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映画「山本五十六」 [映画鑑賞]

2011年12月27日(火)
映画「山本五十六」
なんばパークスシネマ


日本の戦争映画で、玉木さんが出演と聞いて食指が動きました(笑)
見に行って正解。とても良かった。
太平洋戦争を扱った日本映画は、絶対に暗い結末が待っているのだけれど(まあ当然か)
時折やりきれなさに胸が痛み、涙がこぼれそうになりならが、男の世界を堪能しました。
ほんとに登場人物の9割が日本人男性。
女性は日本の市井を描写する場面4人くらいか?
アメリカ軍と交戦する場面も多いのに、アメリカ人は1名も映らないという徹底振り。
端から端まで男の世界。それも明治の男!でもたまらなくストイックで美しい。
大変、男の美しさ(容姿のみならず)を堪能してきました。

しかし・・・本作におけるマスコミ(大新聞)の描写を見る限り(重要テーマ)、
いわゆるTV民放(マスコミ)が製作じゃないよな・・と思ったが、
エンドロール見るとやはり協力が「自衛隊」や「NHK」であった。よし!
ちょっとばかり『坂の上の雲』風味があったが(それも感じてた^^;)
真摯で丁寧なつくりが大変良かった。優れた脚本演出だと思う。
当然、俳優さんも大変実力があった・・・ラストの歌は要らんかったかも(^^;)

大変感動して帰宅しました。この映画、全米で公開すべし!!

以下、ネタバレあります。思い込みもあります(いつもだね^^;)










「山本五十六」


いや~骨太な映画だった。
実際の山本五十六総司令官がどんな人だったか人柄などはよく知らず、
太平洋戦争の開戦に反対し、南の島で米軍に撃墜された・・
という程度の知識しか持たずに見に行った。だが良くわかった。
本当にこんな出来た人だったのかは分からないけど(すみません)
素晴らしい人物で、明治の男にはこういう人物がたくさん居て、だから日本が
雄飛できたのだと確信する。彼ら日本男子が絶滅しつつある(絶滅した?)現代、
日本は低迷し滅びるところまできているのかもしれない(→そこまで言うか?笑)。

一番感じたのは、「なぜ今この映画を作ったのか?」ということ。
以下は私が感じたこの映画の主張。

人の上に立つ者、つまり国家の運命を握る立場にある人は、
移り気で目先のことしか見えていない一般大衆に迎合することなく
未来の国のあり方を考え、一般大衆からは「そのとき」一時的に反感を受ける決断で
あっても、やらなければならないことがある。
「民意」とは何か?
それは為政者にとっての最優先事項ではない。決して、すべてに優先してはならない。
なぜなら、民衆はすべての情報を知っているわけではなく、
情報や状況を正しく(将来の国のあり方に合致するよう)分析評価し行動することが
出来ない存在であるからだ。民衆ひとりひとりが上記の判断ができるなら
為政者など要らない。必要なら国民全員から抽選で内閣を決めればよいのだ。
為政者とはそれらの情報収集・分析評価・判断を行い、
未来の国の姿を考え、国民の生命財産を守り幸福な生活を維持するための行動を
計画立案実行できるプロであることが求められるのだ。それが政治家に託された役割。
時には「世論」とやらに逆らう判断、痛みを伴う決断をしなければならない。
民意に迎合して、先送りにしてはならないのだ。
そして、マスコミとは民意を集約し事実を伝えるのではなく、
自身に都合の良い世論を形成するものであること。
マスコミに都合の良い状態とは「民衆に喜ばれ、(紙が)売れる」と言う状態を指す。
彼らは国の未来を考えて世論を作ったりしない、売るための世論を作る。
だから扇動される民衆に非が無いとはいわないが、一人ひとりが正しく判断できるように
ならなくてはならない。自分の目で見て、耳で聞き、心で感じるのだ。


・・・という製作者の意図を凄く感じた。
(いや、真意が合ってるかどうかは知らん~^^;)

いま、この時代に相応しい映画だったと思う。
選挙権の有る多くの人に見て欲しい。

では私の印象に残ったところを、つらつらと。

この映画を見に行った切っ掛けの玉木さん。
玉木宏という俳優さんは、現代ドラマに出ているときは全然魅力を感じないのに(ごめん)
硬派な日本の戦争映画や時代劇だと、かなり私の好みになる。不思議な人だ。
今回は大新聞社の新人記者・真藤役。上司について山本司令にインタビューし
だんだんと彼の言う言葉の意味を理解し、言葉の持つ重み、人物に感銘していく様子が
感じ取れた。ナレーションは彼の「戦争記録」という形で語られる。
この構成も秀逸。事実を淡々と述べるだけの記事が、どれほど有用かが分かる。

反対の存在(私には悪役)として描かれた、真藤記者の上司 宗像主幹(香川照之)。
宗像は「世論は新聞社が作る!!」と宣言し、嘘の記事を(いいすぎか)かなり感情が
入った脚色された記事を書きまくる。そして民衆を扇動する。
それが新聞記者の使命であると信じているところが恐ろしい。一番恐怖を感じた場面だ。
情報が限られている民衆は、新聞の情報を信じる。そして間違った世論を形成する。
「間違った」というのは、自分の望まない方向、自分や大事な人の生命財産が奪われ、
平穏な明日が来ないという選択へと進んでしまうのだから。

時折、真藤記者が出かける小料理屋、女将と踊り子さんだけが
自分の素直な思いから(自分の経験から)真っ当なことを言う。
「戦争に勝ったって、人は死ぬのよ」
「今だって中国と戦争しているのに、このうえアメリカとも戦争なんてできるのかしら」
「大勝利!って記事だけど、写真がないのね?以前はあったのに何で?」

それに対し、町の男達(民衆代表のサラリーマンかな)が答えるのは、
「戦争なんだから仕方ない。戦争が起こったら景気が良くなる、うちも助かる」
「いままで日本は戦争に負けたことが無いんだから、絶対勝つ」
「戦艦が沈没する写真なんて、どれも同じだから載せてないだけだろ」
・・すべて自分の都合の良いように解釈し、目先の利益しか考えてない台詞だ。
この小料理屋の会話が、要所要所にはさまれているのだが、それが素晴らしく効果的。
ここに来ている真藤記者は何も言わない。だがだんだん表情が変わってくるのが面白い。

ラストシーンは戦後。宗像主幹が「民主主義!アメリカを見習おう」と言う記事を
書きまくる。背筋が凍る場面だ。まるで正反対の記事を、どちらも正しいと信じて書く。
戦前、民衆を煽り戦争に駆り立てたことなど、まるで記憶にないとばかりに。
いや~恐かった。

主役の山本五十六(役所広司)と海軍大臣(柄本)、部下(シンパ)たち(柳葉、阿部)
対する軍司令の永野(伊武)と南雲中将(中原)。
海軍内部の闘争も描かれている。軍司令が作戦の重要性を理解していれば、太平洋戦争は
かなり違った経緯をたどり、結末も違ったものになったに違いない(と思わせる)
山本五十六司令が一番避けたかったのが、「民間人を含む300万人の死者と無条件降伏」
だったに違いなく、彼の方針を理解し共感する軍司令であれば、1942年の初めには
講和条約が締結されていただろう。(パールハーバーのあと直ぐね)
その前にドイツに加担して三国同盟は結んでおらず、結果のABCD包囲網も無く、
日本は戦争に突入していない(しても中国戦線だけだった)と。
・・・いまの日本はどうなってるでしょうね?戦後の高度成長期と繁栄を見てるから、
戦争はすべてが悪で軍人は悪人で、あの戦争が無ければ素晴らしい未来だった!!
という感情を当然のように教え込まれてきたけど、なんか違うよな~と思ってしまふ。

自分の上に爆弾が落ちてこないと、民衆には分からないんだよね・・
そのときには遅いんだけど。本土が戦場にならないと、市街戦がないと実感できないんだ。
(これはアメリカにも言えるが。アメリカって911まで本土が爆撃されたことないのよね)
「戦争は、軍人が海外でやるもの」と理解している民衆にとっては、「戦争=景気回復」に
なるのかなあ。今はこれに懲りすぎて、「守らなければならないもの=国土・国民」を
侵略されても、「戦争反対!」と唱えるだけで何もせず、やられるままに我慢することが
正しいと信じてる人が多すぎるような気もする・・
どっちも極端。自分の目と耳と心を使って、正しく判断したいもんだ。(難しいけど)

山本派の山口司令(阿部)は戦艦とともに戦死、(あらかじめ生き残るという使命を与えられた
井上氏以外は、全員戦死したような気がする・・だから最期まで終戦できなかった?)
人ってそういうもんなんだな~と感慨深かった。

日本の戦死者300万人の9割が、山本五十六司令の戦死後の死者というところに
彼の「凄さ」が出ていると感じた。惜しい人を早くに亡くしたのが日本の悲劇。
だけど、この映画の山本司令は、「死にたがっている」ようにも見えた。
余りに暗い先行きに絶望して、もう先を見たくないと願っているような気もしたほど。
そういう台詞があり、最後の姿だった。

本当に考えさせられ、感動しました。今後の行動に活かさなければ!



番外雑感。
滅多に連続ドラマを見ない私が3年かけてみた唯一のドラマ。『坂の上の雲』
登場人物が結構被って!!日本のこの時代の硬派の映画(戦争映画)に出演できる俳優が
限られているのかもしれないけど、いや~見たことの有る人が多いこと。
ありゃ?秋山好古さん、いつの間に海軍に?とか。海軍の弟はどこ??
正岡子規さん、やっぱり新聞社?アンタのやりたかった日本文学ってこれ?
こんなことするんなら、あの時死んどきゃよかったのに!(怒)って。(大笑)
見ている間中、軽く脳内が混乱してしまいました(笑)



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