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新歌舞伎座「浪花阿呆烏」 [観劇感想(その他)]


新歌舞伎座「浪花阿呆烏」
2013年9月10日(火)11:30 3階後ろのほう



新歌舞伎座の8月公演「新水滸伝」と同じ脚本演出と聞いて、出かけました。
確かに同じ演出家だ!ストーリーも良いし、演出も素敵。舞台装置が綺麗だし、
舞台機構をとても効率よく使ってて、高さと奥行きがでてていいわあ。
ついでにポスターもカッコいいんですよね!(ちょっと「新感線」風)
江戸時代の話だけど、昭和と思えばちょうどいい感じ?共感しやすいストーリーだった。

出演者で言うと、
月乃助さん達大人チームと、早乙女太一さん率いる若者チームがあるんだけど
どっちもビジュアルは凄くかっこよかった。
所作の美しさは月乃助さんが際立つ。殺陣の美しさ優雅さは早乙女さん圧巻。
台詞の通りは大人チームの圧勝ですね、怒鳴らないのもあるけど、聞きやすい。
若者(特に早乙女さん)は何言ってるか分からないところが多々あった。
ま、私が大人チームの年齢だからかもしれません。でも新歌舞伎座のお客さんは
私でも若い方なんだ・・・。

鏡を多用した演出で、3階に居ても花道や客席芝居が分かるのが嬉しい。
この演出家さんの心配りは嬉しい。宙乗りもあったし、3階でも大満足。


ネタバレあります。



元禄チャリンコ無頼衆「浪花阿呆烏」 脚本演出 横内謙介


昭和の暴走族いえ、浪花戦隊アホガラスレンジャーですか?(笑)
5人揃ってのところがまさに往年の戦隊モノを思い出させる。5人個性が際立ち、
同じキャラがいないのがいいね。それぞれの役割も背景もきっちりしていて、
脚本もいいし、役者の人物造詣も良い。戦隊モノにありがちな「紅一点」が居ないのも
清清しくてヨロシイ。やはり男が戦うのがよいわ~女が一人混じるのは余り好かぬ。
そして大人チーム。どんでん返しの連続ですが、結構読めてしまう。
(だって劇場前の幟、月乃助様と太一さんのツートップだもん・・分かるって)
それでも、どこで真実を明かすのかな~?と思いながら、わくわく見られる。
最後まで、楽しかった。この後も想像できて、奥が深い。いいお話だった。


<大人チーム>

お奉行様 朝山彦太郎(市川月乃助
正義のお奉行様。美しく調えた月代に、武士の正装・上下姿も長袴も素晴らしく端正。
着物姿が決まっているのと、所作が美しいのが際立った。
それがまた浪花の愚連隊(古い)の品のよろしくない言動との対比で、
「良いおうちに生まれ育った正義感のある聡明な殿様」という雰囲気をかもし出す。
だから展開が読めてしまう一面もあるけど(笑)、それでもこの殿様はこれでいい。
一回は裏切られた小田切さん達が、奉行様を許しまた信頼するのが理解できる。
この名場面で「ええ?こいつ信用できないよ」と思わせたら、説得力なくなるものね。
朝山様、素晴らしかったですわ。そして私には、朝山さまの台詞は通りが良くて、
今回のメンバーの中では歌舞伎風だったのかもしれないけど、それが気にかかることは
無く、大変聞き取りやすい明瞭な台詞でした。


同心 小田切直行(上杉祥三
この方が影の主役といってもいい。小田切さんが居なかったら、話は始まらない。
この同心の動きが、ストーリーを進めているような気がした。彼が市右衛門をスカウトし、
文七をスカウトすることから、話が始まる。彼の思い「浪花の都の大掃除」から全てが
始まるのだ。そしてその大掃除に、生きる目的を見つけられずに若い力をもてあます
不良(古い)を使う。使うというと偉そうですが、そうではなく、彼らの力を見ぬき、
彼らの力を正しく使う方法を教えてあげ、真っ当に生きていく術を与えてあげている。
ほんっとにいい人だ。その思いに感じ入った市右衛門が文七を説得し、いやいやながら
従ううちに、阿呆烏メンバーも小田切の意図した通りに動いていく・・。
お奉行様の裏切りにあうけど、奉行を信じられる男と見切った小田切さんは凄い。
あんだけの目にあったら、普通再度信頼するなんて出来ないよ。器が大きいんだ。
下々の若者の思いも、上の方の方の思いも理解し、自分に出来るやり方で行動する
小田切さんは、一番男らしくカッコいい。(見た目はしょぼくれたオジサンなんだが・・
いや役者さんが、ではなく役作り/設定がそうなってる)
凄いお芝居でした!!


与力 吉岡様(高木トモユキ
小田切さんの上司かな。小田切さんを自由にさせてあげている度量を持つ若い与力。
しかし小田切さんほどの思いはなさそう。引きずられている幹事もするけど、
長いものに撒かれたりしてないところがエライ。凛々しくて(ちょっと単純っぽいけど)
今後、お奉行さまの戦力になりそう。


<若者チーム「浪花戦隊アホガラスレンジャー」>

リーダー 赤: 文七(早乙女太一
不良。それも昭和の、1980年代の不良。尾崎豊とか思い出すわ~・・・と思った。
「新発明の乗り物チャリンコ」を駆使して街中を暴走する悪党ですが、チャリの効果音、
なぜ爆音?(笑)どうみても、80年代の暴走族、校舎の窓ガラス割ってた時代のさ。
「3年B組金八先生」の時代よ(大笑)。
しかしあの妖艶な和服美女の早乙女太一さん、こんなに品無く柄悪くなれるんだね~。
最初わからなかったよ、普通のバカモンに見えた。宙乗りもあったし、チャリンコも
似合ってたし(?)等身大の役というのか、こういうのも面白ですね。
母親への屈折した思いとか、女への憎しみとか複雑な感情を、もう少し見たかった。
場面はあったけど、よく伝わらない・・のは3階席だったからかも知れません。
戦隊モノのリーダーの割には、屈折してましたね。
声!姿は美しい人なのだが、声はいまひとつ・・な人ですな。今までいろいろ見ましたが、
どうも台詞声が悪いような。今回は特に怒鳴る台詞が多かったので、「何?なんて言った?」
となる事が多々あり、なかなか聞き取りにくかった。隣のオバアチャンたちも
大声で「ええ?なんて」「いま●●っていいよったんよ」と話し合っていた・・・(迷惑)


謀 紫:同心手先 市右衛門(載寧龍二
理不尽な理由で家が没落し、難波でぐれてた繊細な不良(笑)。カッコいいです。
小田切様の真心で立ち直り、阿呆烏と付き合ううちにメンバー入り。
かなり鈍感ですが、いい奴です。彼の心情を見せる場面も多く、なかなかに美味しい。
ツートップ公演ですが、2.5番手くらいにはつけている感じですね。
見た目は一番好みのタイプ。鈍感だったり傷つきやすかったりと、繊細な青年ですね。
阿呆烏に入ったとたん、ちゃんと銀色に髪を染めてきたところに彼の美学を感じる。
この時代で言うカブキモノです。チャリンコもシンプルでクールな装備(笑)
まあ紫がお似合い。普通の戦隊モノだとブルータイプですね>主人公と敵対する感じ。


ケンカ一番 黄色:庄九郎(田中仁
気は優しくて力持ち、ケンカは撒け知らず。心根は優しいのに、上手く表現できず。
そういうタイプ。人情家なんですよね~見知らぬおばあさんに感謝されたことが、
彼の人生を変えます。そのくらい純情。小田切さんと出会って一番幸せになった人。
まさに黄色タイプ。素敵でした。


突撃アイドル 青:平兵衛(法月康平
病弱な不良さん。メンバーのなかでは、一番弟格かな。みんなに可愛がられ守られてる。
本人はそれが嫌で突っ張って「突撃隊長」といっているけど、いやいや可愛い。
5人中、唯一お銀という健康的で超頼りがいのある恋人がいる。何気に美味しい人生だ。
作中でも文七が言ってるが、彼は文七に会わなかったら、もっと全うな人生を送って
居たような気がする。保護欲をそそる可愛い青年でしたね。
阿呆烏5人、いろんなイケメンが揃ってて大変楽しい。


メカニック担当 緑 任右衛門(小早川俊輔
5人の中では一番偉大なのに、一番目立ってなかった人。チャリンコを発明したなんて
そりゃ凄いことなんでは? 奉行所のメカニック(?)は彼の才能にびっくりしただろう。
彼は武闘派ではなく開発研究・ロジスティックに回ったほうが評価が高そうに見える。
もちろん闘えるメンバーではあるが、それ以上に才能を発揮できる場所がありそう。
ということで、彼も文七と幼馴染でなかったら、阿呆烏には入ってなかっただろう。

ラストシーン、全員が処刑されたことになっているが、そこはほのめかしなので、
「処刑したことにして実は・・」はありそう。そうなったとき、一番重用されるのは
間違いなく任右衛門でしょう。違う名前で後世に残ってたりして。
(ちなみに、文七は海外とかに渡りそう。フィリピンとかタイ? 平兵衛はお銀と一緒に
(実は養ってもらいながら)気候のいいところで農業とか? 庄九郎はそのまま町の
大工かなんかになって町役人の手下になって、町の人に慕われてそう。
市右衛門はそのまま手先として頑張ってる。紅子のところに通いつつ。そんな感じ。)



ヒロインお露(早織
市右衛門の妹。没落した武士の娘らしく、きりりとしてました。また病気の母を養うため、
繊細にもぐれてしまう頼りにならない兄に内緒で、手っ取り早くお金を稼いだり。
兄が立ち直るときっぱり足を洗うあたりも、さすがです。きりっとした娘さんでした。
で、意外と悩みがちな文七とは上手くいくような感じですね。


マダム 紅子(國元なつき
阿附烏の後方支援女子隊隊長という感じ。粋で気風の良いお姐さん。
文七のこと本気で好きだったんだろうなあ・・と思わせる言動有。でも文七の気持ちを
汲んで自分は身を引き、お露に譲ってやる。そして落ち込む兄・市右衛門まで慰めてやる。
なんて心の広い姐さんだ。市右衛門と上手く行きそうだが、姐さんの苦労は減らないな(笑)先ほど書いた「実は・・」な結末だったら、影ながら彼らを支援してやるんだろろう。
美人で頼りに成る姐さんでした。


お銀(江原由夏
どこに居ても一目でわかる体型ですね。最初はお笑いキャラかと思ったんですが(失礼)
実は大変シリアスな人物。真面目に恋愛場面があるし、成就するし、何気に男を立て、
影から男を指させるいい娘じゃないか。


<悪役?>

野田藤一家の親分(犬養源治
悪役ですが、出番が少ない。まあこの話、1幕は「阿呆烏が不良から正義の味方になるまで」
なので、悪と戦うのはほぼ2幕から。彼は2幕では結構頑張ってますが、出番が少なく
背景が書かれていないのが悔しいところ。いや別に味方するわけじゃないんですが、
私、悪役に悪の魅力があるのが好きなんです。いっそ、こちらも若いイケメンだったら・・
話が終わらんな(笑)
やくざのオジサマ、一目でわかる時代劇の町の悪者って感じで、素敵でしたわ。


大阪城代
ラスボスのはずなんだが・・ええ?という一瞬の出番で、しかも一瞬でヤラレタ。
なんか可哀想というか、もっと出番を!! ひとり歌舞伎な雰囲気の化粧と衣装で
浮いてるし、彼がもうちょっと出番があれば、お奉行様のほうのお話が増えたかな?
と思うのですが。まあ3時間でいくつもお話詰め込むと大変だから、こちらは
この程度なのかしら。お奉行さま&上司(幕閣の大物?)と大阪城代(黒幕)との
暗闘も見たかったです。ま、ちょっと贅沢言いすぎかな。
登場人物に無駄な人物が居ないのが、いいですもんね。いろいろサイドストーリーも
考えられるくらい!いい脚本だわ。


というわけで、楽しかった。
楽屋待ち若い人が多いですね。見る前に、何度か若手のイケメンさんの楽屋出に
遭遇しました。「おお、カッコいいなあ」と思ってたので、舞台を見て納得。
またまたお会いしたいものですわ。(通り道だから)

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