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東宝「レ・ミゼラブル」 2017大阪 [観劇感想(その他)]

東宝「レ・ミゼラブル」
2017年9月19日(日)12時 フェスティバルホール 1階24列センター


久しぶりの「レ・ミゼラブル」。
新演出になってから初めてです。何が変わったという噂も聞かないので
そんなに変わらないと思って見に行きました。

やっぱりあまり変わってない。歌詞も曲も同じ。衣装もほぼ。
演劇専用劇場以外でも上演できる演出に変わったみたい。
盆もせりもない劇場でできる演出。映像を活用。2幕が特に変わった印象。
でも演出がすこーし変わった程度で、全体は変わらず「素晴らしい!!」
やはり感動しますね。私はいつも最初の司教様の場面で来る。
バルジャンとジャベールの対決も、ドキドキする。
アンジョルラスのカフェで学生気分で高揚、そのまま1幕ラスト。
そして2幕のマリウスのソロで来る。バルジャンの最期の場面も。

今回はファンテーヌの和音さん以外は知らないキャストでしたが、
やっぱりオーデションというだけあって、皆さん上手い!

久々に見ても大感動。色褪せない名作です。

201709レミゼ.jpg


ネタばれあります。一応ね。




Les Mizerables

作アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルク
原作ヴィクトル・ユゴー
作詞ハーバート・クレッツマー
オリジナル・プロダクション製作キャメロン・マッキントッシュ
演出ローレンス・コナー/ジェームズ・パウエル
翻訳酒井 洋子訳詞岩谷 時子
プロデューサー田口 豪孝/坂本 義和
製作東宝



大きく変ったところといえば、盆とせりを使わずに済む演出ということですね。
そのため、地下水路に入るところは地下ではなく横から入り、
バリケードは裏表がないので、ガブローシュとアンジョルラスの見せ場がちょっと・・・減ってしまいました。アンジョルラス最大の見せ場だったのに、本当そこが一番残念。バリケードも小さめでしたしね。上下運動がしづらそうに感じました。
良くなったなあ~と思うのは、背景が映像になって駆使されてること。
映画っぽい。ただ映像は美しくてリアリティが出ているけど、「○○○○年。パリ」とか年代と場所を示す字幕?が出なくなり、ちょっと不親切になったんじゃないかしらん。
背景映像のおかげで、最初の場面や町、工場、森の中、パリの街、カフェ、下水道の中、ととても臨場感があった。セットもなんだか増えていたように感じる。変わらず暗いけどね。


ちょっと具体的に書くと。
1幕プリュメ街(コゼットの家)では、盆が回らないから、コゼットの家と道路が一体化。恋するマリウスやテナルディエたちならず者が塀を乗り越える場面が、塀が切れてるから横を通ったりして、この場面を知ってないと難しそう(初見の人は良くわかってなかった)

1幕ラストのワンデイモア。テナルディエ夫妻が横にいて、最初声しか聞こえずどこにいるのか探してしまった。両袖に上下の建物がありバルコニーが使えるのだけど、やはりここは平面で広く見るのに慣れているから(テナルディエ夫妻は全体を見せず、地下から顔を出すのが立場と態度・役割を示していて好きだった)違和感があり。バルコニーで縦の動きがでたけど、やはりこれは舞台が狭いからかな? 帝国劇場の舞台は広いのだなあ~と実感。

2幕バリケード。全体的にちょっと小さい感じ。盆が回らないから、中と外がなくて。外が無いからガブローシュの最期が見えない・・・と思ってたら、場面はきっちり印象的に作ってあった。が。彼の最期の貢献がなくなっていたように見えた。旧演出では、ガブローシュは、弾を手に入れて、撃たれて最後の力を振り絞って仲間に弾薬を放り投げる。彼は年少ながら大事な対等な仲間で、「自分にしかできない!」と豪語した貢献をして、満足して死ぬあの誇らしげなガブローシュが好きだった。今回、後ろから撃たれアンジョルラスの腕に倒れて抱きかかえられ・・・は子供みたいで(子供だけど)ガブローシュの誇りが傷つくのではないかと思ったくらい。弾薬の袋も見えなかったし(持ってたらごめんなさい)。

何より変わったのがアンジョルラスの最期。すべてが終わったことを示すあの静かな音楽とともに、ゆっくり盆が回ってバリケードの正面が見えると・・・というアンジョルラス一人だけの最期。あれが凄く印象的で、よく覚えていた場面だったから、無くなって残念至極。新演出では無理やりアンジョルラスだけ最期を見せるようにしていたけど、あれでは象徴する意味が違うと思うの。彼はあくまでも「砦の向こうに自由がある」と信じた、その砦の向こうに向かって死ななきゃならない。陥落した城の王として、城とともに天守閣で討ち死にするイメージだった。だから罪人として荷車に乗せられて、死体に布を掛けられて連行される反乱の首謀者みたいな扱いにはして欲しくなかった。意味が全然違う。
・・と思うのは私の感想なので。それでも彼の最期の場面があって良かったと思う。巨大な盆が回る劇場じゃないと上演できない演出だし。もともと登場人物のなかでアンジョルラスが一番好きなので、私は思い入れが強すぎたのかもしれない。

ジャベールの最期。星空の元、該当と橋はとても素敵な雰囲気を出していた。最後の最期。水に飲まれるところは映像の濁水に飲まれて行きました。ここも以前の方が「飲まれた絶望感」があったような気がする。映像が綺麗になりすぎて、リアリティな川の水になりすぎて。、なんだか水の渦が、絶望の象徴じゃなくなったように感じた。以前の演出の映像は(ここはもともと映像というか照明でしたけど)水というより水に象徴されるモノに飲み込まれるように見えたから。
砦の戦いなどで、本物の松明や炎を使ってるし、火薬の煙も見えたし、かなりリアリティが増大していた。川の水もリアリティアップなのでしょうけど、ここは「象徴」も兼ねていたので、川の映像でないほうが似合ってたように感じたのでした。

本物の炎は、バリケード陥落の翌日、女たちが学生たちを悼んで歌うときにも、各自の手に蝋燭がともされていた。女たちはろうそくを置いて去り、そのままマリウスの絶望。アンジョルラスたち仲間の亡霊が現れ、ろうそくを消す。ここはなんかいい感じ。炎が命の象徴として使われえていた。マリウスが持った炎だけが最後まで残り・・というのも。ただマリウスがどこに居るのかわからない。以前は部屋の中にいて、仲間の残像が見えたって感じたけど、今回はマリウスのいる場所が不明。女たちがいた外? 歌詞は元のまま、窓ガラスや床に仲間が見えるのだよね(原作では、彼は祖父の住む貴族の館に戻ってるんだよね)

テナルディエ夫妻の宿屋なども、みすぼらしさというか、うさん臭さが倍増していたかな。
あとはラストシーンまで怒涛の如く進み、私は感動でした。


フェスティバルホールはクラッシック用の劇場なので、盆とせりが無いけど、オーケストラの音が素晴らしく美しく聞こえた。ミュージカルの生演奏で、ここまで繊細で美しい音楽を聴いたのは初めてのように思う。オーケストラの演奏だけを聞いていても良いくらい素晴らしい。そして歌も。バルジャンもジャベールも、ファンテーヌもエポニーヌも、歌の残響が良く聞こえて、さらに素晴らしい感動が得られた。クラシックのコンサートができる劇場は、ミュージカルならOKなのだろね(盆とせりが欲しいが・・以前、クラシックの演奏家が、「クラシックの音楽用のホールと、芝居用のホールは音響の作りが全然違う」と言っていたのが良く実感できた。音楽用ホールは音が響くように、芝居用のホールは響くと台詞が聞き取れないから響かないように作ってあるそうな。おそらく音楽用ホールには盆とせりが無いのだろう・・・どっちかなのね。ともかく、今回の「音」はとても良かった。



ジャン・バルジャン 福井晶一
むさくるしいけど、心根が優しい美しい魂を得たおじさん。なんとなくイメージ通りのバルジャンです。歌が素晴らしく美しかった。この方の回が見たかったのですが、大満足。


ジャベール 川口竜也
私の中のイメージでは、生まれが悪いだけで、容姿も能力も良いおじさん・・だったの。今回のジャベールは、私のイメージよりちょっと太い。ちょっと普通のおっちゃん。バルジャンとジャベール、どちらも似たタイプに見えた。そういや以前は、バルジャンとジャベールの役替わりっていうパターンもありましたね。これが正しいのかもしれないや。
ただ私は。かつて鈴木綜馬さんや、石川禅さん、岡幸二郎さんのジャベールが好きだったの。刷り込まれてるようなので、ジャベールに思い入れもあり、そう感じたのでしょう。
川口さんの声は申し分なかった。一番よく響いていたように感じる。


ファンテーヌ 和音美桜
素晴らしい歌声とか弱さ、そして気の強さ。バルジャンが手を差し伸べたくなるようなか弱さと、その手を一度は撥ねつけ啖呵をきる気の強さ。その両方を併せ持つ繊細なファンテーヌ。ひとつ出会いが違えば、バルジャンとファンテーヌ、コゼットは幸せな家族になれたかもしれないな・・と今回はかなり強く思いました。
和音さんは宝塚時代から、素晴らしい美声の方でしたが、まったく衰えずさらに磨きがかかってますね。美人だし。私が見た回が、和音ファンテーヌの最終回でした。


エポニーヌ 昆 夏美
幼児期が不幸で、今が幸せなコゼットは、過去をすっかり忘れている。でも逆に、幼児期が幸せで今が不幸なエポニーヌは、覚えていた。この二人、対照的。エポニーヌの言葉にならない感情、その一途な行動。歌。やっぱり上手い。歌はもちろんだけど、お芝居も上手い。
いつかファンテーヌを演じられそう・・と思える方です。


マリウス 内藤大希
歌は申し分ないです。お顔が私の好みではないかな~マリウスはもっと堅物が初恋に浮かれるという、この戦争前夜にそんな?見たいな違和感がほしいな~。エポニーヌに命がけで愛され、コゼットに一目ぼれされるんだから、もっと他に居ない・・そう育ちの良い善良なおぼちゃまな雰囲気が欲しいと思いました。他の学生とあまり変わりなく見えたので。


コゼット 生田絵梨花
可愛い。乃木坂のメンバーらしいけど、歌えてた。(「王家の紋章」でもヒロインがAKBの人だったし、最近は流行ってるのね・・)。元々コゼットは「アイドル枠」のような扱いなので、「可愛い」が一番大事だ。歌もソロより、マリウスやエポニーヌとのデュエットが多いし、主張しない声の方が綺麗に聞こえる。何より、マリウスが一目惚れする令嬢だもの。バルジャンが大切に愛して育てた娘だもの。美人のファンテーヌの娘さんだし。雰囲気と顔が「可愛い」のが必須。
生田さんは十分可愛かったので私は満足。


テナルディエ 駒田 一
駒田さんのテナルディエは好きだ。狡くてずるくて、「正義?俺が正義だ」とか「良心が食えるか」って自分の娘すら気にしないという、卑劣を極めた心根が素晴らしすぎる。だかあんなにら下種なのに、憎めない。彼の描き方はちょっとデフォルメされているような気がしないでもないが、この時代、これが「普通」な場所があったのでしょう。だからそのレベルにいるのに美しい心を持つバルジャンや、そこを嫌悪し正義を貫こうとするジャベールが光る。そういう意味で、テナルディエの闇が深いほど、素晴らしく光が輝く。
本当に駒田さんは芝居が上手い。メイクも凄い。
アンコールの挨拶が、駒田さんだった。普通主役(バルジャン)がやるのかと思ったら、なぜか駒田さん。宝塚脳の私は、「組長!」と思ったのでした(笑)


マダム・テナルディエ 森公美子
森公美子さんのテナルディエ夫人を一番たくさん見ているような気がする。もう夫人はあの体型でインプットされている。今回はさらに胸と胴がデフォルメされている。顔(化粧)も。あの亭主にこの女房、似合いだ。なんであんなに純情可憐な娘(エポニーヌ)ができたのか不思議なほど。歌は申し分なし!迫力も。あの亭主に張り合える方です。


アンジョルラス 相葉裕樹
私が一番愛する登場人物アンジョルラス。やっぱりアンジョルラスは背が高くてイケメンで、圧倒的なカリスマがある人物!今回のアンジョルラスは、そんな感じがしたので、私は満足。嬉しかった(だから最後・・)
アンジョルラスは、「スーパー転校生がみんなを惹きつける」タイプと、「クラスの委員長がみんなを引っ張る」タイプと有ると思う。私は前者の方が好き。今回の相場さんは前者な役作りだったので(容姿も)満足度が高い。好みの問題だけど。
まあ、私のアンジョルラスは、岡幸二郎さんだ。彼で刷り込まれているから(笑


ということで、私は大変満足。新演出も良かったけど、盆とせりが使える劇場では、たまに旧演出を上演して欲しいなあ・・・と思ったのでした。

忘れないように今日のキャストを張っておきます。

レミゼキャスト2.jpg




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