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梅田芸術劇場「マリー・アントワネット」 [観劇感想(その他)]

梅田芸術劇場「マリー・アントワネット」
2019年1月3日(木)梅田芸術劇場 13時 1階19列センター

今年最初の観劇です。
初めて見ましたが、妙に既視感がある。
多分、原因は「ベルサイユのばら」と同じ時間を対象にしていること、「1789」と同じ視点、かな。
この時代は舞台化されることが多いので、もはや何を見ても既視感があるのかもしれない。
もうひとつ、セリフが歌になっているのだけど、ミュージカルじゃないと感じたこと。
これはセリフが歌になっただけのストレートプレイだと感じた、つまりオペラ的なんだ!
(すみません、定義が無茶苦茶かもです。)

物語については、突っ込みどころもあるけど、おおむね納得できる(よく知ってる内容)。
役者については、適材適所?かな。見たことある役者さんが違う役をしているので(アタリマエ)、そこらへんも色々感じるところがあったけど。
音楽は綺麗だったけど盛り上がりがなくて、豪華なセットと衣装と舞台装置を生かせてない感じがして、私はあまり好みじゃなかった。それぞれは良かったんだけど、総合的に相乗効果がないというか、減殺しているような印象。
小池修一郎先生に潤色・演出してほしいなあ~と思ったのでした。

201901マリーアントワネット.png


「マリー・ントワネット」
脚本・歌詞 ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲 シルヴェスター・リーヴァイ
演出 ロバート・ヨハンソン
遠藤周作原作「王妃マリー・アントワネット」より


対象としている時間は、「ベルサイユのばら」と同じ。マリー・アントワネットが嫁いで来る時から処刑まで。そして視点は「1789」と似ている。1平民から見たアントワネットとの対比。「1789」は田舎の男性(ロナン)だが、こちらは都市部の女性(マルグリット)という違い。だから妙に既視感がある。
ついでにいえば、「1789」でロナンの妹を演じていたソニンさんがマルグリットだったので、余計に同じ物語に見えたのかもしれない。ただ、ロベスピエールを演じていた古川さんがフェルセン伯爵と、これは妙な違和感(笑)。

大変メジャーな時代を、(最近は)大変メジャーな視点で描くという作品、多少の既視感は仕方ない。音楽は綺麗だけど、単調な印象。考えてみると、いつも一人で歌っているからだ。大勢で歌ったり、掛け合いで歌ったりがすごく少ない。衣装は綺麗だけど、動きが少ない。揺れてるだけ?という感じで、全く踊らない。踊らなければならないわけではないけど、舞踏会の場面や民衆の怒りの場面くらいは多少踊っても良いのでは? 私が普段この時代の作品を見る宝塚歌劇も、フレンチミュージカルも、大勢で歌うし激しく踊るのだ。それが全くないので、私にはとってもとっても物足りない。豪華なセットに素晴らしい背景。だが登場人物が出てきて順番に歌うだけ・・・セリフを言いに順番に出てくると言ってもいいような。ただセリフが歌になってるだけの作品。場面の移動は暗転ばかりを使うし。全体的に、好みじゃない演出手法だ。私はこの演出家とは合わない。
素材も役者もセットも衣装も音楽も良かったので、違う演出家で見たいと思ったのでした。



マリー・アントワネット(笹本玲奈)W
可愛いマリー・アントワネット、お姫様のような女の子で、王妃としての貫禄も威厳も感じなかった。この物語は、年齢を重ねてもいつまでも我儘な少女(王女)のままの女性の悲劇なので、これで正解だと思う。だけど王妃になって、最後のあたりは多少の悲壮感や王妃の威厳が欲しい・・・と思ってしまいました。お茶目で可愛いの、最後まで愚かで可愛い女だった。
ルイ16世が村の鍛冶屋なら、このマリーはその美人の女房で、旅の貴族の青年と見え見えの浮気をしてマウンティングし、村の女たちからつまはじきにされて、やがて捨てられて、また戻ってきそうなそんなイメージ。美しいけど愚かで単純である意味可愛い女なの。脚本からそうなのか役者がそう解釈して演じているのか、Wキャストの高貴な女性の孤独を演じたら右に出るものなしだった花總さんのマリーを見てみたい気がした。(宝塚宙組時代に「ベルサイユのばら」のマリー・アントワネットを見たけど、私の中で最高の王妃様でしたから)。


マルグリット・アルノ―(ソニン)W
どこかの地方都市で、13歳まではそれなりの高等教育を受けていた良家のお嬢さん。貴族の承服の娘、と本人も周りも思っていたことでしょう。ところが支援してくれていた父が死亡して、一気に貧乏庶民へ転落。母は頼りない女性だったのですね。そこからの反動で、庶民の味方、貴族は敵という革命の女投資になるまではすぐだったと思う。「転落した女性」という荒んだ雰囲気がとても出ていた。読み書きはできるし教養はある。でも、貴族憎しで凝り固まり周りが見えてなくて、目的のためには犯罪にも躊躇しないところまで行ってしまう。最後の最後に、憎しみの象徴だったマリーが一人の女性であることを見て、良心を取り戻す・・という。この後彼女はどう生きたのか。革命とは一線を画して、また地方へ戻っておとなしく生きたのだろうか。この後始まる恐怖政治にはかかわらなかったとそれは確信した。
ソニンさんは、「1789」のロナンの妹ロレーヌを演じたときの印象が強烈だったのか、今回も「ああ、とうとう革命家になったのね」と思ったのでした。あの時も、革命起こしそうな迫力があった方なので、今回はぴったりでした。欲を言えば、革命家過ぎて、このままいけばロペスピエールの片腕になれたのでは?と思うほど。凄まじすぎて、昔は良い家のお嬢さんだったという感じが薄く見えました。
歌は凄い迫力ですね。しかしあの姉妹設定、必要か?って思いました。なくても十分ですよ。


フェルセン伯爵(古川雄大)
大変な優男ですね。宝塚のフェルゼン伯爵見たいです。スウェーデンの武人にみえない。フランスの宮廷にいくらでもいそうな感じの美男子で、王妃を諫めているけど彼女の思考に影響はしてない。
彼がストーリーテラー役もしていて、最初と最後を語る。マリーとマルグリットの二人ともに関わり、二人ともに惚れられている(多分)。良いことを言ってるのだけど、行動が伴ってないような。武骨で融通が利かないというより、優柔不断という風に見えた。(ひどい言い方だけど、まあフェルセンとはそいう言う男だ)。
大変美しく、王妃の愛人と言われて納得。誰もが納得でしょう。マルグリットも好きだったみたいだしね。線の細い貴公子ですよね~古川さんはいつも宝塚の男役のように見えてしまうわ。


オルレアン公(吉原光夫)
フランス王族の大貴族です、この人がこの作品では黒幕。王位を狙って、革命勢力を支援している。マルグリットも最初は彼に騙されるが、最後に告発する。多分失脚した。
かなり盛大に王位を狙って革命勢力に顔と身分をさらして取り入ってたので、大丈夫?と思っていたらまあ、やっぱり。ド迫力の歌と芝居でした。しかしながら、あのやり方では王位は継げまい、と思った。あのやり方だと共和制にしかならんわ。あのロベスピエールにどう対抗する気だったのかな。最後の場面なんて、完全に彼に仕切られていたではないの。見通しが狂って、取り返しがつかないところ、つまり政体が変わるというとところに来てしまったと気付かないと!いや実は本当に革命したかったのかも・・・と思ったのでした。それならもっと脚色したほうが面白いかも。
ところで。「1789」の時の黒幕はルイ16世の弟アルトワ伯で、今回は王族オルレアン公。同じようなことをしているのでさらに既視感。(革命家に知られないアルトワ伯のほうが賢しいと思う)。


ルイ16世(佐藤隆紀)W
善良なる16世。彼は美男子に浮気しまくる妻を熱愛している。かなり変わった愛し方をしている人物。彼がもっとちゃんと普通に妻に向き合っていれば、ここまでひどくならなかったのでは?と思える。妻として王妃としての立場を強く言えるのは、夫であり国王であるルイ16世だけなのに。
本人も鍛冶屋になりたかったらしいし、生まれた場所に合わなかった…悲劇ですね。王も王妃も、この夫婦は場所に人物が合わなかった。もっと庶民に産まれていれば、もう少し幸せに暮らせたでしょうに。と思わせる方でした。
おっとり優しくて気弱で、それでいて誇りと威厳を感じられた人物です。


レオナール(駒田 一)
髪結い、かつら師というのか。マリー・アントワネットの宮廷で美容面でかなりの権威をもっていた人物。機転が利いて頭が良くて要領が良い。かなりの出世をした様子で、また失脚せずに逃亡でできたので、これからも大丈夫ではないかと、先行きが安心な人。
駒田さんは安心してみてられる。歌も芝居も、本当に楽しい。

ローズ・ベルタン(彩吹真央)
レオナールとほとんど対で出てくるデザイナー。「ベルサイユのばら」に出てくるので、知っていたけど、大変な権力者ですよね。平民出身ながら、その才能と才覚でのし上がったキャリアウーマン。素晴らしい。奇抜で斬新なドレス、ショーアップした見せ方、トータルコーディネート。したたかな商売人ぷりも見事で、レオナールと良いコンビでした。
ソロもいっぱいありましたが、さすが彩吹さん、変わらず素晴らしかったです。

ジャック・エベール(坂元健児)
革命派の詩人・・というより、売名とも受け主義の飛ばしトップ屋って感じでしょうか。民衆に受ける詩を書いて売り、それに曲をつけて歌にして広める。現代で言えば、写真週刊誌に推測記事を書き、それをSNSで拡散するというところかな。手腕は素晴らしく、広告代理店やったらいいのに、と思うほど。思想的には特になさそうな気もする。受けて知名度上がって、金儲けできたらOKという雰囲気が漂う。それを隠したまま最後までゲスな男で、その貫き方は見事であった。彼が良い人だったら、マルグリットが日和見悪女になってしまうから、物語的には良い役作りだと思う。
歌はさすがの坂元さん、良い声です。

ランバル公爵夫人(彩乃かなみ)
王女と王子の養育係で、王妃の心の支え。心から優しく慈愛に満ちた素晴らしいご婦人。子供たちもよく懐いていて、いつもランバル夫人と手をつないでいる。国王一家を最後まで見捨てず寄り添い子供たちを愛している。なのに、民衆に八つ裂きにされるとか、悲惨な最期。可哀そうすぎる女性だ。あれはほとんどマリーアントワネットの代理で八つ裂きにされてると思う。彼女はそれでも最後まで王妃を恨まなかったような気がする・・仏様か聖女か?という役作りだった。
彩乃さんも優しい感じでお似合い。歌もさすが。宝塚時代よりほっそりされて、最初誰だかわからなかったです(下調べしたはずなのに、涼風さんにしては若いなあ~とか思った)


ロアン大司教(中山 昇)
そんなに嫌な男ではなく、王妃と友好関係を築こうと必死だし、愚か者ではないし、マリー・アントワネットに毛嫌いされるのがちょっとわからない。宮廷によくいる優男風なので、聖職者にあるまじき行い(愛人タップり)が納得できる男性ですが、この時代の聖職者なんて、貴族の次男の就職先なのに、なぜそれを受け入れないのだろうと思ってしまう。フランス流の良いところだけを受け入れ(自分の浮気や王妃の職務を全うしないなど)、気に入らないところだけオーストリアの厳格な流儀で非難するとか、ダブルスタンダードも過ぎるわな・・・と思っていた。だから嵌められるのよ!その後の対応も愚かで、これはロアンが裁判で勝つのもわかる、という感じでした。ロアンは騙されたけど、特に悪いことはしてないような気もする。そういう役作りでした。

ギヨタン博士(松澤重雄)
ほぼ一場面の出番ですが、ルイ16世の良きお友達という感じでした。まさか自身の発明品が革命の主役になるとは思わなかったでしょうね。

ロベスピエール(青山航士)
最後のほうしか出番がなかったけど、厳格で禁欲的な理論家ロベスピエールらしさは出ていたと思います。近年いろいろなところでいろいろなイケメンのロベスピエールが出没しているから、イメージも変わるわ。でもこのロベスピエールはもともとの(「ベルサイユのばら」のころ)のイメージぴったりです。

ラ・モット夫人(真記子)
普通のフランス革命モノではほとんど出番のないジャンヌ。今回は首飾り事件がメインイベントなので、出番あり。なんだかイメージより派手で豪快なおばさんでしたが・・・。
アントワネット主役なら、首飾り事件をメインに持ってくるのは良い構成になると思った。ラ・モット夫人はもっと活躍してほしい。マルグリットよりジャンヌのほうが対比に良い気がするくらいだ。今回はマルグリットがアントワネットに似ている娼婦の役をしていましたが、ジャンヌに焦点を当てても面白い展開になるかも?と思った。ヴァロア王家の末裔で没落していて底辺育ち、したたかで抜け目なくて他人を陥れて高笑いできる悪女。実際に革命にはあまり関係ないらしいけど、ジャンヌをクローズアップした「首飾り事件」を大々的にメインに置いた演出って楽しそう。

こんな感じ。
あとはボヤキのようなものなので・・。
セリフが歌、それはいい。「エリザベート」と同じだ。でも「エリザベート」はもっと動きがあるように思う。ウィーン版でも、結婚式の後の舞踏会とか、ハンガリー戴冠、ナチスの場面とか。日本版は「トートダンサー」や「黒天使」がいてもっともっと踊る。「ミルク」や「カフェ」の場面も群衆が歌うし。掛け合いの歌も多い。今回はそれがない。なんだかソロばっかりで。これなら普通にセリフでいいやん・・・と思えるくらい。それぞれがもっと歌いあげたらオペラになりそう。せっかくの人数がいかせてないように感じた。
この作品も、小池修一郎先生が潤色演出したら、派手で大人数が動きまくる、なんでもないところで盛り上がる作品になるのだろうなあ~なんて思ったのでした。「新演出」と謳っていたけど、前はどんなのだったのかな。もう一回新演出で小池先生に依頼してほしいわ~私の好みだから。人数多くて衣装が豪華な作品での小池先生の演出、好きなの。難しいだろうからボヤキです。


中断
1幕60分頃にセットにトラブルがあり、中断。「変なところで1幕おわるのね」と思ってたら、トラブルだった。幕が閉まってすぐにレオナールさんが出てきて、説明とお詫び。客席の不安と不満を和ませてくれました。「生の舞台だと実感できますね~なんたって生ですからね~」って感じで。レアなもの見れて得した!という気分になった(笑)
15分休憩とされて、再開したのは20分後。指揮者が席に着いてからもさらに5分以上待ってた。代わりに幕間休憩25分が15分に短縮され、結局カーテンコールを含め終了したのは16時20分だった。
最初からセットの動きが悪いようだった(釣りものが1回途中で止まったり)ので、よく1時間持ったなあって。釣りものやら大きな装置が多いから、もし落ちたりしたら大事故だし、本当に大変ですよね。舞台機構が何事もなくスムーズに動くのが当然だと思っていましたが、裏方さんの日ごろの努力のたまものだと今回実感しました。



アップしたつもりで、下書きのまま忘れてましたわ・・・正月いきなり物忘れ。なんてこった。


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