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東宝「スカーレット・ピンパーネル」大阪初日 [観劇感想(その他)]

東宝「スカーレット・ピンパーネル」大阪初日
2017年11月13日(月)梅田芸術劇場 18:30 初日 3階4列センター


「スカーレット・ピンパーネル」という作品は好き!安蘭さんも好き!
宝塚版と違うものも見てみたい!と思い行ってきました。

大人の話になってる。大人のお洒落なコメディ。
宝塚版は、子供も楽しめる大人な童話、痛快エンターテイメント、
東宝版は、テーマも深く、登場人物の内面にも踏み込み、
歴史背景も厳しく描いた大人向けミュージカル、という印象。

同じストーリー、同じ楽曲だけど、印象が違って面白かった。
それにしても、曲がよいわあ!美しいメロディに美声が響く。
初日なので、フランク・ワイルドホーン氏がご観劇。
終演後舞台でご挨拶されていました。

201711スカピン2.jpg


ミュージカル
「スカーレット・ピンパーネル」
潤色演出 木内宏昌
作曲 フランク・ワイルドホーン


宝塚版がベースにあるので、それがどうしても記憶からよみがえる。
違ったところが印象に残る。

一番の違いは、マリーの描き方
宝塚では、マリーはマルグリットの衣装係、マルグリットより年下で立場も弱く、思想も特になく、健気で元気なかわいい妹的な扱い。マルグリットの弟アルマンの恋人でもあるので、なおさら妹的存在になり、頑張って用意した娘役2番手の役というイメージ(まあマルグリット以外に娘役の出番がほとんどないからね~この作品)。
ところが、東宝版は全然違う。マリーは自立した大人の女性で、マルグリットとは親友というか戦友というか、対等の立場。恋人もアルマンではなく、劇場経営者?のタッソー氏。落ち着きと分別のある社会的地位のある大人の男だ。その男にも対等に渡り合う強い女性。マルグリットと同類、この時代に珍しいカッコいい女性たちだから、そりゃあ気が合ったでしょ?という雰囲気が漂う。東宝マリーは、可愛い添え物ではなく、主要な役になっていた。それだけの活躍をしていたようにも感じる。実際の出番は宝塚版と変わらない・・いや王太子の場面が無いから減ってさえいるが、それでも役割がきちんと描かれているため、ずっと印象が強い。凛とした女性として、マルグリット同様に活躍していたと思う。東宝版を見て、マリーの立ち位置というか描かれ方に一番驚いた。そしてマリー役の則松亜海さん。彼女が宝塚で「夢華あみ」だったときから、何も知らない純情可憐なヒロインより、リアリティある大人の女性役の方が似合うのに・・と思っていたが、その通りだった。今回のマリーは嵌っていた。存在感ある頭のいい大人の女を見せてくれました。

マリーの反動で、アルマンがちょっと頼りなくなってしまってましたが・・相対的なものだし、周りの女が強すぎるから。彼一人で「年下ポジション」を務めてくれてました。可愛かった。

この二人が一番違ったかな。私の印象ですが、脚本から違うように感じたのです。
あとは王太子ルイ・シャルルが出て来ないので、その場面が丸ごとない。あれは宝塚用の創作場面だったのでしょうね。そして、ラストシーンを含め、パーシーたちピンパーネル団の困難が描かれていた。宝塚では、割合簡単にパリで活躍し、簡単にショーブラン達に勝ってたけど。実際はとっても苦労して潜入し、困難の中隠密活動していたんだろうな~と、改めて思いました。宝塚版の方は「痛快エンターテイメント!」だから多分にご都合主義なんですけど、それはそれで楽しいから好き。東宝版の大人が分かる物語も好き。

細かいところで、牢獄の中にアンドレ・シェニエが居たり、マダム・タッソーのエピソードがあったりと、いろいろ細かい仕掛けが楽しかった。


パーシー・ブレイクニ―(石丸幹二)
大人のパーシーだ!と思った。もっと若いイメージがあったのだけど、マルグリットと出会うまで人生いろいろあっって、それで同じイギリス貴族のお嬢様ではなく、フランスの平民マルグリットを妻に選んだというのがよくわかった。ただイギリス貴族の坊ちゃんじゃない(そう見せてるけど)。
力強くて思慮深くて、大人の魅力にあふれている。結婚式の日までそういう「頼もしい大人」という雰囲気だったのに、その後の変貌ぶり。スカーレット・ピンパーネルになって、陰で大活躍しているときの表の顔ときたら!人生経験のある苦み走ったイイ男だからこその、明るい能天気な坊ちゃん夫の芝居なんでしょうねえ。同志とも思い愛し信頼する妻に裏切られた、その苦しみ。それを妻に悟らせず馬鹿夫を演じる・・・その仮面を被って、ピンパーネル団の首領として大活躍するのだから、素晴らしく精神力の強い、でも悩めるイイ男だ。
最後は誤解も解け、愛を取り戻し、信頼する妻と一緒に戦う・・いい場面でした。(マルグリットも宝塚版よりかなり戦ってる。強いわ)
石丸さんの大人の男が、奇妙奇天烈な衣装をお召の時でも隠し切れず素敵でした。表の顔の場面では、大層笑かしていただきましたが(笑)。
また、素晴らしい美声ですもんね。あの名曲の数々に聞きほれましたわ。


マルグリット(安蘭けい)
革命時の平民出身で、職業婦人で芸能人で、戦う女です。精神的にも身体的にも、強い!パーシーはこういうところに惚れたんだろうな~と思う場面がバシバシあった。パーシーの周りにはいないタイプ、いや貴族にはいないでしょ、このタイプの女性は。(強いお姉さまのおかげで、アルマンがちょっと弱っちく見えたけど)
こういう強い自立した女性は、宝塚の男役トップスターが得意とするところだろうなあ~そしてこの気性は安蘭さんにぴったりだった。強くて頼りになる同志、それでいて愛するものを守り戦うという中身が可愛いマルグリットでした。今回初めてパーシーがマルグリットにベタ惚れな理由が分かりました。(普通なら結婚式の夜に離婚しててもおかしくない状況なのに、パーシーはひとり悶々と耐えてる・・マルグリットに惚れ切ってるから、というのが見えたように思った。マルグリットだって夫の変節に驚きつつ、さっさとほかの男を探したりせず、何故かを探しつつ耐えてる。似た者夫婦だ・・。)。男に守ってもらうのを当然と思う女じゃない、愛する者は自分で守る!というこの姿勢。パーシーもいい男だけど、マルグリットはその妻に相応しいイイ女でした。
そして安蘭さんの美声。もともと在団時から娘役ヒロインなどされていて、女役時はいつもの男役声と違う女声で歌えるという稀有な男役スターでしたけど、やっぱり凄い。完全なミュージカル女優さんです。凛とした佇まいのみを残し、元男役の違和感なし。久々に美声で名曲が聴けて嬉しかった。

 
ショーヴラン(石井一孝)
カッコいい。宝塚版より暗いけど、その分悲哀が増してて凄みも増してて、フランス革命の暗部を見せられたようで素敵でした。(ちょっと「レ・ミゼラブル」のジャベール思い出した。そのくらい生い立ちから暗そうなんだもの)。
彼も「同志」だと思っているマルグリットに執着している。やっぱり激動する混乱のパリでも、あそこまで強くて愛情深い女性は少ないと見た。だからマルグリットを愛し、彼女に執着するんだ。でもマルグリットは彼ら革命の理念を踏みにじる恐怖政治に見切りをつけ、すでに先に行ってしまった。ショーブランは人生をかけた崇高な革命、という想いを捨てられず、現状を認めることができず・・この人も、パーシーに負けないくらいマルグリットのことを愛していたんだろうな~と見ていて哀しくなる。愛情表現が脅迫だなんて、「好きな子を振り向かせたいからいじめてしまう小学生か!?そりゃ絶対戻ってこないよ」と指摘したくなる。不器用な男だ。真面目なんだろうなあ。
このショーブラン、宝塚版より救いが無い。それだけに深い。慰めてあげたくなるような男ですわ(危うい脆さをもつ孤独な男って、惹かれますよね~)。
歌はやはり凄い迫力。本公演、歌が「普通」の人がいない。みんなすごいレベルでした。


アルマン・サン・ジュスト(松下洸平)
強いお姉さまに守られ姉に従って生きてきたんだろうな・・両親が早く亡くなったかなにかで、年の離れた姉が親代わりになってたのかな?という気もするような姉弟。弟が全面的に姉を信頼し頼ってるように感じたから。この作品では一番年下でちょっと頼りなさが出る役回りでしたね。でも彼がいないと話が動かないので大事なキーマン。捕まったり姉に責められたてばらしたりと、いろいろボロボロ出してますが、それが無いとね(笑)義兄やら姉に手玉に取られる様子が可愛い。素敵な姉弟関係も見れて楽しかったです。


マリー・グロショルツ(則松亜海)
上でだいぶ書きましたが、パリの芸術家。最初の場面から「芸術家」と自称し、革命政府軍に歯向かったりして、その高い矜持と、気の強さを見せてました。パーシーのラスト場面で見せ場を作るのが彼女の技術。上手くすり替えたムッシュ・タッソーの功績も大きいと思う。素晴らしい技術を持ったご夫婦ですね。そりゃ後世に名を残すわ。
その賢く強い芸術家の女性を、則松さんがとっても素敵に演じてました。やっぱりこういう役が似合うよ!彼女の歌も良いので、ソロ聞きたかったかも。


ロベスピエール(上原理生)
ロベスピエールが怖い。これぞロベスピエールだよね。バカじゃないもん、フランス革命で理想を追うあまり恐怖政治を始めてしまった頭のいい真面目人間だもの。それが凄く出ていて、今まで見たロベスピエールで一番ロベスピエールのイメージだった(おなじワイルドボーン氏作曲の宝塚雪組「ロベスピエール」はまだ見てない)。
2幕の幕開きのソロは怖いくらい素晴らしかった。本当に凄かった。フランス革命の後半裏面をがっつり見せてくれた。この幕開き、絶賛。
そして、上原さんはプリンス・オブ・ウェールズと二役をされているのですが・・・2幕冒頭のロベスピエールの恐怖の大熱唱のそのまま、幕が開くとそこは華やかなイギリスの宮廷、舞踏会の真っ最中。彼は舞台の上で、ロベスピエールからプリンス・オブ・ウェールズに変身する。服装・髪型はもちろん、顔や声まで違う。すごい二役ぶりに、オペラグラスで凝視したくらい。一人二役をなんて上手く使った演出だろうか!?大絶賛だ。人数が足りないからの二役じゃないよ!演出的に意味がある二役なんだ!と鳥肌物でした(私には)。この場面もう一度見たいわ。


こんな感じ。初日だったので、フランク・ワイルドホーン氏がご観劇で、終演後に舞台からご挨拶された。まあ普通に「ありがとう」「再演嬉しい」「みんな素敵な仲間!」という感じ。私は彼の服装がちょっと気になった・・大変ラフなのは別に良いけど、これ「ロベスピエール」の記者発表の時と同じ服?に見えて(映像で見ただけだけど)。宝塚雪組「ロベスピエール」は11月11日初日で近いから、まあ来日中なのだと思うけど、服装まで同じて・・・あれが彼の舞台挨拶用の衣装なのだろうか・・?お気に入りなのは間違いない。


初日のカーテンコールだけ、写真撮影OKだった。時間限定だから「まだ!早いよ、そこ!」とか舞台から声がかかり(1階席前方だろう、羨ましい)、とても楽しい雰囲気で、私も参加したのですが、3階B席からだと上手く撮れない。「SNSで活用ください!」とおっしゃっていたので、ボケボケですが一応載せておきます。

201711.jpg
3階B席からみた舞台

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はるか

コメント失礼します。

やはり東宝と宝塚では演出大分違うのですね!
確かに星組スカピンは紅さんによく似合いましたが、女の子たちにスポットが当てられるのは東宝ならではですね。
エリザベートや1789でも同じことが言えますが、どちらが好きかはそれぞれということで。

批判覚悟で恐縮なのですが......。
「夢華あみ」として則松さんを観たのは実はShall we dance?のみでした。
とても実力のある人ですが、音楽学校時代のトラブル(あれは音楽学校側が悪いでしょうに)や娘役としては大柄な体躯、主席という立場が相まって凄まじいバッシングを受けていて正当な評価を得ていないなと思いました(1789のパンフレットの質問で「宝塚音楽学校の受験」と書かれていて、在団中は思うところがあったのかなぁなんて)。
スケープゴートのようにあちこちに主演娘役として引っ張り出され、本人の持ち味が活かされない役ばかりでバッシングされるのサイクルはひどく可哀想で......。
けれど梅芸所属後は本人にマッチした役を演じられているようで安心しました。
芸達者な方なので、エリザベートならゾフィーが似合いそうだなぁとぼんやり思う子でした。

則松さんには少し思い入れがあったので、書き込んでしまいました。
それでは失礼しました。
by はるか (2017-11-18 17:46) 

えりあ

はるかさん

東宝と宝塚とはいろいろ違って面白いです。大抵、東宝の方が大人向けになるように感じます。

則松さん、私もそう思います。私は彼女の最初の抜擢、研1の「ロミオとジュリエット」本公演ヒロインから見ています。退団の千秋楽公演まで、彼女が出ている公演のほとんどを見ました。確かに研1とは思えないほど上手かった、だけど研1での本公演ヒロイン抜擢なんて、誰がやってもバッシング必至。それに当時の雪組は1~3番手までみんな小柄。Wヒロインの相手の舞羽さんはトップ音月さんと似合う小柄で,雪組育ちで、寄り添い方の上手いヒロインタイプの娘役さん。宝塚風の寄り添いが全く習得できていない夢華さんには酷すぎる人事でした。その後もバッシングしてくれと言わんばかりの配役。本当に可哀想でした。
その後、96期でありながら月組で大事に育てられたあと雪組トップ娘役として妃咲さんが来られ、早霧さんと大人気スターになったのを見て、夢華さんへの配慮の無さを感じました。夢華さんも2年ほどじっくり脇で育て、もっと似合う役を順番に充てて育ててあげていたら・・と思いました。
(当時の感想にも、そう書いています)

いま「則松亜海」として東宝で大活躍されていますから、良かったと思っています。外の方が似合う芝居だったし(というか宝塚風を会得する前に退団されたような気がします。持ち味に合う役があまり来ませんでしたしね)
96期を弾劾するなら関係者全員にすべきで、一人だけを生贄にして観客の留飲を下げさせるような人事はすべきではない、これは劇団のミスだと今でも思います。

「エリザベート」、ソフィ皇太后も似合いそうですが、マダム・ヴォルフも見てみたいですね。


by えりあ (2017-11-18 22:28) 

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