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劇団四季「ノートルダムの鐘」京都 [観劇感想(その他)]

劇団四季「ノートルダムの鐘」京都
2017年8月8日(火)京都劇場 1階J列上手

あまり得意ではない劇団四季です。が!
東京で見た友人から「見るべし!」と言われ見に行きました・・大正解!ありがとう!!
劇団四季で初めて感動したというか(大失礼ごめんなさい)素晴らしかった。
これは行って良かった。宝塚ファンでも衣装や美貌が気にならず感動できる
(重ねての失礼ごめんなさい) 
四季ファンから見たら「何言ってんの?」とお怒りを買いそうですが、
でも四季を見てこんなに感動したの初めてなんです。
「見るべし」とと言ってくれた友人に感謝。さすがわが友、私の好みを知ってる(笑)


ストーリー、いえ演出、役の解釈が良い。脚本が深い。
たった5名の役付きの方のお芝居、行間が見える素晴らしさ。
役が入った台詞回し(四季では大変珍しく感じる)、
相応の臨場感のある衣装、豪華な装置が大変効果的。

ということで、大絶賛です。





劇団四季「ノートルダムの鐘」


四季みて初めて感動した。と書くと怒る人もいっぱいいると思いますが、劇団四季のお芝居では「台詞を伝える事」に重点が置かれ、台詞に感情が入らないように感じるし、最近見た「ライオンキング」「キャッツ」はどちらもストーリーが単純というか、私の中ではテーマのあるショー程度しか入ってなくて。ショーというには衣装と役者に(私が求める)キラキラとした美しさとトキメキが大層不足するため、私はテンションが上がらずにいた。これはミュージカルではない、と心ひそかに思っていたのだ。

それがこのノートルダムの鐘は大変な深いテーマと脚本が練りこんである!これこそが(私の思う)ミュージカルですわ!

そしてストーリーに対して、すごい解釈、演出、演技。
四季だからが上手くてすごいんだけど、四季なのに歌にも演技があった。これを感じたのが初めて。いつも「凄い上手いなあ~」とは思うけど、感動はしないから。
さらに衣装が気にならない。まあ簡素だけど、この時代、この階級の人々なら納得できるレベルの衣装で、違和感ない。出演者の方の容姿レベルも気にならない。そりゃエスメラルダがもっと色っぽい美女で、フィーバスが美形なのが好みだけど、それは宝塚脳だから。「誰もが一目ぼれする絶世の美女設定」とか「モテモテイケメン王子様設定」ではないので、まったく問題なし。今回は容姿ではなく人柄の話だから。
さらには舞台の上半分を占める大きなセットである鐘が効果的。「オペラ座の怪人」のシャンデリアは「あんだけ?」という使い方で少々がっかりした記憶があるけど、この「鐘」は素晴らしい働きをした。立体的に効果的に使われていた。そして動く舞台セット、石像が民衆に変わる。こういうのは宝塚が得意とするところだけど、その切り替えが効果的。抜群。素晴らしい演出だった。
役者は5人。この人間舞台装置(良い意味で使ってるよ)が居て、世界空間と回らない舞台を効果的に舞台転換していく。あと、これは贅沢なのか何なのかわからなかったけど、聖歌隊16人.。少人数で感動的な舞台が作れるのはOSKでもよく知ってたけど、劇団四季もなんだ!と感動した。


ディズニー映画は見ていないけど、フランス版の来日引っ越し公演「ノートルダム・ド・パリ」(→当時の感想はこちら)は見ている。ストーリーは知っていたけど、フランス版であまり感動できなかったので印象になかった。
が。フランス版と違う!全然違う!
エスメラルダは強くていい女、自分を持ってる。自分でカジモドに近寄り真摯に友情をはぐくんでいる。フィーバス隊長は誠実ないい男だ。彼は最初から容姿でいじめられるカジモドを助けようとしゃる。そして何よりエスメラルダにも誠実。エスメラルダとフィーバスの関係がほのかで、その後ろにいるカジモドのせつなさ。フロロー司教は拗らせた聖職者。行き過ぎた異端審問官みたい。でも彼ら兄弟の前半生、そしてカジモド誕生にまつわるエピソードがしっかり組み込んであったおかげで、フロロー司教の心の内がはっきり見えた。彼とカジモドの関係も。それが大変良かったんだわ。この解釈大好き。構成も演出も、台詞も解釈も大変気いりました。

あとね、カジモドとエスメラルダとフィーバスの関係のところが、ちょっとエポニーヌとマリウスとコゼットに重なる部分があったり、ラスト近くでフィーバスが民衆に司教への反撃を訴えるところがアンジョルラス?って思ったり。なんだか「レ・ミゼラブル」を思いだしてしまった。曲も良いしね。
そういえば、カジモドとフロローの関係が、ちょっとだけオペラ座の怪人と支配人の関係にも見えて。父と伯父、愛する女の生んだ子か、憎い女の生んだ子かで扱いいがかなり違ったけど。要するに、「ドラマチック」だったの。


【カジモド】
ノートルダムの鐘付き男。カジモドは司教の弟の子。司祭とその弟は教会に拾われた孤児の兄弟。兄は教会の導きのまま聖職者の道を順調に歩み、一方で弟は聖職者を嫌いジプシー女と駆け落ち。兄は弟への憧憬を心の底に封印し、それを戒めて生きてきた(だから、エスメラルダに惹かれたんだけどね)。その戒めは自分の実ならず、弟の遺児であるカジモドにも強烈にのしかかる。二人は互いに支えあい、縛り付けながら生きてきた。
ということで、純粋培養のカジモドは、かなり閉塞された環境に押し込められ、自尊心なく伯父の言うがままに純粋に生きている。ある意味「神の愛される純粋な魂」の持ち主だと思う。そのあたり司教の教育は成功してるね。彼が普通の容姿なら間違いなく養子にして聖職者まっしぐらだったよね・・。奇形のせいで鐘搗きにしかできなくて、そこは残念だったろう。鐘撞堂?での彫像たちとの会話(自己内省よね)、初めて外部に出たときのこと、エスメラルダとの出会い、フロローに対する感情の変化。彼の純粋な魂のきらめきが見えて、初めて知る世界の醜さと美しさ。彼の心の動きが見えて、大変感動的でした。
凄い役者さんだと思いました。もちろんカーテンコールで分かった背の高さ、体格の良さから「せむし男」の演技も素晴らしい。表情までずっと歪んだままで、彼の外見の異様さを表現され続けたのは見事。感激しましたわ。


【エスメラルダ】
自由意思を持つジプシー娘。因習やつまらない価値観にとらわれず、自分の心を信じて生きる強い娘。自立した一人の女性なのですね。その彼女が、カジモドとかかわり彼の人生を変えていき、彼との関係を通して成長していく様子が大変興味深かった。彼女は決して弱く貶められ踏みにじられた哀れな女性ではなく、理不尽に虐げられても屈しない高貴な魂を持つ人間。カジモドと同じく美しい魂を持っていると感じた。彼らの魂が触れ合い、その作用で二人は大きく成長し、彼らに関わったファーバスもまた成長していく。深いわ。面白い。
エスメラルダは背が高くてきりりとした強い姐さんでした。イメージ通り。
私が見た回の役者さんは、声が大変綺麗だった。そして声でもお芝居していた。声での芝居は四季ではなかなか感じられないので、とても嬉しい。


【フィーバス】
ノートルダムの教会付きの警備隊長。戦場で命をすり減らすことに疲れ、戦う意義を見失い、虚しさを抱えて安定した職業を望み、教会の番犬となった。そのことに対し鬱屈した感情があるみたいに感じた。この登場時点でかなり斜に構えていて、擦れた面とそれを納得していない面と自分を納得させようとあがらう葛藤を見せる。彼は最初に群衆に石を投げられるカジモドをかばい、民衆を止めようとする・・そこに彼の本性を見るように思った。治安維持だけではなく、不正を許さない彼の正義感。それがたぶん戦場でめちゃくちゃにされたんだろうな・・ってところ。彼はそれでも筋を通す人物で、だから部下も大事にし、部下にも慕われている(と感じるエピソードもあった)。
そんな彼の鬱屈をまっすぐに突き刺す光の剣のようなエスメラルダ。それは惹かれるよね。よく知り合えば、きっとカジモドにも惹かれたように思うわ、彼。
エスメラルダを助け、民衆への訴え。司教が言うから正しい、ではなく、正しいこと間違っていることを分かって民衆の目を覚まさせようとするあの場面、本当にかっこよかったわあ。アンジョルラス様かと思ったくらい。カッコいい!
彼の物語もきちんと描かれていた。


【フロロー司教】
ノートルダムの司教様。彼なりに必死で正しく生きているのが見えて、嫌いになれない。弟と二人で教会に拾われたところ、弟との対立、カジモドを託される場面、カジモドとの会話。どの場面でも彼は「正しく生きる」ことに雁字搦めで必死。彼がまじめに聖職者を目指さなあったら、兄弟は放り出されたかもしれない、孤児出身だからこそ普通の人よりさらに「正しく生きている」ことを見せないとあの世界では侮蔑され出世できないとか。無意識に自分を雁字搦めに縛っている。彼は弟とともに、正しき人生を目指し兄弟で「誰からも尊敬される聖職者」を目指していたんだろなあ。でも弟はそんなことより自分の幸せを追求した。雁字搦めの兄から自由に生きたいと望み、愛する女(それがまた、差別される側のジプシー女)と出て行った。フロローは最初から最後までずっと弟を一番に愛していた。だから弟を奪い、みじめに死なせたジプシー女が憎かったんでしょう。同時に、彼自身も弟と同じ望みを心の奥底に閉じ込めていたから、弟が愛した自由な女に惹きつけられる。そんな自分が許せない。さらには、弟の代わりに「正しく」育てていたカジモドまでが、自由な女と出ていくなんて。弟のようにならないように気遣って育てたのに、と裏切られた思い。それが全部混ざってエスメラルダへの憎悪になったんですね。っていうことがよくわかりました。彼とカジモドの対決も、フロローの中の対決みたいだった。「自分を押さえつけ『正しい道』を生きるフロロー」と自分の心に従って自由に生きるフロロー(=カジモド)」の戦い。だからあの結末は当然。あれしか考えられない。そういう意味でも納得の結末でした。
フロローは、信仰心が強すぎて自分を縛り付け狂信者になってしまった異端諮問官を思い出しました。ある意味純粋。
このフロロー、哀れ。悪役だけど、憎たらしくない。すごい・・。


【クロバン】
ジプシーの長かな。上の4人にくらべると、役割は少ない。
だけど「自分の思う通り生きる自由人」を代表し、仲間思いでイイ男だった。
賑やかでリーダーシップも感じられたし。少ない出番と役ら割りながら、印象に残ります。



結局、5人で2時間半の物語。5人それぞれの人生が見えた。複雑な感情が交差する濃いストーリー展開。鐘と石造、舞台ならではの効果的な演出。全く飽きない。気をそらさない。必死でみた。深い。こういう作品は好きだ。

私が見た回のキャスト。

20170808ノートルダム.jpg


・・不満を一つだけ言えば、劇場が大変寒かった・・・。「劇場は寒い」のは常識ではストールは持っていたけれど、夏物の薄いストールでは不足(仕事帰りだから、長そでの夏用ジャケット着てたのに!)。冬用カシミア・ストールが必要なレベルだった。肩もだけど、ストッキング履いてても足元が寒くて冷えた。
それでも気を散らさないで必死で見ていたから、凄い作品だわ。



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ミカ

私は8月4日に見ました!
私もすごく感動しました
感想とかはうまく書けないのです 舞台からいろんなことを問いかけられているような気がしました
機会があればまた観てみたいです
劇場寒かったですか?
確か 貸し出し用のストールが 置いてあったような気がしますが・・
私たちは(子ども2人と一緒に見ました)
2階席だったせいか 全く寒くはなかったです


by ミカ (2017-08-15 11:30) 

えりあ

ご覧になったんですね!良かったですよね〜
本当にいろいろ考えさせられました。深かったわ。
私も書ききれていませんが・・・。

劇場、1階席で端の方だったので、寒かったのかな。
貸し出し毛布は早々に無くなったようでした。
近くには、貸し出し毛布を、肩から羽織り、膝にもかけて
という「難民?!』というような格好の女性も(笑)
寒かったんです・・。

by えりあ (2017-08-15 20:25) 

ミカ

寒かったと言えば 私は去年9月近鉄アート館公演 クリスタルパッションの時 寒かったです! 下手側の1番前に座っていたのですがひざかけ2枚借りましたね
(^w^) 冷気?と言うか冷たい風が真上から吹き下りてくる感じで寒かったです。 ダンスの舞台で劇団員さんが汗だくなのでいつもより冷房がきついのかなと思いました。 その後のお茶会で 膝掛けを羽織っている人がいて驚きましたって言う話が出て(本人たちは暑かったから) 私のことかも(^_^;)とちょっとはずかしかったです。
職場でもそうですけど
座席の場所によってかなり温度差あるんですよね

by ミカ (2017-08-16 12:26) 

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