SSブログ

映画「藁の盾」 [映画鑑賞]

映画「藁の盾」 
2013年5月1日(水)なんばパークス


GWひとり暇だったんで・・水曜日。

サスペンス、エンターテイメント、という謳い文句だった。
でも違う。こんなのエンターテイメントじゃない。
暗い、重い、考えさせられることが多い。後味悪くてすっきりしない。

人間はどこまで非情になれるのか、冷酷になれるのか、残酷になれるのか。
人間の弱さが恐ろしいまでに表現されていた。戦争下ではなく、日常のなかで
語られるだけに、そこらの戦争映画に負けないほどの不気味さだった。
そういう意味では名作かもしれない。(でも見終わってストレス溜まるわ)


ネタバレ満載です。













主人公・銘刈が怖い。仕事であれば、命令であれば、どんなことでもやるのか。
どんなに理不尽でも、どんなに良心に反しても、どれほど心が嫌がっても
良心が咎めても、それでも自分の頭で考えず、「これが仕事ですから」とやり遂げる。

一見仕事に真面目で、法を守った良い人物のようになっていたけど、
良いことみたいに描いていたけど、これって「上からの命令なので」と
戦争中や独裁政権下で虐殺を遂行した兵士の心理と同じじゃないの?
「酷いことだし、やりたくなかったけど、命令なので」とい言いながら酷いことをする。
同じやん?
彼には恐ろしいまでの冷酷さ、酷薄さも表現されていた。
自分への命令以外のことには関心を示さない。
自分の仕事関連で、関係ない人間の命が危険に晒されても、助けるどころか
「それは私達の仕事じゃない!」と切り捨てる冷酷さ。
彼は国家の面子を守るために、全てを賭けた。自分の良心も他人の命も犠牲にして。
主役の銘刈さんは、そういう意味で人間の弱さと怖さを感じさせた。
戦争中でもないのに、こんな人間を作りだせるなんて・・という恐怖も感じた。
良心を持たない変態殺人鬼・清丸も怖かったけど、
見終わったときには銘刈のほうに、ずっと恐怖を感じた。
この銘刈を「良い人」として描いていたなら、これ書いた人、何を思って書いたの?
何が狙いだったんだ?!さっぱり分からない・・。
荒唐無稽なエンターテイメントなら、見終わってからすっきり楽しくなるような
作品にしてほしい。後味悪いのって嫌だわ。。なんか腹立つしね(うわ最悪?)



銘刈(大沢たかお) (*草冠に刈という字が出ないので刈を使います)
SPです。彼が守るのが国家の命運を、人類の命運を左右する偉大な人物なら良かった。
彼の行動は賞賛に値するだろう。多分そういう人物を守るよう訓練されたんだろう。
でも、今回彼が守るのは人間の形をした屑。居ないほうが人類が幸せになれる人物。
確実に死刑になる人物を守るのに、偉大な人物を守るのと同じことをしてどうする?
臨機応変の才がないの?馬鹿なの?・・・馬鹿だ・・・と思いました。
他人の、大勢の命を犠牲にしてまで、死刑になる人間を守ることに何の価値があるのか。
でも彼はこの問いを自分に問いかけてない。ずっと無視している。
他の登場人物はみんな、この問いに悩んでいるけど、彼だけは最初から問いを無視。
問えば、答が自分の心の中にあるから、だからずっと無視する。だから行動に迷いが無い。
こんなの人間じゃないわ。クメールルージュやウガンダの少年兵を思い出す。
憎悪を持たない殺人に疑問を感じないよう、幼い頃から親と引き離され、
迷い無く人殺しをする訓練だけを受けた人間兵器と同じ。言い過ぎ?
彼が守りたかったのは、上からの命令。国家の面子。ただそれだけ。
警察官の一種らしいけど、人々の安全や生命、幸せを守りたいとは思ってないんだね。
そういうのがよく分かった。彼の行動(変態殺人鬼を守って大勢の人を殺す)は
妻子を殺された彼の、社会への復讐なんだ。・・とまで思いましたわ。
最後の最後に、その殺人鬼に殺されたかったのかしら。復讐の仕上げとして。
・・おっと深読みしすぎですね(笑)→だって理解できないからさ~。



清丸(藤原竜也
変態殺人鬼。死んだほうがいい人間、生まれなかったほうがよかった人間、
「人間の屑」というのを体現してますね。見事です。
私はこの映画を見て、前回の裁判でこいつをたった数年の刑にした裁判官と弁護士にも、
2回目の猟奇殺人をしたときの裁判で責任取らせろよ!と思ってしまいました。
現実の事件でも思うですが、「更生の余地あり」「反省がみられる」として
「刑を軽く」したなら、その犯人が次に同じような犯罪を犯したら、
その裁判官と弁護士にも責任負わせたら?
犯人の反省とやらを信じて判決だすのは良いけど、その嘘に騙されて迷惑するのは
その裁判官と弁護士じゃないからね。だからって無責任すぎないか?と思うのですわ。
(私は司法関係者じゃないから適当に言ってるけど。以前そういう小説を読んだな・・)
粛々と犯罪にあわせて刑を課すだけなら、機械で十分じゃない→自動判決機。
・・なんて事を思いながら、見てました。この男は更生不可能。
だって最後の言葉がアレだもん、前の裁判官、見抜けなかったの?騙された?




財閥の当主・蜷川(山崎務
孫娘を変態殺人鬼に惨殺されたため、復讐に燃える人物。気持ち、分かる。
この孫娘の両親はどうしたんだろう・・と思ったが、多分いないんだよね。
たったひとつの生きる希望が、あんな変態殺人鬼の犠牲になっちゃ、そりゃ
死ねないね。出来るだけ残酷に苦しめて殺してやりたいよな。殺された孫娘が
それを望んでいるかどうかなんて関係ないよ、もう生きている意味が無いんだから、
復讐しかやりたいことが無いんだから。普通の人間なら「やらせてあげたい」って
思うよね。思わないのが、銘刈なんだな・・人の心がを封じた兵器だからさ。
今回のこの人の行動で、日本の警察と司法制度が変わったらいいのにね・・
一石投じたことになったらいいのにね。せめて。
蜷川さんも裁判官と弁護士の責任に気付けば、違う行動だったかも・・と思うと惜しい。
しかし気前良くお金を使いまくってたけど、詰めが甘いと言うか。
使い方間違ってたような気がするが、そういってしまうと、映画の大前提が崩れるので
黙っておこう(笑)



SP 白岩(松嶋奈々子
幼い息子のいるシングルマザーって設定。普通そういう状況ならSPなんてやらないと
思うのだが・・だって、出張(?)多そうだし、時間不規則だし。子供の面倒は
誰が見ているの???と不安になるわ。さておき。
子持ちの母なら、さっさと殺してると思う。拳銃もあるし、殺せる立場にもある。
さっさと子供を害する悪人を駆除し、子供の待つお家に早く帰りたいと思う。
良心の声に従って殺さないから、つまらないプライドにこだわってる間に、
変態殺人鬼に殺されてしまうんだ。・・残された子供はどうなるのよ?!
銘刈もなんだけど、この人もさ、自分達の警備対象が「殺人鬼」だって分かってた?
多分忘れてたと思う。「犯人」から注意をそらしていることが多すぎる。
これじゃ「護送」じゃないよ、護送警官としては失格だ。暗殺者に狙われている要人を
逃がしているみたいだったもの。要人警護じゃないっていうのに全然分かってない。
この人も行動に臨機応変さが全く無かった。だからあんな最後に。
は!そういえば、防弾チョッキ着てたのって銘刈さんだけ?白岩さんも着てなかった。
警視庁の二人も着てない。ちょっと銘刈さん・・・それはひどいのでは。



警視庁の刑事・奥村(岸谷五朗
別口の契約があったから、自分の手で殺さなかった。多くの人にチャンスをあげたとも
いえる(?)・・彼のおかげで、沢山の人が「殺人未遂」として蜷川氏から
お金をもらえたし、貢献したか。保身と金、そして良心に従い、行動した。
最後まで生き残ったし、彼のやり方は実に堅実で賢明だ。
この人が最後まで一緒に居たら、白岩さんは死なずに済んだだろうと思う。
警視庁の二人はちゃんと「犯人護送」していたもの、SPの二人と違ってね。


警視庁の刑事・神箸(永山絢斗
警察官の中では一番良心的。いい刑事さんだ。長く勤めたら本当に人情派のいい刑事に
なったと思う。それだけにあんな屑のせいで・・・と凄い損失を感じる。
被害者に心を寄せ、犯人を憎み、人々の幸せを守ろうとしている。まだ若いのでお金への
執着が余り無く、正義に燃えてましたね。本当にいい刑事だった・・。



福岡県警の刑事・関谷(伊武雅刀
こちらも正統派の刑事さん。組織の中での苦労も分かるし、被害者への配慮も、犯人への
配慮も行き届いた人物。そして何よりも警察官。無関係な子供が人質になったときに、
彼は子供を助けた。銘刈は「関係ない!」といって見殺しにしようとしたのに。
関谷さんには、警察官としてそんなことは出来ない。正しい行動を取った。
でも、なぜそこで犯人護送から外されたかは謎だった。銘刈の意向か。
彼が最後まで一緒なら、白岩さんは(以下同文)。



こんな感じかな。もう、こんな屑の輸送に税金馬鹿みたいに使って、本当に馬鹿。
SPなんてつけなくて良かったのに。某国みたいに「確実に死刑」になる犯人なら
逮捕時に「抵抗したので射殺した」で済ませたらいいのに。なんで守るの?
第1の被害者の父が叫ぶ「こんな屑を守るなら、なぜ恵を守ってくれなかった」と
言う言葉が染みる。本当にそのそのとおりだ。(なぜ都合よく出てくるのかは?だが)。
蜷川さんも、こっそり闇の組織に始末させりゃ良かったのに。警察上層部にも
もっと言い含めておけばよかったのに、なんか手ぬるいわ。


という感想でした。これTVで見てたら、多分15分でチャンネル変えてる
あまりに脚本が無理無理、途中もご都合主義が多すぎるし。なによりむかつく。
まず最初のエピソードから唖然だしね(最初の中国人、なんで殺せないんだよ?)
一応、問題提起してるのかな・・って気はするが、そうじゃなくて難しい主張がなく
普通にエンターテイメントとして作ったんなら大失敗だと思う。
なんたって、見終わってストレス溜まると言うか、イライラしたわ。


GW後半に期待・・薄。なんか寒いし混んでるし家でDVD見るかな。

nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 2

コメント 2

ねこ

この映画、試写会を見る機会がありました。監督さん力入っているんだろうなあ。ただ、今のカンヌ出品は場違いじゃなかろうか。後味が悪い作品好きの私ですがこの手のは普通に忘れそうな感じです。善良な一般人から遠い、世の中の暗い部分を扱う、警察ものがあまりにも大手を振って、エンターテイメントのメインストリートをまかり通ることそのものがちょっと違うんじゃないかと個人的には思ってます。

後味って言えば、今週末から「くちづけ」という映画が全国上映されます。昨年末解散した劇団、東京セレソンデラックスの代表作の映画化です。
劇そのものもDVD化されています。
ハッピーエンドではないですが、独特の後味が残るものです。
個人的にはちょっとお薦めです。(劇が外れではなかったので)
by ねこ (2013-05-22 23:44) 

えりあ

ねこさん

監督さんは三池さんでしたね。よく考えたら、「十三人の刺客」もこの監督さん。力入っているのは分かるんだけど、私とは感性があわない方なのかなと思います。力も入ってますが、資金も投入されてますね。カンヌか・・・へえ~。
「くちづけ」ですか?。機会があればぜひ見てみたいと思います。
by えりあ (2013-05-24 00:19) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。