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映画「さくらさくら~サムライ化学者 高峰譲吉の生涯」 [映画鑑賞]

2011年5月25日(水)
映画「さくら さくら ~サムライ化学者 高峰譲吉の生涯」
なんばパークスシネマ 


すごく良かった。
超マイナーな映画のようで、どこにも紹介がなかったのですが、
かなり感動した。涙した場面もあり。2時間15分、全然退屈せずに見た。
見終わったあとで、清清しい晴れやかな気分になった。

実は「ブラックスワン」を見ようと思い映画館のHPを見たところ
この映画を見つけた。
サブタイトルに「高峰譲吉」の名前がなかったら見過ごしていたに違いない。

見てよかった。客席はとても寂しかったが、この映画は見る価値がある。
もっともっと宣伝すべき。(ご当地製作らしいけど、この映画も「桜田門外の変」
くらい宣伝すればいいのに。正直「桜田門外」より数百倍は見る価値があると思うのよ)
明治の日本人は偉大だった。素晴らしい日本人がいたのだ。
それを日本人は誇りにしなければいけない。思い出し、見習わなければならない。
なんかやる気の出る、前向きな気になれる映画だった。

日本の製造業の技術は素晴らしい。日々仕事で実感している。本当に職人技が多い。
芸術の域に達している技術者も多々存在する。現場の技術者さんを心から尊敬する。
理系離れ、といわれている昨今。中学生・高校生に、この映画を見せるべき。
そう思った。名作。



大学時代に習った「高峰譲吉」。
私は文系だったが1年の一般教養で「物質の科学」という化学の講義を履修した。
近隣の理系の大学から来ていた教授(名前も忘れたけど)のお話が大変面白く、
私と友人は毎回最前列で、熱心に聞いていた。一回も欠かさず講義に出席し
先生のお話に聞きほれた。その先生が教えてくれたのが「高峰譲吉」だった。

日本人として大変素晴らしい業績を残した偉大な化学者、そう習った。
その割りに、教科書に載ってないし、大学に入るまで全然知らない人だった。
しかし私が習った教授は1年間のほとんどすべてを「高峰譲吉」の偉業について語った。
その功績がどれほど素晴らしいか、熱く熱く語った。タカジアスターゼは忘れられない。
あれから2×年が経過してもなお、忘れられない熱い講義だった。
語る教授の熱意と、語られる内容の知名度の低さ。
そのギャップが強烈に印象に残り、いまだに忘れられなかった名前だ。

今日映画を見て、その偉大さを改めて思い出した。ついでに教授の話も思い出した。
なぜ高峰先生の偉業が日本で印象が薄いんだろう(私だけ?違うよな・・)
中学くらいから教科書に載るべきだし(今は載ってるのかしら?)、
野口英世レベルで認識されて然るべき人だと思う。
アメリカで成功し、ノーベル賞レベルの研究成果をいくつも上げてる。
三共、住友ベークライト、日産化学と、日本有名企業の創始者でもあるのに。
何より、「実利実益」をモットーとし、理想に燃えるだけでなく、素晴らしい研究成果を
実利に生かして人々の幸福に貢献することを目指す。
そのためには利益を上げる会社が必要であると考え、
企業は社会に貢献する製品を販売して利益を上げることがその役割だと
意識しているところが素晴らしい!
これはまさに現代の企業が問われる「企業の社会的責任」「CSR」だ。
映画の中では渋沢栄一が、同様のことを語るが、まさにそのとおり。
現代の「CSR経営を推進する企業」には渋沢栄一氏が設立し、その創業理念を
掲げる企業が多いが、この映画の中で高峰先生へ語るのはその理念だ。
・・・この映画、企業のCSR研修で使えそうだ。起業を考えてる科学者にも見せたい。

高峰博士の最初の会社(肥料会社)はかなり赤字だった。
私はこれは、「営業」と「経理」がいなかったからでは?と思うのだ。
素晴らしい製品を作っている。それは分かるが、売り方というものがある。
また資金繰りも大事だ。研究にのめりこむ研究者はついつい資金繰りを忘れる。
高峰博士のパートナーは、研究面での助手ばかり。唯一、営業面での助手?が
義母のミセス・ヒッチだったかな。妻でなく義母であるところがすごい。
この義母はすごい人で、この人が高峰博士の資質を見抜き、見込んで家に連れてきた。
だからこそ、娘キャロラインとの結婚も許したんだろうなあと思う。
でなきゃ、あの時代に日本人と結婚させようとは思わないよ>アメリカ南部のお嬢さんが。
あの時代の素晴らしい目利きの「エンジェル」ですわ。
南部の名門ヒッチ家の令嬢(義母ヒッチ夫人)が常に同席していたから、
アメリカ企業との契約でも軽く見られずに済んだんだと思う。日本人だけなら
買い叩かれてしまったり、そもそも成果を見てもらえなかったかもしれない。
豪腕営業マンのヒッチ夫人の貢献も大きいと思った。

助手の清水さんと上中さんの2人、そして杜氏の藤木さん。
よくこんなに少ない人数でアレだけの研究成果がでたもんだ。感動的。
資金も余りなさそうだし。素晴らしい熱意と技術力。涙が出たよ・・。
上中さんは報われてたんならいいね。清水さんは志半ばで客死したから。
藤木さんは美味しいお酒造って、家族と幸せに裕福に暮らせていたらいいなあと思う。

奥さんのキャロラインも偉い。
異国でほったらかしの夫でも文句を言わず子育てし、夫の研究が上手く売れず、
貧乏になったら黙って内職で支えるとか、コーヒー豆が買えないから、
工夫してみるとか・・大和撫子の鏡のような女性(?)
あの豪腕ヒッチ夫人の娘とは思えない大人しく優しい娘さん(笑)父親似ですな。

映画なのでどこまでが事実か分からないけれど、私の記憶からするとかなり忠実に
作ってあったように感じた。
実際に残る高峰博士の写真は男前のダンディな紳士だし、キャロライン夫人は美人だし。
映画の加藤雅也さんとナオミ・グレースはぴったりだった。
(キャロラインは老けなさすぎでしたが・・晩年でも全然変わらんのはどうか?)
キャストが嵌っていたと思う。映画としての完成度も高いんじゃないかなあ。
映画のポスター、イラストがとても素敵。これ作った人センスがある!

そうそう、知らなかったのがポトマック川のほとりの桜。
高峰博士が寄贈したものとは知らなかった。習ったのに覚えてなかったのか?
映画に出てきた高峰博士の足跡を辿ってみたくなった。
しかし、あの桜も日本の植木職人が立派に根付かせたんだろうな。高い技術力と熱意で!

そういえば、ハーフの二人の息子はどうなったのかな。
その後が書いてなかった。日本へ帰った藤木さんの消息も。
どうせなら、その辺まで知りたかった。あのあと日米開戦だし・・。

映画の中で。
日露戦争がでてくるとNHKドラマ『坂の上の雲』の秋山兄弟を思い熱くなり、
日本企業の礎を築いた人たちが出てくると、宝塚『猛き黄金の国』(岩崎弥太郎)や、
これまた大学で習った「企業論」を思い出して熱くなり。

【明治の日本人は偉大だった】  
しみじみ実感させてくれる映画です。
日本の国そのものが若かった。明るい未来を信じ、貧しくても熱い希望に燃えている。
今の日本はそこそこ成功した裕福な中年で、すべてを手に入れ、飽きて倦怠している気分。
いや私も中年、倦怠から脱出が必要だ。でも・・。
「明るい未来」への「実現可能性」が信じられないから、倦怠するんだ。
信じたい・・信じさせて欲しい。信じられるモノが見たい。何かわからないけど。
平成人には、明治と言う時代に生きた人への羨望と回帰願望があるのかも。
だから最近、明治のお話が多いのかもしれない・・・とか思ったり。


ちなみに私の祖父も明治の男で、とっても素晴らしい憧れの人だった。
あの時代に医者だったというのもあるけど、「インテリ」とはこういう人を言うのだな
と幼心に感じたもんだ。時々ドイツ語でメモを書いていたのを覚えている。
私が大学に入った春に亡くなったので、大学1年で習った「高峰譲吉」の偉大さ
について話をする機会がなかった。とても残念だ。

この映画、子供が高校生になったら見て欲しい。
うちの子だけでなく、すべての学生に見て欲しい。そんな映画でした。


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