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雪組DC「SILVER ROSE CHRONICLE」 [観劇感想(宝塚)]

梅田ドラマシティ 10月8日(月祝)12時公演 13列上手

雪DC「シルバーローズクロニクル」  作・演出 小柳菜穂子

とても面白かった。もっともっとシリアスなお話かと思ってドキドキしていたのですが、笑った笑った。彩吹さんが上手いの!!間の取り方や役作り、1幕はおよそ宝塚のヒーローとはほど遠い「おたく」な設定なのに、それをきっちりと演じているからから、2幕になってから、エリオットがどれほど成長して勇気を持って行動しているかがひしひしと伝わる。人間的にとても成長したことがわかるの。
ヴァンパイアモノにありがちな時間設定のややこしさがほとんどなく、適度に怪奇と幻想な雰囲気を堪能でき(これはクリストファーに負うところが大きい)、企業ドラマあり(これはブライアンね)、そして明るい気分になるコメディ(エリオット&オタク友達)と、盛りだくさんの、それでいてストーリー性とメッセージは明快な、とっても秀逸なヴァンパイアモノだったと思います。きっとDVDを買ってしまうしょう。

<エリオット(彩吹)>
吸血鬼の映画を作った祖父アランに育てられたちょっとオカルトオタクの入ってる青年。祖父は大変なロマンチストだったのだろうなあ。エリオット少年も大人しくて頭のいい内向的な青年で素養はあったのだろう。で、オカルト雑誌に記事を書いたり仲間もいて趣味を極めた立派なマニアで、だけどちゃんと生計を立てるために働いているのも偉い。製薬会社の庶務課勤務。・・宝塚では大変珍しい設定の主人公かも。
女の子と口もきけない、道を歩くときはうつむき加減、職場では「ダサいヤツ」でそこそこ仕事はするけど有能でも無く若者のノリが違うと排除され、・・そーゆー彼の人物像が一目でわかる(メガネとダサい服装は必須アイテム)。彩吹さんは素晴らしい演技力だ!アナベルに会ってからの彼の感情の動きがわかるの。一人の自信の無い弱っちい男の子(あえて男の子)が、好きになった女の子のために勇気をだして頑張って巨悪と立ち向かっていく・・という古典的なストーリーも良い。いや~感動したなあ。あと歌も絶品だ。
彩吹さんって、ちょっと安蘭さんに印象が似てる気がしてたけど、秀逸な歌と演技だったのか、と気づいた。

<アナベル(大月)>
永遠の少女。人間と吸血鬼との混血ヴァンパイア。(あれ?なら彼女も人間との間に子供が作れるのでは??)兄と二人、異端の存在として長い年月を生きている。内気で繊細な詩人がタイプ。何年経っても男の好みは変わらないらしい。吸血鬼ものなど長命種のお話では「実年齢ではなく、見かけの年齢の性格となる」という設定が多いが、この話もそうですね。
アナベルは吸血鬼メイクのせいで周囲とは異質な白塗り、うちの娘は怖がっていた(確かに時代にあった普通の服を着ると顔が浮く)。もう少し「色白の病弱な普通の美少女」に作ったほうがいいかも。お芝居のほうは良かったです。欲を言えば、もうちょっとお兄ちゃんとの深い絆と葛藤を表す場面があれば、ラストの場面がもっとドラマチックになったと思う(これは小柳さんへの注文ですね)。

<クリストファー(凰稀)>
永遠の美青年。ちょっとトート(死神)が入っているような妖艶な美青年で、彼なら吸血対象の美女には困らないでしょう。こういう暗い影を背負った美貌の男に女は弱いのだ。実際、何もしなくても女性が群がっていた。「人間の血は嗜好品。無くても生きていける」と言ってた。珈琲かお酒みたなもの? 彼は血を吸っても吸血鬼にはしないし、殺さないし、吸われた女性は嬉しそうだし・・・良い吸血鬼じゃないか! 私もどうせ献血(?)するならクリストファーにお願いしたい。
凰稀さん、綺麗だ。背が高くて人間離れした感じの美しきヴァンパイアが大変似合う。このストーリーを最初に聞いたとき、「2番手はヴァン・ヘルシング役だろう」と思ったが違った。観て理由がわかった。私が演出家でもこの人には吸血鬼の役を割り当てたいぞ。(『堕天使』のときの冷酷な悪魔?もカッコ良かったもんねえ)
もっと出番とエピソードがあれば嬉しかった。対妹と対ヴァージニア。特にヴァージニアとの関係がもうちょっと書き込んであれば・・って、主役がこっちになってしまうわ。
うちの娘は6歳のくせにいっぱしの宝塚ファンで、いまは凰稀さんのファン。写真をいっぱい買わされています(プリキュアやラブ&ベリーのカードは要らないんだって)。幼女まで魅了するとは、凰稀さんってばすごいです。

<ブライアン(緒月)>
ヴァン・ヘルシング教授の孫で、シルバーローズ製薬の社長。エリオットとは同じ孫世代なのに(格差社会?!)・・と思っていたが、実は!!!だった。
黒い役で、緒月さんがいい味を出していた。渋い。まだ若いだろうにあの渋みは素晴らしいですね。磯野さん、美穂さんを従えていて不自然さを感じませんでした。
ブライアンの屈折も、もうちょっと書き込みが欲しいところ。台詞の端々にちりばめてありましたが、過去編で1場面あるともっと嬉しい。
プログラムでは後ろにあったけれど、舞台での扱いは凰稀さんとほとんど同格でしたね。重厚な役をモノにして、これから先が楽しみな役者さんですわ。

<モートン(磯野)&パメラ(美穂)>
重厚な方々。こういう方がいると舞台がしまりますよね。ブライアンが居なくなっても、パメラが入ればシルバーローズ製薬は発展しそうだが・・きっとパメラは自分で会社を興したのでしょう。今回は美穂さんの歌が少なくて残念。今回のメンバーで歌がいいなあと思ったのは彩吹さんと美穂さんなのに(私にとって)。
私も「アンチエイジング」に心惹かれるお年頃、吸血鬼にはぜひ研究に協力して欲しい>アナベル、お願い。でも永遠の命は要らないなあ・・若いころは死ぬのが怖かったけど、最近はいつか訪れる死がないと生きていけないような気もする。いつか死ぬから今を生きられる・・・ずっと続くかと思うと嫌になることが多いことに気づいてしまうからかも。そう思うと、ヴァンパイアの皆さんは可哀想。でも若さ(というか健康だな)は欲しいぞ。

<ティム(蓮城)&ダニエル(葵)>
売れないミュージシャングループのボーカル・ティム。今回はじめてみた。かわいいじゃない!売れるよ君たち。そしてオタクの友達ダニエル。いいねえ、21世紀のオタクぽいけど、いつの時代もオタクはあんなもんさ(多分)。この二人が親友で、両グループがいい関係で、仲間たちの青春群像っていうのも舞台を面白くしている大きな要因だったと思う。

<ヴァージニア(愛原)>
ヒロイン2だと思った人。モートン氏の令嬢だけど素行は良くない。面食いのせいで吸血鬼にされそうになるが・・残念?。彼女とクリストファーの関係がもう少しあれば、もっと「ヴァンパイアの悲哀」が表現できて面白かったのに、と思った。いろいろ制限があるなかでは、かなり書き込まれていたとは思いますが。綺麗な娘役さんだったので、これからに期待です。

<おまけ>
娘はドラマシティ初挑戦、会場の雰囲気(薄暗い)に「コワイお話?吸血鬼怖い~」と開演前はかなり緊張していたのですが、それでも大好きな凰稀かなめさんが出るというので頑張っていた。そしたらまあ、面白いこと!大喜びで笑ってましたよ~。
ひとつ弊害が。いままで「遅くまで起きていると吸血鬼が来るよ~」と寝かしていたのに、「かなめ吸血鬼が来たら嬉しい!待ってる」と言い出した。・・困る。


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