーラン(北翔) 
全ての黒幕はタレーラン。全ては彼のたくらみだったのか?と思わせる。
要所要所に出てきて、裏のある笑顔で爽やかにナポレオンに告げていく・・
ナポレオンは自覚のないまま彼の思い通りに動かされ、手のひらで踊る。
絶品だよ、北翔さん。こういう抑えた黒っぽい役のほうが素敵。
明るい役とかだと「北翔さん」がやり過ぎてしまうから(と思うの)、逆に
こういう抑えた役だと、素晴らしいと思う。
今回は間違いなく影の主役・黒幕ね。

歌も絶品ながら、あの腹黒い笑顔。今まで見た北翔さんで一番好きだわ。


バラス(一樹) 
もうひとりの影の2番手(笑)いいねえ、フランスの政治家って感じで。
あの大人の余裕溢れるフランス男、清濁併せ持つ貫禄の政治家っぷり、
腹黒さなんかも素晴らしい。歌もいいし、お芝居も素敵。
この芝居、専科さんでかなりしっかり締めてるなあ。


<ナポレオンの部下>
マルモン(紅) 
常識人の部下その1。学生時代からの友達がそのまま年を取った感じ。
今回は化粧でわざと田舎者っぽく見せているのか、ダサく野暮ったく見えて(大失礼?)
一番の側近なのに昇進させてもらえない(=ナポレオンから将の器でないと思われてる)
という人物そのまま。人はいいんだけどねえ・・なんか泥臭いわあという人物。
部下が並ぶ場面でも、あとから来たミュラの方が粋で精鋭らしく見えるもの。
だからこそ、老マルモンが語り手になるんだよね。ずっと傍にいて、でも彼の栄光には
関与できず、没落には手を貸してしまい・・次の時代を生き残ったから。
ずっとずっとナポレオンを見てきたから、語り部に相応しい。
ただ役としては、後日ナポレオンの回想を語る人物に相応しいと言うことがわかる程度に、
ナポレオンの傍にいるというただそれだけのような・・特に何もしない印象。
あ!ラスト裏切ったか。でも既に追い詰められてたので、彼の所為で!という強烈な
裏切り度も低い気がする。まあ何とうか、特に印象に残らない人物かも。

今回の紅さん、最初分からなかった。こんな顔だっけ?もっとすっきりしたお顔だと
思っていましたから、びっくり。役作りお顔からなんですね。すごいや。
人のよい部下役はぴったり(2番手役としては、まあなんていうか・・後日老マルモンに
成る人物なら2番手といえる。でもタレーランの方が2番手に相応しい役に見えた>私)
歌は、やはり2番手なのでソロ有。でもでも・・そういえば「オーシャンズ11」の時
夢咲さんと紅さんの歌・・と思ったのを思い出した。やっぱりこの組はそうなんだ・・)
今回極力ソロを抑えてもらってて良かった(大失礼)。


ミュラ(真風) 
ナポレオンの部下その2。キラキラした目立つ部下。マルモンよりもミュラを連れて
いるほうが、ナポレオンの格が上がりそうな部下(説明が分かりにくくてスミマセン)
容姿も貴族的で、女にもモテて、きっちりナポレオンの妹をモノにしている。
ナポレオンが危なくなるとさっさと離れるし、空気を読むのも上手い。
でもそういう俗物ぽさが魅力の男だった。常に一緒に居るのにマルモンと対照的ね。

真風さん、歌が良くなった?いえ歌の量が少なかったのかもしれませんが・・。
今回あまり気にならなかったです(失礼な言い方でスミマセン)。
ミュラもこれといって何をするような役ではなかったですが、マルモンとの対比で
面白かったです。


ブリエンヌ(壱城
文官の部下(かな?)何かしてた印象がないのですが、すっごく綺麗なのは分かった。


<ナポレオン親族>
兄ジョセフ(十輝
ナポレオンの兄ですが、あまり兄らしくない。木偶の坊って言っていいかと。
ナポレオンの一番の味方になってもよさそうなのに、部下1部下2レベルのことしか
してないし、彼が一番力を発揮できるはずの弟嫁と母の問題も、何もしてやらない・・。
賑やかしか?ってくらい、何もしなかった印象。もっと書き込んであげればいいのに。
(家庭ドラマなんだったら出番作れるというか作ってあげたいわ)
綺麗なんだけどね。


母レティツィア(美穂
ナポレオンの強烈な母。信心深く、家族を大切にするコルシカ女の心意気が凄く感じられ、
素晴らしかった。また怖いくらい迫力があってね、ジョセフィーヌほどしたたかな女じゃ
なかったら、泣いて逃げて帰るよって程。筋の通った母を歌で表現されてましたが、
凄い迫力。さすが美穂さんという感じでした。


妹カロリーヌ・ミュラ夫人(早乙女
可愛いほうの妹、というと語弊がありますが、見た感じ大人しそうで可愛い雰囲気。
さすがミュラ、すばやくこっち(扱い簡単な方)に目をつけるんだと感心した。
結婚後は夫のために、兄に夫を売り込んでました。ミュラ、凄いぞ!


妹ポーリーヌ(妃海
気が強くて恋多き女という感じ。南の女の厚かましさというか気の強さが出てる。
そりゃ田舎青年のマルモンの手には負えないよ・・と一目見て分かった。
どうやら金持ちと結婚したらしいし、なかなか計算高くて、自分の手で幸せを掴みそうな
意志の強い女性ですね。


弟リュシアン(如月
議会の議長をしてましたっけ。母のほかは彼だけが、ナポレオンの戴冠式を欠席。
筋が通ってますね。兄の栄光に寄りかからなかったしっかりした印象。真面目な感じの
小役人という雰囲気もありますが、レティッツィアにはこの息子が居てよかったです。


弟ルイ(夏樹) 
思いっきり兄の栄光にのおこぼれに預かろうとしている俗物君。でも可愛いんだ。
いつの間にかジョセフィーヌの娘オルタンスと結婚し、すばやく息子を得て、
「兄上には甥、皇后には孫。帝国の後継者い相応しい」と売り込むちゃっかりさん。
まったく頼りに成らない弟ですが、憎めないというか要領がいいというか・・
末っ子ですかね?


<ジョセフィーヌ関係>
娘オルタンス(音波
前の夫との娘。普通の小貴族の娘さんと言う感じの可愛らしいお嬢さん。
強い母の影に隠れがちですが、ルイの妻となってからはなかなか強気。
母を支え、弟を励まし、夫を炊きつけ、と結構活躍してます。最後まで出てくるし。
実は割りと有能なのかもしれない。地味に活躍してました。


息子ウジェーヌ(礼
前の夫との息子だが、父が処刑されたのであとを継ぐ家がないんだね。
年齢設定がよく分からないが(何時までもママとか言ってるし)かなり若い感じ。
しかし思春期の青年にしては、母親とその若い夫との関係に葛藤ないみたいね。素直?
すっごい長いソロがあって、歌はさすが。絶品だ。今後も星組の歌を担って欲しい。
お顔は私の好みではないけど、柚希さんと似てるし星ではこういう感じがいいんだな。
とにかく歌は良かった!最高だ!


愛人イポリット(十碧) 
美形の優男で愛人らしい愛人。愛人とかヒモ以外の職業が考えられない(いいすぎ?)
ジョセフィーヌは本当はこういうのがタイプなのかな。バラスはもちろん、ナポレオンと
違いすぎ・・・。後で金を無心に来るあたり、なかなか裏表ありそうな男だけどね。


<外国>
メッテルニッヒ(美城
オーストリアの宰相ですが、フランスの外交官タレーランと組んで、物語の黒幕だ。
怖いわ~この二人にかかったら、オーストリア皇帝もロシア皇帝も赤子って感じよ。
年を重ねた政治家・外交官の怖さがよく分かった。笑顔で腹黒くて重厚なの。さすがだわ。


フランツ1世(一樹) 
えっと、ちょっと老けすぎに思えた。あのマリー・ルイーズの父はもっと若いはず・・
というイメージだったし、一樹さんならメッテルニッヒに手玉に取られそうに見えず。
もっと若めの御しやすそうな皇帝がよかったなあ~


マリー・ルイーズ皇女(綺咲) 
可愛い!素晴らしく愛らしいお姫様。品があるし可愛らしいし言うこと無し。
ハプスブルクの箱入りお姫様というイメージそのまま。ナポレオンもそりゃ扱いに
戸惑っただろうと思える。彼のタイプではなさそうだし、困ったろうね。
出番はほぼ1場面ですが、かなり印象に残る可愛らしさでした。


ロシア皇帝アレクサンドル1世(麻央) 
美しい皇帝陛下ですわ。皇帝としての威厳を出そうとしてたけど、若いのよね。
「会議は踊る」のあの皇帝だもの、若くてカッコよかったんでだろうなあ~と
要らぬことを思いながら見てました。



<語り手>
グランマルモン(英真) 
話は分かりやすいし、人のよさと苦労がうかがい知れる、普通のおじいさん。
いいねえ、彼の話を聞いていればストーリーがよく分かるわ。
(小池先生のこういう気配りも好きだ。分かりやすいもん)
あの若いころのヘタレ部下とは思えない(笑)。
帝政後も生き延びたみたいだけど苦労したのかな。あまり要領よくなさそうだもんな。
若き日の上官がナポレオンじゃなければ、そこそこでまで勤めあげ、平凡な娘と結婚し、
平凡な家庭を持って平凡に暮らしたっぽい。彼もナポレオンに人生を狂わされた人なんだ。
グランマルモン、彼を見ているだけで、ナポレオン後の人生がうかがえ、彼の傍にいた
時代への複雑な思いが伝わり・・凄く良かったです。歌もいいし、言うこと無しだ。


ナポレオン2世(天寿) 
可愛い貴公子。美形で気品があって母親似ですね。あのナポレオンの息子とは思えない。
彼と老マルモンの話で全てが回想されていくのですが、解説が老若二人いるので、とても
分かりやすかったです。


という感じです。壮大なラブロマンスと思えば堪能できます。英雄の一代記と思って
みると違和感がありますが、気にしなければOK. 登場人物は多く、多くの人に
見せ場があり、主役以下ほとんどが役に嵌っていて、見ごたえがある。
さらには歌が素晴らしい!私は星組公演は歌が・・と「ノバボサノバ」のトラウマが
ありましたが、今回は全然!!逆に歌にストレスがとても少なかった(皆無とはいえぬが)。
柚希さん、北翔さん、一樹さん、英真さん、美穂さん、礼さん・・良かったわ。
お芝居も、星組は役に役者が透けて見えて荒いからあまり好きじゃなかったんですが、
今回は素晴らしい宛書が嵌っていて、大満足。星組を見直しました(失礼だけど本当に)。
次からも上手い人が歌ってくれる宛書なら見に行こうと思いました。



フランス史の勉強に使える宝塚?!
この作品でさ、「宝塚フランス史」(大劇場)シリーズできるなあと思い書いてみた。
1)「ベルサイユのばら」・・王政の最後から革命、革命軍側の味方
2)「スカーレット・ピンパーネル」・・革命後の混乱と反動、旧貴族側の味方
3)「ナポレオン」・・革命後の混乱から帝政へ
4)「モンテ・クリスト伯」・・帝政後の王政復古、政治混乱時代の市民生活(ブルジョワ編)
と時代が続くのだな。宝塚じゃないけど、このあとが
5)「レ・ミゼラブル」・・・さらに続く混乱時代の市民生活(底辺編)
こんな感じかな~とか。これで全部カバーできた(様な気がする)
レミゼも入れて、1年間5組連続上演してみてはどうだろう?
フランス革命から始まる面倒でややこしいフランス史があっという間に分かりますって?
いや一番ややこしい(2)のフランスサイドの話が抜けてるな。
「聖戦ヴァンデ」(藤本ひとみ)入れて欲しいなあ・・そしたら完璧かも。
なんてフランス贔屓。日本史必修になるし、ぜひ日本史でもやってほしいわ(笑)

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