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宝塚雪組「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」新人公演 [観劇感想(宝塚)]

宝塚雪組「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」新人公演
2020年1月21日(火)18:00 1階10列下手

雪組の新人公演も見ることができました。
あの長大な作品を1幕ものにどうやって?と思ったら、子供時代がほぼカット。あとはまあショー部分がカットされた感じでしたが、青年期壮年期はちゃんとありました。結構大胆なカットでした。
今回なにより印象に残るのが、主演の諏訪さん。すごく上手くてかっこよくて、あの望海さん仕様の難曲を手堅く歌いこなし、あの大人の男・望海風斗の役を不足なく「大人の男ヌードルス」を見せてくれ、感動しました。前回の「壬生義士伝」のジロエから「この人上手い」と思っていましたが、満を期しての主演!という感じで、とても似合う役で主演をされたと思います。いやそう思わせたほどの実力でした。
もう一人、ジミー役の彩海せらさん。芝居も歌も上手い。ジミーがどういう人物なのか、よくわかる。そしてカッコいい!本公演ではあんなに可愛いダニエルなのに、大人ジミーはとってもイケメン。
この二人はとても上手くて、新人公演とは思えなかったです。

202001雪新人公演.jpg


「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」
演出 小池修一郎
新人公演演出 竹田悠一郎


新人公演は2時間だから、30分ほど短縮しなければならない。演出は、子供時代が大幅にカットされていた。ヌードルスは少年時代なしで、少年時代編はすべて回想にして壮年ヌードルスと壮年ファットモーが語る形で展開。当時の少年たちの中に、壮年の二人が混じるという手法。少年たちに混じって芝居する壮年のヌードルス。映像チックで面白い手法でした。ちゃんとわかるから良いのですが、折々やラストの重要シーンで大切な効果や役割を持つセリフや歌なんかが省略されたので、ちょっと残念(それ入れると本公演と同じになるからねー)
前半カットのため、後半の重要セリフの裏側が薄くなるけど(小池先生は凄く効果的に構築されているのね!)、新人公演だけ見る人もないから良いか。
1幕ラストで幕がちゃんとしまってよかった!あれはあのシーンで幕を下ろすのが絶対だ。2幕のハバナシーンはヌードルスの衣装が変わるので大変だったでしょうね。良くつなげた!

ヌードルス(諏訪さき)
うまい。歌も芝居も、そしてあのスーツが似合って大人の男として違和感なくかっこいい。諏訪さんの魅力が全開になった新人公演だと思う。
大人の男で芝居も上手くて、何よりあの歌声を持つ望海さんに宛てて書かれた小池先生の思い入れ強い作品。今回見てよくわかった。なんてヌードルスに歌が多いのだ!出番も凄く多い。主演が真ん中にしっかり立ってないと成立しない作品では?と思うほど。その難曲、難しい芝居をやりきった諏訪さん。かっこよかった。諏訪さんも、望海さんと同様「フェアリーな」とか「頼りない少年」みたいな役が似合わないタイプで、マフィアスーツや哀愁や苦悩が似合う大人の男が持ち味のタイプ。このトップにこの作品だから、諏訪さんの魅力も全開したんだなあと思った。(ジェンヌ人生、トップの持ち味とのめぐりあわせも大事だと、しみじみした)。
少年時代のデボラへの恋や、ダニエル関連の仲間思いの話、マックスとの友情のきっかけなんかが省略されてしまったけれど、「損場面を見た」と思えるほど、後半にそれらの情感が深く演じられていた。あの私が大絶賛した1幕ラスト。ヌードルスについては、全く文句なし。完璧だったと思う。一生に一度の愛の終焉、大人の男の深い絶望が見えた。諏訪さんの芝居も深い。すごく好みのタイプの役者さんだ。最後の新人公演で満を期して主演をつかみ、そして期待に応え、これからスターとなっていかれるんだろうな、本公演で主要な役を演じられる役者になると思うので、ぜひぜひスター街道を走ってほしい。そう思いました。


デボラ(潤花)
なんだかとても軽い。真彩さんのデボラは、ロウア―イーストサイドから何としてでも這い上がって見せる!という強い意志を感じ、そのために断腸の思いで最愛のヌードルスのプロポーズを断った、のが見えた。ヌードルスの絶望には、デボラの拒絶が激しいから絶望が深くなるという相乗効果があったのだ、と気づいた。
つまり潤花さんには、それが無い、感じられなかった。なんだか若い女の子が「こんな家嫌、都会に出てドラマみたいにかっこよく暮らすの!」とふわふわした夢の世界に憧れているような軽さ。ちゃんとした普通の家の娘が、芸能界に憧れているようなかるい気持ちみたいな。真彩デボラの現実に対する悲壮感というか夢に向き合う真剣さがない。潤花さんはそういう育ちが良くひたむきで素直なお嬢さん役は似合うから、心に闇を抱える非情な女でもあるデボラ役に合ってないのだと思う。浅いから、ただのわがままにみえてしまう。だからヌードルスだけが真剣に愛し、絶望している・・・って見える。
真彩デボラは、1幕ラストの後絶対にヌードルスのもとには戻らないような決意を感じるし、ヌードルスもそれを受け取っている。でも潤花デボラは、ハリウッドで上手くいかなかったら「なんかハリウッドも嫌だしまた帰って来ちゃった☆」って簡単にブロードウェイに戻りヌードルスと復縁しそうな雰囲気。(そもそも潤花デボラが「日の当たる道で」というのも、「他人に自慢できるほうがいいから」みたいな軽い気持ちで言ってそう。)軽いの浅いの、あんなにあっさりプロポーズを断っちゃだめでは。だから望海ヌードルスと同じ深い絶望を見せる諏訪ヌードルスが浮いてしまう。それじゃダメなの、2幕以降のヌードルスとデボラの人生が違ってしまう。潤花デボラは、この作品のデボラじゃなかった。(私見ですよ)
あと真彩さんとはタイプが全然違うので、真彩さん仕様の髪型もドレスも似合ってないような。ダサくスタイル悪くみえてしまった。諏訪さんが望海さんと持ち味が同じジャンルの諏訪さんが役にはまったのとは逆に、真彩さんの持ち味とは全く違うジャンルの潤花さんは今回はデボラじゃないほうが良かったかもしれない。なんて思いました。あと歌もね。超絶歌える真彩さんのための曲だから、あれだけ歌えるからスターになれた、努力したと言って誇れる歌声・・・じゃなかった。ものすごく難しい歌なのだと思うけど、声が揺れたり掠れたり伸びなかったりで、スターに見えなかったのもある。今回は歌える娘役、芝居の深い娘役さんで見たかった。諏訪さんが良かっただけに、そう思いました。(潤花さんは嫌いじゃないのだけど、「PRプリンス」が一番似合ってたかな~と思う。ああいう明るく可愛い現代っ子がいいよね。「ハリウッド・ゴシップ」の時はちゃんとスターに見えたのに、今回はなあ~って。)

マックス(縣千)
見た目は最高にかっこいい。マフィアスーツも良くお似合い。背が高くて顔がイイ。イケメン!だけど、ね。芝居がなんか印象に残らないというか、ぶち壊し系というか。歌もいまいとつ・・・ふたつみっつくらい。ダンスは良いのだけど、動いたりしゃべったりすると。声質も良くないのね。なんだか早霧さんを思い出した。すごく美しくかっこいいけど、話したり歌ったりしないでほしかった(ヒドイ)。お芝居の方向性が私の好みじゃないだけなんだけど。そういえば縣さんは早霧さん主演時に新人公演主演してらしたよね。持ち味が同じだったから、ぴったりはまったんだろうな~と思った。
今回のマックスは私の好みじゃなかった。本役の咲さんはすごいんだなあって思ったレベルでした。
縣さんはいつもショーでは印象に残るけど、芝居ではほとんど印象に残らないので、ショースターなんでしょうね。


キャロル(彩みちる)
こちらも、なんか色気や迫力が足りなくて、「インフェルノ(地獄)」の魔女といわれるようには見えない。本役の朝美さんは男役なので、その迫力は無理かもしれないけど、でも妖艶さは欲しい。アンダーグラウンドの歌姫ではなかった。新人公演では、キャロルもデボラも、違いが判らない。どちらも普通の良いお嬢さんに見えてしまった。入れ替わってもわからないんじゃ?ってくらいタイプが似てる。真彩デボラと朝美キャロルは絶対にそんなことは無い。対極にいる。だからキャロルもなんだか、違う~って感じてしまいました。
あと歌。男役の朝美さんが歌う歌だからキーが違って大変なのかもしれないけど、歌えてないよーな。あの歌結構難しそうだけど、やはり難しいんだ・・・と思った。今回諏訪さんと彩海さん以外は「新人公演だな~」って思うことが多かったです。なんで持ち味が合わない役者を配するのか?と。本人にとっても客にとっても良くないだろうにね。ま、男役未完成の若い男役が女役をするのは勉強にならないでしょうから仕方ないのか。


ジミー(彩海せら)
マックスを破滅させるキーマン。最初の善良そうな労働運動家の青年として出てくるところは、本当に爽やか。裏に何もなさそう。でもよく考えると、マフィアを雇った経営者側に対抗するため進行マフィアを手を汲みに来るとか、裏切者を拷問したとか、ひどいことしてる。その時は、それが表の正義の青年の顔に隠されている。が1幕でマックスとスピークイージーで話しているときに、裏の顔の片鱗が見える。労働運動が成功した時、マックスに成功報酬を言われて見せた横顔。そしてやけどを負って飛び込んできたマックスをとっさに救ったあの機転。これらは2幕の壮年のジミーへ、裏の顔を隠さずマックスと対峙するジミーへとつながる。そうだったのか!!って思いました。
彩海さんの芝居は、大変に私の好みでした。細かい。深い。歌も上手い。
壮年になってからも、すごくかっこいい。疑惑のラジオ放送で、銀橋で演説しますが、なんて素敵なの。こりゃみんな騙されるねーという真面目で善良な笑顔。その奥に隠れる裏の顔。一幕の良い人から2幕の悪人ぶり。「自分の手は汚さない」それを貫いた一番頭の良い人だったように思えた。
と、彩海さんの芝居は絶賛です。さすが前回「壬生」であの難しい役で見事に主演されただけのことはある。この方も望海さんと同じ系統の芝居をされますね。なんとなく彩海さんマックスで、同じ系統の芝居をする二人でがっつり見てみたい~とか思いました。壬生新人公演はそうだったのですよね~見ごたえありましたもん。


ファットモー(望月篤乃)
カットされた少年時代をヌードルスと語り、その後の場面転換説明は全部ファットも―だから、出番多い。壮年のモーはやっぱり「若いな」って思いました。壮年の諏訪ヌードルスがちゃんと壮年の老け方だったから、対比で若く感じてしまった。青年期のモーは良く似合ってました。ちょっとどんくさくて、マフィア少年たちの仲間に入れないって感じ。壮年期はやはり奏乃組長の渋さと印影はまでは難しいよな~、元気あるモーで頑張ってた。酒瓶の扮装、ノリノリですね。

ニック(星加梨杏)
すらりとしてかっこいい。でも本役と同じ良い人で終わった。このニック、なんでデボラと上手くいかないの?って思うタイプ。もっと「僕もデボラ好きです」を出してくれてたら面白いなあ~なんて。まさしくデボラの理想の人でしょ?長身イケメンで、ロウア―イーストサイドから日の当たる場所で成功した人なのに。しかもずっとデボラの傍にいて支えてくれ、さらに仕事上のベストパートナーなんて、絶好のカップルじゃない。
真彩デボラと綾ニックは、なんかタイプが合わなくて恋愛対象外だな、って雰囲気が出ている。でも、星加ニックと潤デボラはお似合いに見える・・・だから余計に。

コックアイ(眞ノ宮るい)とパッツイー(一禾あお)は、本公演同様、あまり印象に残らず。パッツイーが本公演より「バカっぽい」感じでちょっと記憶に残ったかな。こういう役なんだな~と思う。ずっと出ているのに、目立たないってすごい役だ。

あとは一場面の人たちで印象に残った方を。

宝石商(ゆめ真音)は、容姿からコミカルにしてきて、誰も傷つけない明るい強盗場面(変だけど)に相応しい役作り。いいねえ~笑ってしまったわ!とても印象に残りました。久城さんのまじめ店主もいいけど、この場面、ゆめさんのほうが私は好きだわ。
宝石店主夫人ジュリー(羽織夕夏)も美人で上手くて。芝居も良くて印象に残る。この方歌えるのに、勿体ないなあ。

ハリウッドのプロデューサー・サム(日和春磨)は、なかなかイケメンで洒落てる感じは出ていた。小狡さはもっと欲しいところかな。本役は「ハリウッドの帝王」といいつつ、ただの浮気男じゃん・・・とデボラの心理に思いっきり傷をつける男なので、そのあたりの矮小な卑劣さがいいのよね。

ハバナ祭りのエヴァ(希良々うみ)は可愛かった。一場面でもしっかりヌードルスと絡んでいる。「女なんか」といわれ、「デボラって誰?」と返す時の感情がちゃんと見えた。あの皮肉っぽい口調がなかなか良かった。


イタリアン・マフィアのフランキー(壮海はるま)、と癒着しているアイエロ警部(汐聖風美)。仲間に手厚いマフィアと冷酷そうな警部の対比が良く出ていた。警部の冷たい横顔はイケメンだった。



誰も幸せにならないこの物語。でもヌードルスが最期に銀橋を渡り、去っていく顔がとても清々しくて、「それでも精一杯生きた」と満足感が得られ、後味は全く悪くなく、こちらも清々しい気持ちで家路につけます。諏訪ヌードルスの最後のお顔もとても清々しく素敵でした。


とこんな感じです。
最後の挨拶で、諏訪さんが長の期で1番だから、一人挨拶でしたが、途中で声に詰まってしまってました。涙も見えました。やり切った、という安堵かな。あれだけ難しい役をあんなに素晴らしくやり切ったんだから、魂が抜けていても不思議ではない。ちゃんとした挨拶を考えていらしたみたいだけど(安心して聞いてられるしっかりした挨拶でした)、途切れてしまい、「感無量」とはこういう時に使う単語だったな、と思いました。2度目のカーテンコールでは「今すぐ東京新人公演のお稽古したい」と、魂が戻ってきた感じでしたけど(笑)。

とにかく、素晴らしいスターが誕生したと思います。前回の彩海さん、今回の諏訪さん。未来の雪組を担う素晴らしい人材がいるなあと思います。お二人は今回本公演でも印象に残る活躍をされていますが、これからますますお芝居の重い役を担っていかれることを期待してます。諏訪さんバウで、和物人情モノとかも見てみたいな~と夢が膨らみました。

あ、最後にプログラム。表紙が「バグジー」の諏訪さんなのです。一本物で、ちゃんと役の写真が表紙は嬉しい(普通ショーっぽい写真になるような気がする。つまり諏訪さんが本公演でもちゃんと衣装写真が掲載される地位にいるってことか)。もちろん本役のバグジーなんだけど、これが新人公演では見られなかったヌードルスの少年時代だ、と思ってしみじみ見てました。なんか幸せ。




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